好きなことに打ち込んださくらももこさんの等身大の青春 - 漫画版ひとりずもうの感想

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漫画版ひとりずもう

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好きなことに打ち込んださくらももこさんの等身大の青春

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.0

目次

自分が本当に楽しめることに正直なさくらももこさん

漫画版ひとりずもうは、エッセイ版ひとりずもうの漫画版であり、漫画もエッセイも上下巻の構成になっている。さくらさんのエッセイの特徴に、自分の体験を面白おかしくデフォルメしたり、自虐的な表現を使うことがあり、面白おかしく読めるという点があるが、漫画版ひとりずもうはエッセイ版にほぼ忠実であるにもかかわらず、エッセイ版の自虐的要素をあまり感じず、青春の甘酸っぱさや切なさを感じる、少女漫画的作風になっているのが不思議な魅力である。多感な高校時代、彼氏を作ってオシャレをして、という周りの友達の「当たり前の青春」に憧れながらも、本当に自分のやりたいことである「漫画」に全力投球し、夢をつかんださくらさん。当たり前の楽しみだけが青春の輝きなのではないと感じる、リリカルな作品である。

本当はどうだったのか?「青山君」に関するエピソード

さくらさんは過去に色々なエッセイや短編漫画で、高校時代に道ですれ違った他校の男子高生、「青山君」に恋をしてしまい。色々な妄想をしたりポエムを作ったりしていたということを書いている。ひとりずもうにも青山君のエピソードは出てくるのだが、一つ今までの作品と表現が違う点が、青山君への思いが終結した時の感情表現である。今までのエッセイや漫画では、風の噂で青山君に彼女がいることを知ってしまい、告白する前に恋敗れたさくらさんが、誰にもその悲しみを相談できず、お風呂で泣いてその恋を終わらせたとある。その様子はかなり悲しそうに表現されていて、母親にも相談できず辛い様子が書かれているのだが、ひとりずもうでは「よくよく考えたら大した接点もなく、条件次第ではこちらが振る可能性もある」ということに考えが至って気持ちが覚めてしまい、風呂場でも大して泣けなかったとある。真相はどちらなのだろうか。乙女チックな展開のエッセイや漫画は少女雑誌向けのデフォルメだったのか、ひとりずもうの方が強がった表現なのか、定かではない。

思った以上に強いたまちゃんとの絆

アメリカに留学することになったたまちゃんと、高校生になってから久しぶりに手をつないで歩いてみることにするシーンなど、さくらさんとたまちゃんがいかに強い友情と愛情で結ばれていたかがわかるエピソードが多い。高校生の女の子同士が、いくら仲が良いとはいえ、昭和時代手をつないで歩くということは、周囲から見るとかなり稀有なことでいように見えたろうと思う。しかし彼女たちは少女時代に当たり前にしていたことをもう一度懐かしみ、懐古することで、友情確認し合ったのだ。

学校でのたまちゃんとの部活での過ごし方や、漫画家になる前、なった後の手紙のやりとりなどをみていると、スマートフォンなどなくても、国境を越えても友情は変わらないのだと感じ、現在の文明の利器に人間関係を依存している若者にぜひ読んでいただきたい友情物語でもある。

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