OVA作品の存在意義について - 魔物ハンター妖子の感想

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魔物ハンター妖子

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OVA作品の存在意義について

2.02.0
映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
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目次

流行に便乗したコンテンツ!?

OVA作品「魔物ハンター妖子」は1990年代の作品で、中国の映画である「霊元道士」や「キョンシー」の存在が流行した時期と綺麗に一致します。

「キョンシー」のような存在は登場しないものの、チャイナ服をまとった主人公の妖子の存在は、影響を受けたものであることは間違いないでしょう。また、登場人物のおでこに札を貼っている場面がありましたが、まさに「霊元道士」「キョンシー」を思わせる描写です。あまりにそのままだったので、笑ってしまいました。ひょっとしたら、意図的に笑わせることが狙いで、分かりやすく「霊元道士」の描写を用いたのかもしれません。本当に影響を受け、似せて制作されたコンテンツなのであれば、「キョンシー」の存在を匂わせるものを登場させていたと思うのです。ポイントを絞って、「霊元道士」を思わせる映像を差し込むことで、笑わせようとした意図が強いように感じます。

ただ、「霊元道士」や「キョンシー」は流行しましたが、流行止まりとなり、文化が定着するまでに至りませんでした。

アラサーと呼ばれる世代が観ても、「魔物ハンター妖子」の面白さを理解できないように思うのです。それは、元ネタである「霊元道士」の存在を知らなければ、面白さの半分も伝わらないからです。「キョンシー」の存在を知っている世代はアラフォー以上の年齢層だと思います。そういった意味では、観る年齢層が絞られたOVA作品であり、コンテンツなのだと考えられます。

色褪せたコンテンツですが、元ネタの存在があるだけに蘇えることにも期待できない遺物なのだと思います。

 

マルチメディア展開

当時としてはまだ比較的珍しかった、アニメ・ゲーム等の多ジャンル展開を企画当初より想定したメディアミックス展開黎明期の作品である。また各メディアごとにおける世界観や設定等には共通点がほとんど見られず、妖子以外のレギュラーキャラや妖子の性格まで異なるのも大きな特徴となっている。

メディア展開はOVAを主軸に、平行してゲーム、CDドラマ、小説等が製作され、OVA展開終了の後に宮尾の手による漫画版をもってシリーズ展開は終了となった。宮尾は漫画版妖子をシリーズを終結するピリオドとして描いたと述懐しており、以降のメディアミックス展開は行われていない。なお商品展開自体は後にDVD-BOX、ガレージキット等が販売されている。(参照元:Wikipedia)

マルチメディアを前提に制作されたコンテンツとしては、珍しいタイトルなのは明らかだといえます。また、注目すべきは1990年代に制作されたコンテンツだということです。現在アニメ作品では、マルチメディア展開を前提に制作された珍しくもありません。

具体的な代表例を挙げれば、「妖怪ウォッチ」などは記憶に新しいのではないでしょうか。

しかし、20年以上も前に、こんな取り組みがされていたことに驚きが隠せません。ただし、クローズアップされることも少なかった事実を考えると、登場する時代が早すぎたコンテンツであることは否めないように思います。

特に、ゲームのハードが「PCエンジン」だったことから、どれだけ昔のコンテンツであるのか、容易に想像できるのではないでしょうか。ゲーム業界も「プレイステーション4」が最新ハードであり、さらにVR世界に突入しようとしています。「PCエンジン」を全盛期でプレイしていたユーザーも40代前後のはずです。非常に感慨深いコンテンツであることを改めて感じられます。

 

作画・映像のクオリティー

「魔物ハンター妖子」というOVA作品が、何を目的に制作されたものなのか、疑問に感じてしまうものだったように思います。

それは、アニメ作品としてのクオリティーがあまりにも低いからです。作画という点においても、中途半端であることが否めません。女性ヒロインを主人公に据えた作品であるなら、女性ヒロインを輝かせ、魅力を打ち出すものではなくてはなりません。しかし、「魔物ハンター妖子」の主人公である妖子は、画が下手であることから、可愛い女の子という印象がどうしても抱けません。これは、こういったジャンルのアニメ作品において、痛恨の弱点といえるのではないでしょうか。

