バットマンが主役の戦争映画 - 太陽の帝国の感想

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バットマンが主役の戦争映画

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.8
演出
4.8

目次

少年の成長から目が離せない

「太陽の帝国」は主人公の少年ジムの成長を描いた物語。次々と自分の境遇が変化する少年から思わす目が離せなくなってしまいます。戦争が原因でイギリスの上流階級に生まれた少年が、どうやって生き抜いていくのかに興味を持たせ観ている人を惹きつける作品。上流階級で育った坊ちゃまには、きっと何もできないのだろうと思っていたのですが、子供というのは大人よりも強くたくましい存在なのだなと、感じずにはいられませんでした。どんな境遇になっても、生きることに貪欲で前向きな子供の姿勢といのは、いつの時代でも未来へと通じる光のような感じに思えます。「太陽の帝国」は2時間30分以上の長い作品ですが、最後までじっくり見て損はありません。私が一番感動したのは、苦しい思いをして命をつなぎ、何とか生き延びてきたジムが両親の元に帰った時です。正直、この瞬間が見たくて「太陽の帝国」を見ていたのですが、ジムの目からは涙が出ませんでした。しかも、寂しい表情がとても印象的でした。このジムから、いかに彼の通ってきた状況が大変だった事を物語っています。両親と会えました、めでたしめでたしではありません。少年の成長とともに、戦争がいかに人の心を奪ってしまう出来事かを感じずにはいられませんでした。

 

日本人必見のスピルバークの作品

インディジョーンズやE・Tなどの作品で知られているスピルバーグですが、戦争映画を違った角度から見せてくれる「太陽の帝国」のような作品もある事に驚きを感じます。しかも、日本のゼロ戦に憧れる主人公を軸にし、ガッツ石松や伊武雅刀を自然な形の日本兵として描いているので、とても共感がわき、日本人の目からみても違和感のない仕上げとなっている上質な作品でした。

 

特攻隊員が殺される場面は無理がある

助かっていた友達の日本人の特攻隊員とジムが出会い、刀で食べ物を切ろうとしていた所をジムの友人が見かけます。そのジムの友人は特攻隊員にジムが切られると勘違いして特攻隊員を殺してしまうのですが、この場面には無理があります。刀の使い方が、まるでジムを切ろうとしているとしか見えないのです。友人に勘違いさせるとしても、あまりにもわざとらしくて見ていても不自然さを感じました。もっと刀の使い方とかを、自然な形で表現した方が良かったと思います。

 

主人公のジムはバットマン

主人公のジム役を演じている少年は本当にうまく演じていました。目つきや表情、仕草や動作が役に溶け込み、名子役だと思わせてくれます。実はこのジム役を演じた少年は、あのクリスチャン・ベールの子供時代なのです。バットマンで活躍しているクリスチャン・ベールが子供時代に、このような役を演じているとは思いませんでした。特に名子役で名が売れた子役は、大人になって俳優として成功できないパターンが多いので、クリスチャン・ベールの活躍は嬉しいですね。

 

今までに見た事のない原爆の表現方法

日本の広島と長崎に落ちた原子爆弾。その原子爆弾を表現する方法として、思いもつかない方法を用いています。それは主人公が原子爆弾の光を天国の光と勘違いする方法です。長崎の原子爆弾の光が、ここ上海にまで届き主人公はその光を天国の光だと思ってしまうのです。原子爆弾の光がここまで届いているという大きさを表現している事に驚きました。原子爆弾の光がどこまで届いたかを、今まで考えた事はありません。「太陽の帝国」でその威力と巨大さを感じられた気がします。実際に、ここまで原子爆弾の光が届いたのかはわかりませんが、原爆の悲惨さや大きさを伝える方法として、珍しい表現方法には間違いありません。

 

状況が変わり打たれたジム

物語の見所として、少年ジムがイギリスの上流階級のお坊ちゃまだという事です。中国の人達に対してえばり、命令していたジムが戦争によって立場を失いました。なにも変わってないように見えていたのですが、その直後、メイドとして使えていた中国人にジムはぶたれてしまうのです。ジムという主人公の立場として、「太陽の帝国」をみていた私も、ジムと同じ立場となって強い衝撃を受けました。今まで仕えていたメイドがジムをひっぱたく。この事で、メイドは今まで何度もジムの命令に従っていたのは、何も好きこのんでしていた事ではなかったと、はっきり見えてきます。ジムに対して我慢を強いられていたのです。

 

海外から見た日本

日本人の立場からみた戦争映画やドキュメンタリーは見た事があるけれど、「太陽の帝国」のように、第三国から見た日本と戦争を見た事がなかった。この作品によって、あの戦争は当事者以外にも、多くの人々が巻き込まれていき、飢えや死を目の当たりにしたのだと感じた。日本人の海外での横暴なふるまい、信じたくないけれど、この映画を見る限りでは日本人はモラルにかけているのだと思った。その中で、救いとなるのが特攻隊となった若者。いつの時代も、今の若者達はと言われるが、私はそうじゃないと思う。若者達は、いつでも進化し続けていると信じる。

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