一方向からの視点では恐ろしくて完全なホラーでも、外から見れば気味の悪い主人公 - シークレット ウインドウの感想

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一方向からの視点では恐ろしくて完全なホラーでも、外から見れば気味の悪い主人公

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

カットされたラストシーン

私はDVDを借りて観ました。この作品は奥さんも不倫相手殺されてしまった事実しかありません。しかし、映像特典で奥さんと不倫相手がトウモロコシ畑の下に埋められ、土の中の断片図が映し出されています。そして根の先には二人がいます。まるでトウモロコシの根が二人を養分にしているようで、あそこまで描いてしまうと不気味さが軽減されて若干の面白さが加わってしまうため、カットされたとか。確かに映像を拝見すると最初は気持ち悪さに驚きましたが、リアリティが反比例のようにすーっとなくなっていく気がしました。最後は別人のように、しかし普通に暮らしている様子を描くことで、その残忍性と別人格の不気味さを残したかったのだなあと思いました。最初に観た時は衝撃でした。トウモロコシ食べるシーンはさらっと流して終わったのですが、未公開シーンを観て吐き気がしました。もうトウモロコシが二人の死体でできていると思うと、ゾワっとする寒気が身体の中からしました。本当にここまで描いてしまうと、もし年齢が若い時に見てしまっていたら、トラウマになっていたことでしょう。トトロのメイちゃんの抱えているトウモロコシも目を細めて観てしまいそうです。

視野の広さの重要性

奥さんと不倫相手のまさに真っ最中のところを目撃してしまったことで、モートの中に別人格のシューターが作られます。シューターは「秘密の窓」を盗作されたとモートに訴えるわけですが、何故この短編を盗作されたという別人格をモートが作ってしまったんでしょうか。不思議です。それはやはり今のモートの感情と作品の内容が同じベクトルを向いているからでしょうか。とにかく精神的にいっぱいいっぱいになってしまったモートが死んでしまわないように、シューターが現れて彼を苦しめる根源を絶ってくれたのだろうと思います。しかし、関係のないわんちゃんまで殺されてしまって、シューターの目撃者トムも友人のケンも、シューターにとって都合の悪い人物はみな殺されてしまいます。死人に口なしですから、実はモートだったんだとは証言してくれません。奥さんと不倫相手への憎悪がここまで人を捻れさせてしまうのかと、人間の恐ろしさが詰まっているなと思いました。モートは沼に入り込んでしまって足が抜け出せないような心理状態でした。なんとか抜け出そうともがいているところを、奥さんと不倫相手との浮気現場を目撃してしまったことで背中を押されてしまったわけです。そうなれば、自分が沼になるしかないんですね。奥さんと不倫相手を引きずりこむことしか考えられなくなってしまいます。心が病んでしまうと、本当に視野が狭くなり、思考も同じことの繰り返しで一向に上を見ようとしなくなります。苦しむ自分から逃れるためのシューターだと考えると、なんて悲しい物語なんだろうと思いました。

やっぱりジョニーデップがかっこいい

初めて観たジョニーデップ作品はシザーハンズでした。顔が白塗りで手が巨大なハサミで、おとぎ話のような作品でとても好きです。その次はチャーリーとチョコレート工場でした。これまた面白いメイクをされて、原作が児童書なので絵本のような、イッツスモールワールドのような世界観が好きです。そして三作目がシークレットウィンドウでした。観てきた作品がどれもジョニーデップなのかどうなのかわからないほど作られたキャラクターになっているため、こんなにシリアスな映画にも出ているんだと最初は驚きました。お化粧も白粉はなく、髪型も普通で眼鏡もかけていて、ニュースなどで見かけるジョニーデップが作中にいたため、とても目の保養になりました。作品では狂気に飲み込まれる主人公を演じているのですが、切迫感もあり、悲痛な叫びも次々に人を殺めるシーンも迫力がありました。俳優さんはすごいなあと常日頃から思っているのですが、やはりジョニーデップです。日本人にない色気があってカッコ良かったです。真面目な役もこなせるんだなあと新たな一面を発見できた作品でもありました。

シューターの言いなりになっていく様が背筋を凍らせます

敵対していたモートとシューターは最初こそ対等だったと思います。しかし、だんだんと暴走していくシューターを止めることができなくなります。それはそうです。モートを助けるためにシューターが現れたんですから、最初から力関係は出来上がっていたんです。もしここで奥さんが謝罪して再構築を選択したなら、シューターは消えていたでしょうか。きっと、シューターの存在は膨らみ続けて、最終的にはモートは消えてしまっていたでしょう。最初の人格が失われて、シューターが主人格になるわけですが、シューターを追い詰める人物が現れた時に、シューターはいなくなってしまうのでしょうか。執筆活動に精を出すシューターはきっと才能もあると思います。モートの本心ではなかった奥さん殺害を打ち消すことはもうできないので、モートが戻る確率は低いです。シューターのように人格争いの下克上でのし上がってきた人格がその人物の顔をして暮らしているかもしれないと思うと、怖いですね。

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他のレビュアーの感想・評価

人間の弱さを浮き彫りにした作品

人が遭遇するピンチについて考えさせられる場面人は生きている限り、さまざまなピンチに遭遇します。また、事故のような出来事が我が身に降りかかってくることもあると思います。この映画の中では、それが「離婚」であったり「疑惑」であったりするのです。これらもまた、人にとって予想できない出来事だといえます。ですが、これらの出来事全ては、自分が招いてしまった結果だということを考えさせられます。夫婦間における離婚問題や不倫問題もまた、どちらにも原因があって起こるものだと思います。ジョニー・デップが演じる役は、人気作家のモート・レイニーという男性です。彼には妻エイミーがいますが彼女には不倫相手がいて一緒に暮らしています。モートは離婚を承諾できずにいるのです。この話だけを聞くと、モートはとても寂しそうで、気の毒に思えてきます。そして人間は時に残酷で、とても正直だということが分かります。「愛が無くなる」という...この感想を読む

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