勘違いしていた愛の物語
歴史的な大ヒット作
2013年に公開、開始されたファンタジーアニメーション映画で、日本でも「アナ雪旋風」と言われるまで話題になった。また、代表曲である「Let it go」も日本中で人気になり、その時代を彩った。ものを凍らせる能力を持ってしまった姉エルサと妹アナがディズニー初のダブルヒロインとなり、能力を制御する鍵となる「真実の愛」をめぐる作品である。ミュージカル作品にもなっており、映画の至るところで誰もが聞き入ってしまう素敵な音楽が散りばめられているのも魅力的だ。
エルサにとって大切なアナ
この作品の主人公は2人いる。雪の女王と言われる「エルサ」とその妹の「アナ」である。幼少期はとても仲の良い姉妹であったが、ある事故が原因でその仲が引き裂かれ、エルサは閉じこもることで能力を隠すことになってしまった。突然引き裂かれてしまった姉との仲や姿すら見せてくれないエルサに戸惑いながらなんとか彼女の気を引いて遊んでもらおうと、奮闘する幼きアナの姿は愛らしく、ほんの少しだけかわいそうにも見えた。
エルサも苦しんでいた。大事にしていた妹を自らの能力によって傷つけてしまった、その上徐々に制御できなくなる自分の能力に日々戸惑い、恐怖していた。そのため部屋に閉じこもることになってしまった。また傷つけるわけにはいかないので、扉にすり寄ってくるアナを冷たく突き放すこともあった。本当は扉を開いて遊びたいのにそれができない、アナがエルサに出てきて欲しい一心で扉の前で歌を歌っているときにそんなと戦っていたのだろう。そんなある時、エルサの能力に唯一理解のあった両親が海難事故で亡くなってしまう。もうエルサは扉から出ていくことが出来なくなってしまった。
物語はエルサが成人し、女王に即位することで行われる戴冠式から動き出す。長らく閉ざされていた城が式によって解放されることにアナはとても喜ぶ。久しぶりに外へ出て、賑わう町の雰囲気に浸っていると1人の王子と出会う。戴冠式に招待されていた隣国の王子ハンスである。2人はすぐに意気投合し、なんと結婚を約束するまでいってしまう。自分も弟がいるが、突然「今日知り合ったこの子と明日結婚するから!」なんて言われたら思わず「馬鹿野郎、考え直せ」と言ってしまうだろう。もちろんエルサも同じでアナから電撃発表に大反対した。それでも食い下がるアナにとうとうエルサは能力を制御できなくなり、大勢の人々の前で解放してしまうことになってしまった。そうなるよなぁとエルサ気の毒に思う反面、アナも13年間も閉ざされた城の中で生活していればそのときに出会った男性と電撃結婚をしようと言い出すのも無理もないのかなと思った。
この事件をきっかけにエルサは国を飛び出し、山の上に籠ってしまう。その道中であの有名な「Let it go」を歌いながら氷の城を建設するシーンになる。その時に雪ダルマのキャラクター「オラフ」が生まれた。実はオラフはアナとエルサの幼少期に造られた雪だるまが元になっている。そしてこのオラフは生きているのだ。彼はなぜ自分が生きているかわからない。彼を造り出したエルサも後に「生きているの!?」と驚くことから、わからないようだ。もの語りが進んでいくとエルサはこう1体動く雪のモンスターを造り出す。マシュマロウと呼ばれるこのモンスターはエルサが氷の城からアナたちを追い出すため意識的に造り出したものなので、彼女たちや城に入ろうとする侵入者を排除するため暴れる。ではなぜオラフは自らの意思を持ち、行動することが出来るのか。私は彼にはエルサが長年想い続けたアナへの感情が投影されている、と思った。国を飛び出して、ついに自らを「ありのままに」解放していく。こんなにするのはあの時以来だ、あの時はアナにもこの魔法を見せてやれていたのに、こんな風に遊べていたのに。そんなことを思い出しながら造り出したオラフに無意識に感情を乗せていたのではないだろうか。そんなエルサの感情からか、オラフはアナのことがとても好きであるし、彼女を全力で救おうともする。そう思うと彼はエルサの感情から生まれたのではと思う。
愛とは
この映画の中で「真実の愛」はお互いを思いあう「姉妹愛」となっている。その愛をアナのおかげで見出したエルサは完全に能力を使いこなせるようになり、国は氷から解放される。ヒロイン2人に王子と氷売り(クリストフ)がいるからそれぞれの愛の物語なのかな、と思って見ていたら大呑電返しにあってしまった。男2人はどちらも妹アナにいってしまうし、ハンスは突然裏切ってものすごく驚くしで今まで見たディズニー映画と違ったのもだなと感じさせられた。確かに「愛」とは必ずしも男女間のものではない。姉妹愛、姉妹愛、家族愛、友情愛などなど。ついつい見逃してしまいそうなほぼ身近なものだから気づきにくいものであるが、とても大切なものである。自分も近すぎて見逃していたから王子との愛じゃないのか、と驚愕してしまった。そんな大切なものを気づかされるからお姫様や魔法に憧れる子供だけでなく、大人も釘づけになるだろう。
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