これでも原作の全てを描けていない
八犬士が全員集合
八犬士が全て揃ったのが、全7巻で構成されたOVAシリーズの第4巻辺りです。前作シリーズは全6巻で構成されていますので、計13巻(=7+6)構成の第10巻(=4+6)で八犬士が全員揃ったかたちになっているのです。全員揃うまでのプロセスがとても長く引っ張り過ぎているように感じられました。本来は、八犬士全員が揃って、はじめて物語の本筋が始まるのではないでしょうか。しかし、一人一人のエピソードや、出会った時のエピソードを描きすぎて、終盤がだいぶ飛び足の展開になったように思えます。前シリーズで、八犬士が全員揃うところまで描ききるべきだったように思います。随分、ムダな場面が多かったように感じられます。逆に考えれば、それだけ原作に沿って、忠実に描いた、とも受け取ることができます。果たして、観た方の多くは、どちらの印象に傾くのでしょうか。私自身は、原作から省いて良かった場面はあったのだと思います。すなわち、間延びしてしまった感じは否めません。OVAシリーズは、OVAシリーズで、アニメ作品としてのクオリティーを意識するべきだったのではないでしゅうか。やはり、私はそのように考えてしまいます。しかし、原作は、数十年もかけて完成されているものです。現実社会のアニメ作品でいえば、「ワンピース」や「名探偵コナン」のような10年以上続いている作品に例えることができます。あまりに膨大な量を、OVA13巻、時間換算して約7時間30分に納めることが無謀だったのかもしれません。また、原作においては、インターネット上のフリー百科事典「Wikipedia」の記載事項を読むと、アニメ本編の続き部分が書かれており、原作の最後まで、アニメ化しきれていないことが伺えます。だから、OVAシリーズにおける八犬士が全員揃うのが、遅かったのかもしれません。言い換えるなら、原作のキリの良い部分までをアニメ化したに過ぎないのです。
呪われた八犬士
確かに、八犬士においては、全員が呪われているような不幸な展開をしています。あまりに気の毒になるくらいです。実の妹を殺してしまった兄、自分の身体の上で切腹した父、自分の身に置き換えて考えてみると、身の毛がよだちます。しかし、不幸だからこそ、それぞれの八犬士は、自分の居場所を探しているように思えました。確かに幸せな生活を送れているなら、八犬士として仲間に加わらないと思えます。むしろ、今の幸せな生活を壊したくない、というのが本音なのではないでしょうか。幸せな境遇だったのであれば、八犬士という存在が成り立たないとだと思います。そういった部分においても、物語の作り方が上手だと思ってしまうところです。八犬士が成り立ち、仲間となっていくことに必然性を感じさせるのです。原作者の考え込まれた設定が活かされているポイントなのだと思います。
最後の八犬士
最後の八犬士は、最年少の子供であり、外見からの意外性の強いキャラクターでした。子供というキャラクターを打ち出し、屈託のない笑顔をみせる面は、他の八犬士には見られない一面です。そして、力量においても、八犬士の中で最強の存在でした。まさに、意外性の塊のような人物像なのではないでしょうか。そして、アニメ本編における声優は、日高のり子さんでした。何か、最後の八犬士と重なる人物像が、他のアニメ作品でいるような気がします。少し考えてみて、心当たりを探し当てることができました。「るろうに剣心」の登場人物、「瀬田宗次郎」と、最後の八犬士の人物像が重なるのです。声優がどちらも、日高のり子さんなので、印象が余計に重なるのかもしれません。
信乃と浜路
信乃が女性らしい名前なのに対して、浜路は男性らしい名前のような気がします。私の想像力が弱いのか、浜路と聞くと、「ちびまる子ちゃん」に登場する男子小学生のハマジしか思い浮かびません。お互いに惹かれ合っている信乃と浜路は、それぞれ名前に逆転現象が起きているのです。意図的なのか、偶然の産物なのか、不思議な名前の付け方だと感じました。でも、惹かれ合う二人なので、それぞれ逆の性別らしい名前を敢えて付けたように思えます。実際に、浜路はアニメ本編で一度死んでしまっています。よって、「~新章~」に登場している浜路は、死んだ浜路と似ていても、実は違う人物です。ただ、魂がどうのこうの、無理矢理だけど最もらしい理屈をつけて、さも同一人物だったように描かれていました。しかし、死んだと思っていた浜路の再登場は、意外性は抜群だったように思います。浜路の再登場により、物語にハッピーエンドの道筋が見えてきたように思えました。しかし、八犬士には不幸な展開しかありません。周囲も、自分自身も不幸になっていく性質があるようです。八犬士にかけられた呪いの存在です。また、再び浜路が死んでしまう展開も大いに予想されます。アニメ本編の最後は、浜路が死んでしまうのか、生き延びることができるのか、その点が大きな注目点になっていたのではないでしょうか。
こんな物語で、江戸時代の人々を一喜一憂されていたのだと考えると、感慨深いです。そして、今のなお、色褪せない物語は凄いの一言です。このアニメ作品を観た私自身も、少しは江戸時代の人々と同じ気持ちを味わえたのでしょか。観終えた後に、そんなことを考えてしまったOVA作品です。
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