妊娠とは「そういうふうにできている」 - そういうふうにできているの感想

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そういうふうにできている

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.00
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妊娠とは「そういうふうにできている」

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
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キャラクター
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設定
4.0
演出
4.0

目次

元祖「妊活」の本

鈴木おさむ氏と大島美幸さん夫妻が最近流行させた「妊活」という言葉があるが、さくらももこさんの小説「そういうふうにできている」は、その妊活の元祖と言える作品である。

どう考えてもあまり子づくりに熱心と言えないさくらさんが、でたらめの基礎体温グラフをでっち上げたり、憧れの山口百恵さんに産院を紹介してもらうエピソードなどは、まさしく妊娠のための活動、妊活と言えるだろう。

妊娠を経験した女性であれば感じる、生命が宿ったことへの喜びと同時に、生みの苦しみへの不安などが赤裸々に描かれている。文体も平易で読みやすく、中学生や高校生でも共感を持てると思われる作品である。

帝王切開に臨むさくらさんの度胸に脱帽

さくらさんは骨盤が狭いため、お産は帝王切開でないとだめだと医師に告げられる。もう子供が宿っている以上、それしか選択肢がないので迷ったり悩んでいる暇はないのだが、そうはいっても局所麻酔で腹を切って子供を出すという行為は、誰でも不安になるものではないだろうか。麻酔で痛みがないとはいえ、意識がある状態で切腹するのだ。しかし、さくらさんは万が一死ぬようなことになっても死んでみるのもまた一つ、と開き直って手術に臨んでおり、私はこの度胸の良さ、潔さに脱帽すると同時に、母の強さを見た気がした。

帝王切開の手術中、自分は今一番「死」に近いところにいるのだとさくらさんなりの命や心についての解釈がかなり長々書かれていて、作中ではかなり異色な表現ではあるが、命の解釈については何度も読み返すと、難解ではあるが非常にさくらさんの見解が興味深い。

お産の後日談や、妊婦さんへのアドバイスも面白い

さくらさんがお産の後、子供の名前に悩んだり、粉瘤というできものが悪化する後日談も非常に面白い。誰しもが、産後に経験するかもしれない体力の低下からの不調だったり、子供の名づけという人生の中でも大きな決断をどう乗り切ったか、大変わかりやすく書かれている。

お産というのは、産んだ後も色々あるものなのだと、お産の経験がない人にも大変参考になる。また、さくらさんが、妊娠中にどういうものを気を付けて食べていたかなど、アドバイスも付加されている。健康オタクとしても有名なさくらさんのアドバイスは、妊婦さんにとっては大変心強いのではないだろうか。産後のダイエット方法についても書かれており、女性の「知りたい」を網羅している作品である。色々なハプニングを悲観せず、すべてお笑いネタにしてしまうさくらさんの、おおらかさが頼もしい。

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