美貌に固執した悲しい女たち - 永遠(とわ)に美しく…の感想

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美貌に固執した悲しい女たち

4.54.5
映像
3.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
3.5
演出
4.5

目次

内心で敵対する女たち

かつては美しかった女優マデリーン(メリル・ストリープ)と、旧友のヘレン(ゴールディー・ホーン)が再会します。落ちぶれたマデリーンのもとに、マデリーンは素敵なエリート外科医の婚約者アーネスト(ブルース・ウィリス)を連れて。このあたりが女の生々しさをいきなり見せつけています。旧友といっても女の内心はドロドロしているので、再会した時に呼び合う名前も、マデリーンは「マッド(気の狂った)」、ヘレンは「ヘル(地獄)」なのが洒落ているなと思います。そのままマデリーンも彼女のファンだったというヘレンの婚約者を奪って、ヘレンが結婚式で悔しそうな顔をしますが、婚約者を奪っておいてヘレンを結婚式に呼んでいるあたり、厳しいですね。そこから7年たち、ヘレンはマデリーンを心の中で呪うことしかできず、ゴミ屋敷で好き放題に太った醜い姿で暮らしています。家賃滞納などで強制退去させられる際ににずっとマデリーンが出ている映画で、彼女が殺されるシーンを笑いながら見届けるという描写がリアルでした。

美しくなったヘレン

ある日、夫婦仲の冷え切った中年のアーネストとマデリーンのもとにヘレンからパーティーの招待状が届きます。「永遠に美しく」という本を出版したとのこと。この本のタイトルを見て笑うマデリーンの意地悪なこと。でも会場でヘレンが痩せて美しくなっている姿を遠目に見て夫に「帰りましょう」という際のおびえた表情は、さすがメリル・ストリープだなと思います。50歳を過ぎているのに若々しく美しくなったヘレンを見て、失意のどん底でカバンの中から以前エステにもらった「秘密のクラブ」の名刺を見つけ、そこに向かい、怪しげな美の薬を飲んで、みるみるうちに若く美しくなります。見ている側からすると、特殊メイクで老けていたのか、特殊メイクで若返ったのか分からないほど見た目に違いが出ます。普段そんなに気にしていなくても、やはり「老い」の見た目に与える打撃の凄惨さを思い知らされました。

ヘレンの企みと秘密

一方その頃、ヘレンはくたびれた中年になったアーネストの下で、マデリーンを始末しようともちかけます。ところがアーネストは、ダイ・ハードなどの時のブルースウィリスとは真逆なので、決心がつかずいつまでもマデリーンを始末できません。ところが夫婦喧嘩の延長でマデリーンを階段から突き落として殺してしまいます。しかし、マデリーンは首が一回転したまま生きています。病院に行っても心音と体温がない。アーネストは美容外科医から葬儀屋に落ちぶれていたので、防腐剤や化粧品を使って「死に化粧」を施しています。そこに、マデリーンが死んだと思っているヘレンが登場し、マデリーンがショットガンでヘレンの腹部に風穴を開けてもヘレンは死なない。穴が開いたことにも気づいていない。そこで2人はお互いが「秘密の薬」を飲み、「死なない体になった」と気づきます。その後、死闘を繰り広げるけど「きりがないからやめようか」となり、アーネストも不死身にして自分たちのメンテナンス要員にしようとするあたり、「マッドとヘル」の本性だなと思います。

永遠に美しく・・・

とはいきません。アーネストは当然、一生そんな「マッドとヘル」に利用されたいわけもないので、薬を飲まずに逃げます。そこから37年たち、場面はアーネストの葬儀です。死因は老衰で、孫や家族に見守られながら幸せな一生でした。その葬儀に出席しているマデリーンとヘレンは、アーネストを失ってからは「生きる死体」の手入れを十分にできないので、肌はボロボロ、動作もぎこちなく、きっちり老化していました。そして最後まで憎まれ口をたたき、本当にかわいげのない女ですね。見た目も中身も汚いまま、見た目にこだわり続けただけの女たち。中盤で秘密のクラブのマダムが「10年たったら美貌を疑われる前に姿を消して」と忠告し、マリリン・モンローや、グレタ・ガルボなども実は会員で、ひっそりまだ生きているようなシーンがありました。美しく去るということのかっこよさとの対比ですね。主役が大女優2人で、アーネスト役もまったくブルース・ウィリスである必要性のない事や、秘密のクラブのマダムがイザベラ・ロッセリーニだったり、俳優で「遊んで」いるような映画でした。なぜか何度も見てしまいます。

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