硬派な戦うヒロイン
金子節が冴えわたるッ!!!
↑もう絶対脚本こんな感じだよ……とのっけから皮肉ってしまいました。
『戦姫絶唱シンフォギア(以降、シンフォギア)』について語るには、まずシリーズ構成・脚本担当の金子彰史氏について語らねばならない。
金子氏の名前は、『シンフォギア』のスタッフとして知られる以前に、ゲーム『ワイルドアームズ(以下、WA)』シリーズのトータルゲームデザイナーして知られていた。
『WA』をプレイしたことのある人ならご存知だろうが、『WA』はプレイステーション黎明期にリリースされて以降、良作としてRPGファンに広く名前を知られているゲームだ。だが、その世界観――荒野とSF、ファンタジーを融合させたようなもの――は決して万人向けとは言い難く、金子氏特有の凝ったセリフ回しと合わさって、いつしかマイナーゲーと認識されるまでになった。おそらく、シリーズ全てを通してプレイ・クリアしている人はそう多くはないだろう(実は筆者はその少数派である。えへん)。
かつて金子氏は、ゲーム雑誌上で「誰でも愛されるゲームではなく、油ギドギドの濃厚な豚骨ラーメンのようなゲームを作りたい(意訳)」というようなことを言っていたが、その精神はアニメ作品である『シンフォギア』にも活かされている。
見た目はどこにでもある変身ヒロインものを思わせる『シンフォギア』であるが、その実態は熱血金子節近未来アクションだ。
いかにも“萌え”を意識したキャラデザとは正反対ともいえる、熱血展開の連続。古代文明を引っ張って加工した、やや難解でとっつきにくい設定(何を言ってるのか大体理解できない。二回見ても意味がわからない)。たまにうっとうしく思えるほど、「我が道」を語るキャラクターたち。これらは紛れもなく、『WA』から続く、“豚骨ラーメン”精神である。
特に金子氏らしいのは劇中のセリフだ。独特の言い回しと、ちょっと青臭いけどカッコいいセリフたちは、観た(聴いた)者たちの心を掴んで離さない。
「生きることを諦めるなッ!」「思いつきを数字で語れるものかよッ!!」などなど、一度聞いたら忘れられなくなる名言ばかりだ。まとめサイトで取り上げられたり、botになっていたりもしているようだ。
「記憶の遺跡」「カ・ディンギル」とWAから使っていた用語をずんずん引っ張ってくるのもまた困惑。「うわちゃー、金子さんまたWAネタ入れてきたよー」と何故だか嬉し恥ずかしの気持ちになってしまう。ノイズの外見も、『WA』シリーズに通ずるものがあり、特に『WA2』のモンスターデザインに似ている。これでサウンドクリエーターがなるけみちこだったら最高だったのに……ッ。
『シンフォギア』の真価は表面上だけで判断してはいけないッ!!
しかし、筆者は『シンフォギア』がアニメファンたちの話題に上るのを見たことがなかった。
故に最初に『シンフォギア』を見たときは、「パッケージどおりの流行りの歌と変身・戦うヒロインものなんだなー」とあまり期待せずに視聴を始めたものである。
だが、良い意味で予想は裏切られた。『シンフォギア』は、紛れもなく良作だったのだ。
まず、金子節と戦うヒロインものの相性が意外なほど良い。『WA』の世界観ではややうっとうしかったセリフや主人公たちの行動理念も、『シンフォギア』の少女たちに語らせ、行動させれば、そんじょそこらの変身ヒロインでは及びもつかない「筋の通ったカッコいいヒロイン」の誕生となる。
響、奏、翼、クリスといった奏者はもとより、響の友人たちや二課の大人たちそれぞれが己の役割を果たす様は、人間ドラマとして胸を熱くさせてくれる。
そういえば『WA3』や外伝的作品『XF』も女性主人公で、男性主人公メインの他のシリーズより成長物語として見ごたえがあったことを思いだした(ちなみに『WA』シリーズはスタート当初は主人公を選べるシステムになっていることが多いが、最終的には一人の主人公にフォーカスがあたるので、ここではそれらの人物――ロディやアシュレー、ヴァージニアを主人公と説明していることを留意されたい)。金子氏の熱さは女性主人公にこそ宿すべきものなのかもしれない。
また、アクションも文句ナシだ。格闘技の響、刀の翼、銃火器のクリスと主役三人のバランスがよく、それぞれの見せ場を用意することを可能としつつ、アクションの一つ一つに手抜きがない。必殺技を放つ際、技名のカットが入るのもアニメではちょっと珍しいのではないだろうか。
また、声優陣も素晴らしい配役だった。響の、ちょっと調子乗りで優柔不断な一面と、戦場での芯の強さを演じ分けられる悠木碧は流石の一言。水樹奈々の凛とした演技も可愛らしい。フィーネ役の沢城みゆきは、むしろ沢城のためにフィーネが用意されたのではないかというぐらいハマリ役だ。おそらく、声優界広しといえどもフィーネに“なれる”声優は沢城みゆきぐらいだろう。
このように、『シンフォギア』はアクション・シナリオ・声優良しの良作だと筆者は思っている。それはまさしく、ストーリー・キャラクター・設定良しの『WA』シリーズの如く。
個人的な好みを言わせてもらえば、キャラデザはもうちょっと硬派なほうが良かったなぁ。
歌の必要性についてファンの意見を聞きたい
ただし、どうしても一つだけ納得いかないことがある。それは、戦っている最中に奏者たちが歌を歌うことだ。
あれは自らの強化と共に鼓舞する意味があると思われるのだが、口の動き方にどうしても違和感がぬぐえない。口の動きが小さく呼吸が乱れることもないせいか、全力で歌っているようにも見えないため臨場感が足らず、「意志疎通はどうやってるの?」とツッコミたくなること多数だ。
あれさえもうちょっとちゃんとしていればなぁ、と本当に惜しいと思う。
だが、『シンフォギア』は幸いにも『シンフォギアG』『シンフォギアGX』と続く人気シリーズとなっているようで、これからどうなっていくか、期待しながら視聴しようと思っている。
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