天才とトラウマ - グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちの感想

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天才とトラウマ

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

天才下剋上系映画

この作品のウィルの役回りを要約すると「①底辺に見えるやつが実は天才だった→②トラウマがあり、うまくいかない→③愛情ある人間とトラウマを克服」の3つの段階で表すことができます。①の段階では、漫画「スラム・ダンク」や「ファンタジスタ」等、スポーツ漫画によくあるストーリーです。日本で本作が人気な理由は日本の人がこの①のストーリーが好きだということも理由の一つであると言えます。

ウィルのトラウマ

トラウマ論は精神分析や心理学の世界では今でも主流な考え方になっています。(日本で人気のアドラー心理学ではトラウマ論を認めません。)幼いころに十分な愛情を受けなかったという意味で、愛着障害と呼ばれることもあります。ウィルは養父に育てられ、DVを受けていたという典型的な愛着障害の持ち主であるといえます。また、血縁関係がある父と母と一緒に住むことが主流になっている社会では、異なる家族構成の子どもは違和感を感じながら生きなければなりません。その点からも、ウィルが生きづらい精神状態で暮らしてきたことが推測できます。

トラウマを持つ天才たち

トラウマという概念を用いるかどうかは別にして、現実世界でも子ども時代に安定した愛情を受けることができなかった人間が天才になるという例は枚挙にいとまがありません。たとえば、最近ではスティーブ・ジョブズが私生児であったことが知られています。ほかにもフランスの哲学者であったルソーや日本の小説家の夏目漱石など、幼いころに両親からの愛情をしっかり受けなかった偉人は数多いです。若いころに差別を受けてきた人間についても同様なことが言えますが、彼らはネガティブな気持ちをバネに物事をあらゆる側面から考えざるを得ない状況になり、特定の領域で天才と呼ばれるに至ります。また、いくら目標を達成しても満足できない空白感に悩まされるとも言われています。ウィルの場合もトラウマが天才的な能力に関わっていると言えるでしょう。

ハッピーエンド過ぎやしないか?

前述したとおり、「愛着障害+天才」という特徴を持った人間は、一生涯何かと戦いながら生きていかざるを得ません。それを考慮すると、この映画の終わり方がハッピーに見えすぎる点に疑問が残ります。確かに、愛着障害は精神的に安定している人と一緒にいることで、緩和されてくることがあるといいます。ショーンやスカイラーがウィルの精神的安定に役立ったという見方もできるでしょう。しかしながら、精神の不安定さに特効薬はないのです。もし特効薬があるのならば、ショーンを演じたロビン・ウィリアムズがうつ病で自殺をすることもなかったでしょう。

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