自衛隊から見る戦争 - ジパングの感想

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ジパング

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画力
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演出
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自衛隊から見る戦争

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
設定
4.5
演出
3.5

目次

「ジパング」という物語

現代の最新鋭イージス艦「みらい」が、太平洋戦争真っ只中の1940年代へタイムスリップ。ミッドウェー海戦で傷ついた一人の海軍少佐「草加 拓海」を助けたことで、歴史の歯車が大きく狂いだす。この先日本を待ち受ける悲惨な運命を知りつつも、歴史への干渉を避け、元の時代へ帰還する道を模索する「みらい」の乗員たち。しかし、「みらい」副長角松2佐からこの戦争の行く末を知らされた草加は、自らが思い描くジパングへ日本を導くため、世界を巻き込み動き出す。史実とは異なる日本を創造する草加とそれを阻止する角松。お互い自分の考える正義に基づき行動していく。

自衛隊の姿

憲法の矛盾を象徴する自衛隊が、現代とは異なる時代においてもその存在意義を賭け、戦闘や日本軍との接触を極力回避。しかし、そんな彼らとの事情は関係なしに、世界は「みらい」を歴史の表舞台に引きずり出し、米軍の猛攻が「みらい」を襲う。高出力の全方位レーダーや長射程の対空ミサイルをはじめとする複数目標同時対処能力、この時代では他を圧倒するイージスという名の力を持ちながら、専守防衛を貫き全力は出さない。

米軍の仕掛ける全力に対し、全戦力を出さず、持てる全てを持って迎え撃つ。全力ではないが、21世紀の自衛官として間違いなく本気で全力を尽くして戦っている。これがこの作品の大きな特徴であり、現在の日本の軍事力、自衛隊のあるべき姿をわかりやすく映し出してる。戦争という日常を生きてきた者たちと戦争を知らない者たちが、それぞれの意志に基づき全力で向き合う姿が非常に印象的である。

また、本作品は数多くの登場人物にスポットを当てて物語の世界観を広げている所も見どころの一つ。史実と照らし合わせながら、実在の人物たちが主人公たちによる影響でどんな歴史を歩むかが細かく描かれており、その行動が後の物語に大きな影響を与えていく。

今の時代だからこそ読んでほしい!

作者の戦史や海軍、自衛隊に関する豊富な知識や情報が物語のリアリティを色濃く映し出している。自衛隊の装備など、一部現実と違っていると思われる場面も見受けられるが、あくまで娯楽作戦なのでそこまで違和感なく読むことができる。

尖閣問題など日本を取り巻く厳しい安全保障環境の中で、近隣諸国のいかなる挑発行為にも専守防衛を貫く現代日本の軍事力の在り方について考えさせられる会心の作品。

また、戦争を現代人の目線で見ることにより、当時の人たちの思いや今の日本人が持つべき覚悟についても考えさせられる。

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