その部分の惹き付けが弱かったことで、一般にも浸透しなかったのだと思います。

80年代以降の美少女作品の一ジャンルとして定着していた「剣を持って戦うヒロイン」の流れを汲みつつも、ビキニアーマーに象徴される洋風・ファンタジー路線に偏重していた既存の作品とは一線を画す、チャイナドレス姿の妖子のコスチュームデザインが注目を集めた。また変身時の前口上と、キューティーハニーを髣髴とさせる変身途中のヌードシーンがシリーズの定番となっている。(参照:Wikipedia)

インターネット上のフリー百科事典「Wikipedia」には、このような記載がありますが、「キューティーハニー」と比べてしまうと、「魔物ハンター妖子」のクオリティーは低すぎてしまうように思えます。

「キューティーハニー」においては、相当に昔のアニメ作品なので、作画レベルもそれほど高い作品ではありません。しかし、アニメ本編から漂う色気は、明らかに「キューティーハニー」の方が高いように感じられます。「魔物ハンター妖子」の主人公、妖子の設定を高校一年生にしてしまったことも、失敗だったのかもしれません。幼いイメージが付き纏ってしまい、まったく色気が感じられないのです。

また、OVA作品としての魅力を欠いたものに仕上がっているので、他ジャンルであるゲームや漫画・小説に波及することはないように思います。

 

主人公を取り巻く登場人物

主人公に最も近しい存在なのは、妖子の婆ちゃんであるマドカです。

先代の魔物ハンターという位置付けで、妖子を守る為に登場したにも関わらず、見掛け倒し感が強いキャラクターです。まずは、ご高齢の婆ちゃんにもかかわらず、マドカという名前に違和感があります。名前と年齢が噛み合っておらず、笑えてしまいます。そして、満を持して登場するのに、あまり役立つ機会はありません。

マドカはウケ狙いで、お笑い担当の登場人物なのだと思います。

また、妖子の母親である小夜子は、今でいう塩キャラクターという言葉がピッタリではないでしょうか。

むしろ、私の個人的な希望としては、小夜子が本作の主人公であって欲しかったです。大人の色気があり、漂っている雰囲気も良いと思います。むしろ、そんな位置付けだった方が、人気が出たのではないでしょうか。そう感じずにはいられず、もったいないキャラクターだと思います。もっと登場する機会があっても、もっとアニメ本編に食い入ってきても良かったように思います。

ただ、共通していえるのは、主人公の妖子以外の登場人物は、存在感が控え目で、妖子の引き立て役という印象を強く持ちます。あくまで、存在感を強く打ち出したいのは、妖子なのだと思います。そういった意図は、とても強く感じられます。

 

主人公のモチベーション

物語冒頭では、妖子のモチベーションは低く、お母さんである小夜子に近いものだったように思います。

それとは対称的に、婆さんであるマドカのやる気は高いもので、妖子に影響を与えるものは大きかったのではないでしょうか。しかし、変身したことにより、妖子のモチベーションが急変したのが驚きでした。どうして、こんなに急に態度が変わるのか、違和感がありました。

しかし、これはコスプレ効果によるものなのでしょうか。

衣装を身にまとうことで、無意識にモチベーションは高くなるものです。現実社会においても、職場に制服というものが採用されているのは、そういった意図もあるのではないでしょうか。他者から見て、スタッフであることを示すのが、制服の本来の意図している部分です。しかし、制服に身を包むと、不思議と気持ちも「仕事モード」に切り替わります。

アニメ本編における妖子の変化は、制服効果を意図的に狙って描かれたものではないように思いますが、妖子の気持ちの変わり様は、制服効果だったのだろうと考えられます。

 

