その後どうしたか気になる、ふたりのたっくん。
鈴木違い。
出会いなんてどんなシチュエーションで訪れるかはわかりませんね。たまたま人数合わせで参加した合コンで繭子に目をつけられ、カモではないにしろ心の充足のためにあれやこれやと彼女好みに変身させられ、夕樹の方の鈴木さんこそイニシエーションラブだなあと。むしろ彼のための映画なんじゃないかとすらラストシーンを見て思いました。申し訳ないですが、松田翔太さん演じる鈴木が本当に最低男すぎて、かっこいいんですが、最後に絶望を突き付けられてざまあみろ!と少しだけスカッとしてしました。最後の最後に罪悪感からか、繭子を大切にしなかった後悔と繭子の自分への一途な愛を勝手に妄想して、都会の華やかさに目がくらんで最低男になり下がったけど、やっぱり性根はいいやつなんだと観る者のもやもやした気持ちを少し和らげておいて一気に叩き落したので、普通の恋愛映画とは一味も二味も違うという展開で好きなんですが、なんかすっきりしません。観た後の余韻には驚きしかなく、登場人物への感情移入とか自分を反映させるとか、そういった作業ではなく、巨大ドミノを完成させられたような途方もない疲労感と、完成した時の絵柄が期待していたものとは全く別物で唖然とするような、変な期待の裏切られ方をして気持ちが追いつきませんでした。とんだ鈴木違いでこんなに人生違うんだとその世知辛さも感じられましたし、なんというか、男女の仲って大変だなあと結婚して落ち着いてしまうと映画ですら疲れてしまいました。木村文乃さんが最後のシーンで両親に鈴木のフルネームを教える場面があるのですが、その演技がいい意味でわざとらしくて、結構好きです。
前田敦子という女優、繭子の器用さ
さて、男も男でずるずる二股をかけていて逆ギレして物にあたって最低だったのですが、それを見透かしてか、もともと男が途切れることに耐えられない女のかわかりませんが、女もたいがい図太いなあと思いました。健気で一途で見た目に判断されずに内面をみてくれる可愛らしい素敵女子かと思ったのですが、見事に裏がありましたね。いっそすがすがしいほど器用に二股をかけていて、しっかり両方の男にもばれずに信用させています。時代が時代だからでしょうか。女は浮気をしないものという認識が根強かったのでしょうか。この映画の時代設定頃に誕生した私はわかりません。今は男も女もする人はするし、しない人はしないです。まあ、人によるということになりますが、この繭子のあざとさが最後まで嫌悪感を抱かせなかったのはなぜなんだろうと自分でも不思議に思いました。彼女の器用さに驚きはしましたが、二股女やら計算女やらぶりっ子やら、そういった感情はわきませんでした。それは前田敦子さんが細くてやたら可愛くなったからでしょうか。はかなげな佇まいといつも楽し気な笑顔でいるからか、私は繭子はこうやった器用に生きて多少の苦労はすれど幸せな毎日を過ごしていくんだろうなあと思ってしまいます。
不快感、不潔感を抱くシーン
同時に何人の男と付き合おうが恋人がいながら魅力的な人に流されようと別にその時のタイミングがありますから全然否定はしませんし、自然な心変わりだと思うのでいいのですが、子どもができたというシーンを軽く扱われることにはとても不快感を抱きました。しかも繭子は便秘で一泊入院をしてスッキリしたと夕樹の方の鈴木に言います。便秘?どういうこと?と大人げなく作り物の登場人物たちに腹が立ちました。一応松田翔太さんの鈴木は結婚しようかと申し出ているのに、繭子は結婚はまだ早いといわんばかりに言い訳をかまします。最後まで見終わって、あの妊娠を告げるシーンで結婚しようといわれたときの繭子の反応は、まだまだ遊び足りないから喜ばなかったのだなと納得しました。それとこの男との交際はもう潮時だなと思っていたのかもしれません。やはり女は怖いですね。でも妊娠から逃げてしまうのはよくない。これから先状況が違えば喜ぶであろうことを、同じ罪を背負うことになったなんてカッコつけて過去にしてほしくないなあと、どこまでもフィクションなのに実在することではないのに怒りが収まりませんでした。
服がおしゃれ
前田敦子さんの着ている洋服は今だと古着女子たちに大うけするだろうセンスの良さで、時代の流行ど真ん中のソバージュガールも映っていましたし、カラフルなスーツを着ている若者もいましたが、靴も小物もすべて繭子の身に着けているものはどの時代でもおかしくないチョイスだと思います。私ももう少し細くて可愛ければ襟付きワンピースをベルトを着けてウエストを絞ってきてみたいです。主人は二回目以降は着ている服見たさにリピートしていましたし、ファッションに興味のある方も違った意味で楽しめる作品なんじゃないかなと思います。また若者だけでなく、親世代の年齢層も懐かしんで見れるように思います。昭和から平成初期の懐かしアイテムをエンドロールで紹介しているのも、楽しめました。
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