ヒーローを本当にかっこいいと思える作品 - ウイングマンの感想

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ウイングマン

4.404.40
画力
4.80
ストーリー
4.45
キャラクター
4.50
設定
4.50
演出
4.25
感想数
2
読んだ人
4

ヒーローを本当にかっこいいと思える作品

4.54.5
画力
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
4.5

目次

読者層が比較的高い年齢の珍しいヒーローもの

一般的に戦隊ものやヒーローアクション物は、幼児から小学校低学年までの男子児童を対象に製作されていることが多いが、ウイングマンは中高生や大人でも楽しむことができる、珍しいヒーローものである。その要因として、複雑な恋愛心理といった、主人公の中学生健太の等身大の生活がしっかり描かれている点にある。最近は実写ヒーローものでも、視聴する児童の母親をターゲットとして難しい設定が用いられたリ、イケメン俳優を起用するということが行われているが、今も昔も思春期の男子にとってカッコいいのは、悪者をやっつけるヒーローものの主人公より、サッカー選手だったり、自分の夢を投影しやすいものに集中しがちである。ウイングマンがヒットした1983年の当時も、キャプテン翼やキン肉マンなど同じ週刊少年ジャンプのなかではサッカーやプロレスといったスポーツを題材にしたものに人気が集まる中、ヒーローものとしては男子のみならず女子の人気も非常に高い作品だった。

書いたことが実現するノート、「ドリムノート」でヒーローになるということが、平凡な中学生健太の身の上に起こるという設定が、もしこんなことが自分の身の上に起きたらと自分に投影して読める作品であることが人気の理由と言える。

大人気漫画「デスノート」に先駆けた設定

ヒーローアクション物はつい、その戦闘シーンやアクションに気を取られがちであるが、ウイングマンの魅力に、先に述べた「自分の願望が叶うノート」ドリムノートの存在が欠かせない。

2003年から人気を博し、映画化、ドラマ化、スピンオフ作品、小説など繰り返し各種媒体で新ストーリーの製作が現在も続いているデスノートも、殺したい人間の名前を書くと殺せるノートの存在が物語のキーとなっている。よくよく考えると、ドリムノートは夢を持って書いた願望がすべて叶うのだから、デスノートより建設的で誰もが欲しがるノートなのではないだろうか。

ウイングマンもアニメ化されているが、実写化まではされていない。願望を実現したいという欲求を満たしてくれるという点では、エンターテインメントとしてデスノート同様実写などの媒体でも十分楽しめる作品ではないかと思う。

ちなみにドリムノートは、デスノートのように作中に細かいルールが示されているわけではない。ただ、過去に敵の刺客であるキータクラーにノートが渡ってしまった際、キータクラーがノートで喫茶店にいる人間を全員殺害しようと書き込んだところ、文字が消えてしまい達成できなかったということがあった。また、ノートの発明者あおいの父の話によると、人の命を復活できるほど万能ではないとされており、夢を伴わない思いつきや、亡くなった方を生き返らせるなど物理的に困難なことは叶わないようになっているようだ。しかし、実際には最終巻で健太が死亡したあおいを生き返らせるためにウイングマンに関する書き込みをすべて抹消し、あおいの再生を書き込んだところ、あおいは復活したため、心の純粋さや念じる力など、機械的なルールにとらわれない力を秘めたノートである。

斬新な表現、しっかりとした設定

健太にドリムノートを渡すきっかけとなった異次元人あおいは超能力を使えるが、天地が逆になる異次元空間「ポドリアルスペース」などは、CGの技術が発達していなかった当時としては、漫画やアニメで表現するには非常に画面的にユニークで読者の目を引き付けた。また、桂氏の作品はたまに登場人物が未成年であるにもかかわらず、親の描写があまりしっかりしておらず、「かわいい女の子との共同生活」を親が放任で一人暮らしだったから安易に達成できたとか、親が実際にはありえない価値観の持ち主で簡単に承諾したなど(電影少女、読み切りビデオガール)設定が甘い作品もある。しかし、ウイングマンについてはあおいとの同棲を、あおいがディメンションパワー(超能力)を使って健太の親に自分をいとこと思わせるように洗脳するという理由付けがされていて、実際には超能力の方がありえないのだが、親が放任ということよりは漫画的には設定がしっかりしていると言える。

13巻という長丁場の作品であるにもかかわらず、最後の結末が最初の物語にうまくつながっていて、実質「夢オチ」のような終わり方をする作品であるが、読者に納得がいくよう、コミックス収録時は連載時より大幅な加筆が行われている。

桂正和氏のすべての作品の原点

ヒーローアクションやファンタジー物を得意とする著者桂氏であるが、ほのかな恋愛や女性の可愛らしい描写、女性心理など、その後につながる「電影少女」「I"s」「ZETMAN」「DNA2」などの人気作すべての原点であるのがウイングマンである。

ウイングマンの容姿の造形もシンプルだが大変スマートでかっこよく、ウイングマンが戦闘で使用する武器類の描写なども、細密でメカ好きのハートをくすぐる。そういった描写はDNA2やZETMANにも同様にみられる。

また、女性に人気がある秘密としては女性心理がしっかり描かれている点や、女性が身に着けている洋服など、ビジュアル面でのセンスの良さ、リアルさが挙げられる。また、男性へのサービスカットとしてやや性的な描写もあり、ウイングマンのころから「桂氏の描く女性のお尻のリアルさが凄い」というのはファンの間でも評判であったが、桂氏はこれについてウイングマンのコミックスの読者のページで、デザインの学校で研究したと語っている。こういった「どういう点を作家として追及していくか」という、その後の桂氏の作風を左右する、すべての原点がウイングマンにつまっていたと言える。

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他のレビュアーの感想・評価

夢とは何かを真剣に考えさせられるのがウィングマン!!

昔の男の子なら誰もがヒーローになりたいと真剣に考えたものです。またそれを馬鹿にする友達もいませんでした。今と比べると夢と情熱を持って生きていた時代ともいえます。広野健太という主人公はあの時代の男の子達の代表であり、小学生の心をもった中学生です。私はアニメ放送から知り、ちょうどこの広野健太と同年代でしたので簡単に感情移入できました。奇しくも高校入試が終わった私はいつか出会うドリームノートに描くための絵を練習し、来たる侵略者に備えて体力づくりをしていました。でも実際にドリームノートを手に入れても、作品中のキータクラーのように使う事は出来なかったでしょう。私のその行動は現実にかなえたい夢ではなくヒーローへの憧れであり、広野のそれとは全く違います。当時の単行本の中で作者の桂正和が大枚をはたいて作ったウィングマンのスーツを着た姿の写真を私はいい大人が何を馬鹿な事をしていると思いながら見ていました...この感想を読む

4.34.3
  • つきぃつきぃ
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  • 717文字

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