コンテンツのメッセージ性

OVA本編からは、メッセージ性のようなものを感じられません。とりあえずコンテンツをアニメーション化しました、というようにしか感じられないのです。

全体を見通してみても、やはりOVA作品の存在意義がよく分からないです。

チャイナ服であろう戦闘衣装の必然性もないように感じられます。お化け退治の話であるなら、主人公の妖子の衣装にチャイナ服という組み合わせに違和感があります。魔物を退治する印象と、チャイナ服があまりに合致しないのです。そして、変身して登場する化け物を退治していくストーリー性においても、深みや面白みには欠けてしまうように思います。

もっと練り込まれた脚本で面白みがある内容であれば、コンテンツそのものの評価も変わったのではないでしょうか。そう思うだけに、とても残念に思えるOVA作品です。メッセージ性の皆無は良いにしても、キラリと輝く良い部分の個性が感じられないのが、非常に悲しいことです。

美少女ものの他コンテンツを分析することで、もっと違った作品づくりができたのではないでしょうか。

制作して製品化するば売れるだろう、といった制作スタッフの安易さであり、商売目的という気持ちを感じられるコンテンツに思えてしまい、とても残念です。

 

現実社会における敵!?

90年代のアニメ作品ということで、その世代における爆発的にヒットしたコンテンツがありました。

「美少女戦士セーラームーン」の存在です。世代がほぼ同じにもかかわらず、明暗が分かれたアニメ作品だと思います。そして、高校生の主人公といい、類似している点は多いように思います。不思議な能力で戦う女子高生という括りでは、同じようなアニメ作品です。

「美少女戦士セーラームーン」においては、女の子をターゲットしたアニメ作品だといえます。「魔物ハンター妖子」は、おそらく男性ターゲットを意識したOVA作品だといえます。変身シーンでのお色気要素が強いためにそのように考えます。同じようなコンテンツなのに、ターゲットにしている層が違うことが面白いです。

また、地上波でアニメ放送された「美少女戦士セーラームーン」に対し、OVA制作に留まったのが「魔物ハンター妖子」です。では、「魔物ハンター妖子」は地上波で放送されていれば、「美少女戦士セーラームーン」のようなヒット作品となったでしょうか。

それは、やはり厳しかったように思えて成りません。

もちろん、世間一般の認知は、今より大きいものになったとは考えられます。しかし、主人公のキャラクター性や、作画のクオリティーの低さが目立ちます。また、メッセージ性においても、「美少女戦士セーラームーン」では、友情というものが強調されていました。それと比べ、基本的には妖子が一人で戦う「魔物ハンター妖子」は薄いように感じられます。また、「美少女戦士セーラームーン」は主要人物が沢山で、いっぱいの女性キャラクターによる華やかさは、「魔物ハンター妖子」に敵わないと思います。

間違いなく、「美少女戦士セーラームーン」「魔物ハンター妖子」は同じカテゴリーに位置するアニメ作品であり、競合関係にあったコンテンツです。しかし、世間一般での認知には明らかに差がでました。そのコンセプトは、両者で明らかに異なるもので、その差が明確に表れたのではないでしょうか。

妖子のキャラクターデザイン

 まずは、「魔物ハンター妖子」主人公である妖子という存在を6W2Hに分解して考えていきます。

WHAT(目的)

→平和な世の中の実現

WHY(目標)

→魔物を退治する

WHO(実行者)

→物語の主人公であり、16歳の女子高校生

WHOM(対象者)

→魔物

WHEN(期間)

→後継者に引き継ぐまで

WHERE(場所)

→きっと日本

HOW MUCH(予算)

→明確な予算設定は成されていない

HOW(具体案)

→チャイナ服に変身

→妖術をつかえる

→お色気を強調

ここで注目すべきは、WHEN(期間)の内容、「後継者に引き継ぐまで」です。こういった流れであることから、恋愛要素を打ち出しても良かったように感じられます。妖子においては、魔物ハンターに成りたての存在で、まずはそちらに注視しなければなりません。アニメ本編では右も左も分からない様子で、祖母マドカに教えを乞いながら、本分を全うしています。

