9年ぶりの再会を描いた9年ぶりの続編 - ビフォア・サンセットの感想

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9年ぶりの再会を描いた9年ぶりの続編

4.54.5
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

再会

この映画はビフォアサンライズの続編で、ジェシー役のイーサンホークとセリーン役のジュリーデルピーが9年後にパリで再会するという設定になっている。ビフォアサンライズの9年後にビフォアサンセットが公開されていて、実際に再会するまでの期間を同じにすることでリアリティを一層深めている。ビフォアサンライズは何回観たかわからないぐらいハマったので、その続編が出るとわかったときの興奮はすごかった。最初のシーンは、パリの書店でジェシーが小説のインタビューを受けているところから始まる。ウィーンでのセリーンとの出会いをもとにした小説を出版した前提となっていて、最初に画面に映されたジェシーの顔はビフォアサンライズの時のあどけなさはなくなり、皺が深く少し険しさのある大人の表情となっていて、リアルに9年という月日の長さが表情に表れていた。そのインタビューをセリーンが横から見ているという設定だった。実際にジェシーが映画の中でも述べるがセリーンはかなり細くなって大人びていた。少し照れながらジェシーを見ている姿は9年前の面影も残っているように思う。インタビューの合間にビフォアサンライズのシーンが挟まれるがその効果は大きい。インタビューでの返答は明らかにウィーンでのセリーンとの出会いのことを語っているし、その思い出がジェシーにとってその後の人生で大きな意味を占めていてることが感じられる演出になっているのだ。このようなシーンでは音楽を流す映画が多いと思うが一切なかった。
インタビューの後2人は9年ぶりに言葉を交わす。最初観たとき私はこの再会時の会話が少し落ち着きすぎているように思われた。ビフォアサンライズでの別れ際を思い出せばこの再会時の2人のテンションはもっと高くてもいいのではないかと思ったのだ。しかし何回か観ていると、ここはかなり意図的にそうしたのではないかと思うようになった。9年の歳月が流れたことで相手の気持ちはどのような形であれ変化したであろうという相手を気遣うのような感情をここで表現したかったのかもしれない。ともあれこのシーン以降この映画シリーズの特徴である2人だけが語り合うシーンが延々流れる。ビフォアサンライズとパターンは一緒だ。その会話の中で最初のうちに話題となるのがウィーンで別れ際に約束した半年後の再会についてだ。その話を始めたのはセリーンで、理由は最愛の祖母を亡くし、自分はその葬式のため再会場所に行けなかったからだ。問い詰めるセリーンにジェシーは最初自分も行かなかったと言うが、実は行ったことを白状する。その後喫茶店に向かう二人はジェシーが再会できなかった後どのように過ごしたか、ジェシーが書いた本についての感想などを語り歩くのだが、パリの路地を歩く街並みが美しかった。ビフォアサンライズの舞台ウィーンもきれいだったが、パリは特に大人になった2人にぴったりだと思った。

9年間の2人の人生

喫茶店に着くまでの後半ではお互いの近況などの話をする。ジェシーは小説家として成功していることが伺え、セリーンが環境保護団体の国際みどり十字という団体で働いていることがわかる。ビフォアサンライズで独立心のある女性を目指していたセリーンにぴったりの設定だった。映画では一切彼女が働いているシーンなど映らないが、勝手に頭の中で想像して映像が浮かぶほどセリーンが環境保護に取り組んでいる姿が目に浮かぶのだ。きれいごとより真実を求めるタイプの女性として描かれていただけに、この設定以外にはないと思わされる。
ここまでただ話している2人が映されるだけだが、ビフォアシリーズファンとしては文句なしで楽しめる。やがて2人は喫茶店に入り、そこでも延々とおしゃべりが続く。これだけ会話オンリーの映画で観る側を飽きさせない理由は、2人の会話の内容、キャラクター、演技のすべてが完ぺきにリアリティを持っているからだと思う。
残念なところもあった。喫茶店を出た後「庭園の路」というところへ行くのだが、ここの景色がその辺の公園の脇道といった感じで映えない。せっかくパリなのにこれではどこにいるのかまったくわからないし、喫茶店に着くまで歩いていたパリの路地がとても美しかっただけに「どうしてここ?」という疑問が沸いてしまう。

お互いの告白

その後2人は観光用と思われるボートに乗るが、そこから雲行きが少し変わるというか、会話の内容がシリアスになっていく。セリーンはボートの上で、他の人は別れたらすぐに次の人を探すが自分の場合はそう簡単にはいかず、なかなか忘れられないのだと言う。9年の間恋愛でかなり傷ついたこともあったのではないかという想像もできるし、ジェシーのことをまだ引きずっているともとれるシーンとなっている。その後もシリアスな会話は続くが、最後にセリーンは車の中で感情を爆発させる。ここは思ってることをぶちまけた感じで観ていてすっきりするしなんとなく可笑しみもある。その後2人はさらに親密になっていく。
セリーンを家まで車で送った後、セリーンの団地の階段を2人が上がっていくとき、お互いを少し見つめ合ってまた視線を外すところは、ビフォアサンライズでのCDショップの視聴室のシーンを思い出させた。
ラストはセリーンが彼女の家でニーナ・シモンという歌手の真似をしているところで終わる。この時点で既に2人が元の生活に引き返せないほど親密になっていることが伝わるうまい演出になっていた。
9年ぶりの続編という事で期待値は高かったが、その期待を裏切らない仕上がりになっていた。

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他のレビュアーの感想・評価

君を見つけるために本を書いた

9年たって突然の再会前作ではまだ子供っぽさの残る学生のジェシーが、すっかり30代の大人になっています。そして前作の出来事について小説を書き、作家として世界を回っています。すっかり成功したのですね。あの衝撃的な出会いと一夜から9年、ということですが、本当に9年たってからの続編なので、当然役者も9年分の年をとり、観客も9年分年をとっています。それは本当に長い年月です。書店でプロモーションイベントを開いているジェシーが、本当に自然とふと横を見たときにそこにいるのがセリーヌです。この長い間、連絡先も知らず、再会も果たせず、思いだけが残っていて小説に書くしかなかったセリーヌです。どれだけ心臓がギュッとなったことでしょうか。そのあと2人は、ジェシーの飛行機が出る夕刻までパリを散策することにします。お互いへの激しい感情感情といっても、いきなり好きだの嫌いだのをぶつけ合うのではなく、前作同様、2人でず...この感想を読む

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