美しく眠る、そんな映画です。 - 惑星ソラリスの感想

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美しく眠る、そんな映画です。

4.64.6
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
3.0
音楽
2.5
演出
2.5

目次

水だ、また水が流れている。

ソ連という今はない国家の徹底した非商業化路線と、タルコフスキーという卓越した映像の魔術師が出会った結果、こんなにも美しい映像が産まれたのです。とくに、水のタルコフスキーと一部で言われるように、冒頭からどこもかしこも美しく水が流れる姿は、必見です。そこに象徴されるのは、まるで監督のトラウマや社会へ抱く恐怖を刻み込んだような意味の深いもので、見るものを妖しく不安にさせます。東京の首都高が未来の映像としてつかわれていたりとか、宇宙飛行のシーンがすでに概念だけのものだったりとか、ステーションプロメテウスの柱が意味もなく斜めになっていたりとか、SFガジェットや理屈付けそのものにはまったく興味がないひとなのだということが、よく判ります。と、言うより、この惑星どこにあるんでしょうか? 謎は尽きないけれども、きっと答はどこにもないのでしょう。

眠れ、とにかく眠れ。

ファンの間ではとかく「君は、何回寝た?」と言われていたようです。(日本での公開が近かったスターウォーズに関しては「君は、何回見た?」と言われていたのと対になっているとか)とにかく単調な音楽と演出が続きます。これが美しい映像とともに流れるものですから、ええ、本当に不眠症治療にはいいですね。

彼は、妻を憎んでいたのだろうか? それとも――。

話は(今となってはめったに見かけないほど)オーソドックスです。謎の惑星ソラリスの調査に向かった主人公クリスの前に、死んだ妻ハリーが現れます。実は、それそのものが生物であるソラリスの海の仕業で、クリスの深層心理から再生したのです。クリスは、得体の知れない恐怖につき動かされるままにハリーをロケットに乗せて衛星軌道へすててしまうのですが、それでもまたハリーが現れるのです。観念したハリーは、クリスと向き合いつつ、自分の過去や置き去りにした意識とも対面することになるのですが――。あと、ハリーは美しい。最初のハリー、どうなったんだ――。

そして、水だ。

最後に、クリスはなにを選び、どこへいったのか。ああ、そこを選びましたか。彼がかわいく見えますよ、まったく。あと、この監督さんは「少年時代に見た遠い風景」を描きます。水、そして故郷。なにかあるんでしょうか? 最後にこの監督さんは亡命してしまうことを考え合わせると、意味が深いです。

だから、これは全くの余談なのだ。

本当は、未来都市のシーンは、大阪万博で撮影したかったのだとか。ところが例によって当局の許可が遅れ、日本に行ったときにはもう終わっていたとか。だから、首都高を撮影して帰って行ったらしいのですが、これが案外本人の気に入ったらしく、「建築では、疑いもなく日本は最先端だ」と日記に記したとか。うむ、それはよかった。

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