そう考えると、アニメ本編における物語の出だしが不味かったように感じられます。妖子は20代の年齢設定で、魔物ハンターに就任したエピソードは、回想シーンとして後出ししても良かったように感じられるのです。

16歳の女子高生だから、恋愛要素は強く打ち出せないし、お色気要素も強く打ち出せないように思えるのです。6W2Hで分解して、改めて考えてみると、相反・矛盾している点を感じることができます。

6W2H分解の仕方も様々で人それぞれです。観る人によって、違う表現や言葉を当てはめることでしょう。改めて、分解してみて、方向性における矛盾点、相反している箇所を探してみると面白いです。

 

主人公・作品タイトルについて 

まず、主人公の名付けにおいても酷いと思います。

きっと、「妖怪・魔物を退治する子」をイメージして、名付けていると思うのですが、世間一般で妖子という名前の女性はほとんど居ないのではないでしょうか。「存在しない」と言い切れるレベルで、現実社会で実在しない名前だと思うのです。

それだけ現実社会の子供に命名する名前としても、魅力的ではない名前であることを裏付けることのできる事実ではないでしょうか。むしろ、妖怪や「怪しさ・妖しさ」を思い浮かべる文字を子供につける親もいないと思うのです。

そうであるなら、やはり「妖怪・魔物を退治する子」という意味で、安直に、妖子という名前を付けたようにしか思えません。それであるなら、「妖怪・魔物退治」とは関連性のない、別観点で考えた名前を命名するべきだったのではないでしょうか。

また、作品タイトルという観点で考えた時、妖子の名付けに「妖怪・魔物を退治する子」という意味があるなら、「魔物ハンター魔物ハンター」と言い換えることができます。言葉や内容が重複している作品タイトルと受け取ることができるのです。作品タイトルを考えてみても、酷いという印象しか持てません。

主人公の名前、そして、作品タイトルに至るまで、安直な名付けだと強く感じられます。

マルチメディア展開するコンテンツの名付けとして、あまりに残念過ぎるのではないでしょうか。

 

OVA作品の存在意義

OVA本編からは、メッセージ性のようなものを感じられません。とりあえずコンテンツをアニメーション化しました、というようにしか感じられないのです。

全体を見通してみても、やはりOVA作品の存在意義がよく分からないです。

チャイナ服であろう戦闘衣装の必然性もないように感じられます。お化け退治の話であるなら、主人公の妖子の衣装にチャイナ服という組み合わせに違和感があります。魔物を退治する印象と、チャイナ服があまりに合致しないのです。そして、変身して登場する化け物を退治していくストーリー性においても、深みや面白みには欠けてしまうように思います。

もっと練り込まれた脚本で面白みがある内容であれば、コンテンツそのものの評価も変わったのではないでしょうか。そう思うだけに、とても残念に思えるOVA作品です。メッセージ性の皆無は良いにしても、キラリと輝く良い部分の個性が感じられないのが、非常に悲しいことです。

制作して製品化すれば売れるだろう、といった制作スタッフの安易さであり、商売目的という気持ちを感じられるコンテンツに思えてしまい、とても残念です。

ただ、漠然と俯瞰して思えることは、OVA作品「魔物ハンター妖子」は、ゲームにおけるオープニング映像のように感じられます。OVA作品として、アニメ本編に魅力はないですが、これはゲーム本編に対してのプロローグなのだと考えると納得できる気持ちはあります。

アニメ本編においてメッセージ性がないことは、こう考えることで、自然なものになります。妖子がチャイナ服である必然性においても、ゲームの中で語られるのかもしれません。語られないまでも、納得のできるような展開があるのかもしれません。

「続きはゲームの中で~」

実は、そんな隠れたメッセージがあるOVA作品なのではないでしょうか。

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