サスペンスの味が凝縮された作品
ブルーノの素晴らしく怖い演技が恐怖感あおる。
著名なテニスプレイヤーのガイは上院議員の娘とつきあっているが、離婚を控えた妻を持っている。一方、ブルーノは厳格な父親に育てられ、狂気的に精神を病んでいる。そのブルーノが列車で乗り合わせたガイに接近。ガイの妻とブルーノの父の交換殺人を持ちかける。。。そう、交換殺人の元祖的物語です。執拗に父殺しを催促するブルーノの演技がとても緊迫感があって。
怖い。すばらしい演技。
袋小路に追い詰められていくガイ
そして、ガイが承諾もしていないのに、勝手にガイの妻を殺して、早く自分の父を殺すよう催促を繰り返すブルーノ。怖い怖い。困り果てたガイは、ブルーノの父親を殺すと見せかけて、彼に相談に行こうとするが、そこで待ち伏せていたのは本人だったという、びっくり怖い展開。
ブルーノは、ガイを追い詰めるための最後の手段で、殺人の証拠品として罪をガイに被せることのできるガイのライターを殺人現場に置いてこようと策略。それを読んだガイもこれを追うというサスペンスが始まる。
小道具を効かせた演出と伏線の連続
ライター、眼鏡(ガイの殺された妻がかけており、ガイの新恋人である上院議員の娘の妹も同じような眼鏡かけている)が効果的に使われている。また、ブルーノの母親が趣味で書いている絵(母親も少し頭がおかしいのでは?と思わせる)、ガイがブルーノの家に忍び込むんだときの暗がりで唸る犬も効果的にストーリーを盛り上げています。しかしながら、もっともっと重要なシーンがある。急転回するメリーゴーランドでのバトル、前妻殺害場面前のボート遊具でのトンネル内での影と悲鳴、前妻が落としたグラスに映る殺人シーン、ブルーノがライターを下水口から拾い上げるシーン、ガイの新恋人の妹の眼鏡を見て、殺人シーンを思い出し我を忘れて狂気に走るブルーノなど、盛りだくさん。ブルーノと母親の最初の会話のシーンで、すでにブルーノがいらだちをその手に(その手でガイの前妻を絞め殺すわけですが)込めており、それが殺人の予兆にもなっている。あげたらきりがない伏線。最後に、罪が晴れ、現場から新恋人とガイが戻るシーンで、二人が同乗客から話しかけられ、無視する(もう二度と見知らぬ乗客と喋るのは御免)というオチもついている。
腑に落ちない点もあるがヒッチコックの傑作のひとつ
北北西に進路を取れ、に並ぶ傑作と思います。なぜ、ブルーノがライターを現場に置きに行くのがガイにわかったのか、とか、なぜそれが夜でなければならないのか、そもそもそれほどライターが証拠として決定的になるだろうか(何日も経っているのに)、そもそもガイと新恋人の上院議員の娘との関係は不倫ではないのか(そんなのいいの?)、といった疑問点はありますが、そんなこと取るに足らないくらいサスペンスに満ちた作品でした。繰り返しますが、ブルーノの演技(存在感)や前妻が最高だった。新恋人の妹の強烈なイモ(ブサイク)ぶりもよかった。
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