ダウン・ツ・ヘブンに見られるクサナギの変化の考察 - ダウン・ツ・ヘヴンの感想

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ダウン・ツ・ヘヴン

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ダウン・ツ・ヘブンに見られるクサナギの変化の考察

4.04.0
文章力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
3.5

目次

はじめに~クサナギについての考察

本書はスカイ・クロラシリーズ三作目で、クサナギがエースパイロットから中尉という立場に出世していく様が描かれています。クサナギが最も人間らしい、自分の感情に素直な時期だと言えるでしょう。前作のナ・バ・テアでは、クサナギは飛行機に乗ることだけを生きがいとし、他者との関わりに興味がないエースパイロットとして描かれていました。そこから一歩進み出し、外側とのコミュニケーション能力が発揮されるのが本書と言えます。「一人が好き」「人が多いのを好まない」という、これまでのクサナギの一匹狼性も出ていますが、大勢の新人パイロットの前で行った演説には、甲斐が「あなたには、本当に感心する」「持って生まれた才能かもね」と絶賛するほど、人を惹きつける能力があることも発揮しています。

また、ティーチャとの再会に涙を流しながら喜び、笹倉が基地に招集されると抱き付いてはしゃいで喜びを表現するなど、これまでに見られなかった感情表現も見られます。感情が見えることで、私達も更にクサナギという人物に惹かれ、感情移入してしまいます。クサナギの魅力に取りつかれた、杣中のように。

カンナミという人物についての考察

本作で搭乗するキーパーソンといえば、新人パイロットのカンナミでしょう。カンナミといえば、第一作目スカイ・クロラの主人公として描かれている人物ですが、スカイ・クロラの頃とは多少雰囲気が違います。というのも、本シリーズの時系列は発行された巻とは異なっており、本書はスカイ・クロラよりもっと以前の話だからです。「この少年が、スカイ・クロラのエースパイロット・カンナミに成長していくのだな」と、シリーズを発行順に読んでいる読者なら気づくでしょうが、時系列順(スカイ・クロラを飛ばして読んでいる読者)には、彼はどのような人物にうつるのでしょうか。クサナギの夢の中で、カンナミの台詞に「僕は、あなた以外じゃない」というのがあります。これはどういう意味を含んでいるのでしょう。単に、キルドレ同士であるということなのか、クサナギとカンナミは血がつながっているような特別な関係なのか、様々な推測が出来ますが、物語はその核心には触れずに進んでいきます。

本書の役割についての考察

この「ダウン・ツ・ヘブン」がスカイ・クロラシリーズで果たす役割について考察すると、クサナギという人物の外界的要因に帰する変化を表している巻であると言えるでしょう。クサナギを取り巻く環境が目まぐるしく変化していくのが本書です。その中で、クサナギの愛するもの(もちろん、飛行機のことです)や、憧れる人(ティーチャ)、信頼する人(笹倉)は変わらないのに、クサナギ自身も次第に変化せざるを得ない状況に追い込まれていきます。本書はそういった、クサナギの分岐点、ひいてはスカイ・クロラシリーズの分岐点となる作品と言えるでしょう。

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