おもしろい死後の世界
笑いたっぷり
私が好きな浅田次郎先生の面白さが溢れていました。
まず、死後の世界を描いていて死んだ人間が自分の戒名を見て感心したりするのは、なかなか思いつかないことなので笑いました。
「そうか戒名はこうやって知るのかもしれないな」と、思わず感心しました。
そして自分の行いをスライドで見せられたり、「成仏しますか?」ボタンとか、死後の世界も脱アナログになるのかも・・・という感じで笑いました。
ヒットマンにしても「ひゃぁ~あかん、間違えた」という人殺しをするが、「間違えるか?」というボケたところ素敵です。
こんな小さな笑いが何か所も散りばめられていて、楽しめる1冊でした。
もちろん涙もたっぷり
妻や小さな子供・家のローンのことなど、思い残しがたくさんある中で、一番悲しいと思ったのは痴呆のおじいちゃんと電車で会ったシーンです。
孫が知らせに来て、自分より早く息子が死んでしまった。痴呆はフリであったこと、毎朝電車でひとり泣いていることを知った椿山課長は届いてはいけない声で「ごめんなさい、おとうさん」とつぶやきます。
このシーンは、切なすぎて泣けます。
他にも現世に戻った連ちゃんが、本当のおとうさん・おかあさんに「ありがとう」を伝えるシーン
親の仇を討つためにヒットマンを殺そうとしたタクを救うために、正体を明かしヒットマンに拳銃を向けるシーン
市川のところへ挨拶に行き静子と話し、昔を思い出して「しいちゃん」と言うシーンなど、ラストのあたりは涙があふれっぱなしでした。
最後は後悔なし
死んだ3人は、生きていれば接点のないバラバラな3人です。
でも”死ぬ”というキッカケがあることで、バラバラが徐々に繋がっていくのは面白かった。
どう考えても、極道と福祉関係の仕事をしていた椿山課長のおじいちゃん、そして連ちゃんが繋がる事はなかっただろうと思うので、繋がっていく過程も楽しめた。
そして死んだけども、それぞれが思いを遂げれたことが良い。
例えば連ちゃんだったら、おとうさん・おかあさんにお礼を言えたし、極道の武田は子供たちの足を洗ったり、復讐をさせないように出来たりと思いを遂げれたと思う。
椿山課長も、仕事ばかりで何も知らずに死んだけど、あっさり成仏ではなく現世に一度戻ることで、知らなくてもいい事実もあったけど知りたかった事など、思い残さずに成仏出来たと思う。
最後に、正体をバラし地獄へ落ちるはずの連ちゃんを、おじいちゃんが身代わりになることを申し出たのはスゴイ、でも「どうして?」とも思った。
しかし、手を突いて謝ると言っていたマキコさんに「愛してる。これからさきもずっと。」と伝えて欲しいと言ったおじいちゃん。
優しいし強い、そして後悔もしていないと感じた瞬間です。もちろん身代わりを選んだおじいちゃんを、おばあちゃんは理解していてると感じ取りました。
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