ちびまる子ちゃんの永沢君スピンオフ作品
永沢君の底意地の悪さに味がある
ちびまる子ちゃんに出てくる、意地の悪い級友永沢君の中学生活の物語である。一話一話のページ数が非常に少ないにも関わらず、ストーリーが濃く、大変読み応えががある。基本は一話完結型の話になっているのでどこから読んでも面白いが、恋愛に絡む話などは最初から読んだ方がより楽しめるストーリー展開になっている。
とにかく永沢君の言い方が腹が立つほど嫌味であり、大食いの小杉がこの作品では比較的常識人として描かれている。小杉が「悔しいが永沢君に言い返す言葉がない」と思ってしまうのに、ついつい読者も同調してしまい、読者も永沢君に言いくるめられてしまうような錯覚を覚える。
単純な絵なのに描写が過激
この作品は青年誌である週刊ビッグコミックスピリッツに掲載されていたせいか、本来のちびまる子ちゃんが好きな世代である子供達にはあまり見せたくないような過激描写もある。特に美人の城ケ崎さんが永沢との情事を妄想するシーンなどは、絵がほのぼのとしたタッチのまま描かれているためかえって生々しく感じ、あの城ケ崎さんがこんなことを、知りたくなかったとショックを受ける読者もいると察する。しかし、ちょっとひねたさくらさんのナンセンスギャグが好きな人にとっては、日曜のほのぼのとしたアニメの裏で、こういう設定があり、筆者が堂々とそれを描いていることを面白く思う人もいるだろう。同じ国民的アニメでもサザエさんなどではまずありえないことなので、そういう意味では希少な作品である。
アニメへの影響
この作品で小杉が「僕は中学からの友達」と言っているように、本来この作品を描いた時点では、小杉は「永沢君」のオリジナルキャラクターであり、おそらく城ケ崎さんもそうであったろうと思われる。
小杉や城ケ崎さんがアニメに出て目立ち始めたのはこの作品の発表後であり、また永沢と城ケ崎さんが犬猿の仲である設定になったのも同様である。元々はまる子が主役の「ちびまる子ちゃん」のスピンオフが「永沢君」なのだが、この作品から逆にちびまる子ちゃんが影響を受けている点が非常に面白い。何も知らないで観ている子供たちは、永沢君と城ケ崎さんのケンカをなんとも思わないかもしれないが、城ケ崎さんがのちにいかがわしい妄想をするほど永沢を好きになることを知っているファンは、なんだか二人のケンカすら意味ありげに感じてしまうのである。このように、スピンオフの側が元の作品い大きな変化を与える例も珍しい。
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