古傷疼く架空ギャング世界
コスプレガンマンパラダイス
男がガンマンなら女はガンウーマン?と調べてみると、「女ガンマン」と表現されているものが多い。この漫画は様々なガンマンその他が出て来てそのコスプレで目を楽しませてくれるが、カトラス二挺をショルダーホルスターに差し入れ、ホットパンツで生足を出し肩から刺青を見せているという一張羅のレヴィは、「あたしスタイル」を誇示して歩く戦闘準備整った姿である。それがメイドメイドしたロベルタで吹っ切れたのか、ルーマニアの双子、着流しのヤクザ、かっこつけのロットンと、とにかくビジュアル的に猛烈にキマっているキャラたちが次から次へ登場して、レヴィ日本・冬ヴァージョンもあいまって、この漫画はとにかく衣装に凝っている。
キレてない言葉などいらない
レヴィを始めキャラたちの言い回しは比喩やひねりが利いていて、キレてない言葉は排除されるがごとくである。画聖の絵画のどの一角を切り取っても繊細無上であるのと同様に、作中の誰が発する言葉も文飾に凝ってあって楽しいのである。中二病臭くても、青春の味が支配している架空世界なので、野暮な現実感はすっ飛ばしていい感じになれるのである。
苛酷さがレベル4
ロアナプラはギャングが危ういバランスで共存している街で、犯罪都市の空気はごろつきやあばずれを自由にする。そこに寄り集う仕事人たちは訳ありの過去を持つ者が多く、レヴィは心に闇を抱えて銃乱射の血みどろさえ現出してしまう。戦場を経験している者も多く、とにかく箔がありやるときは徹底的にやる怖さを持っている。バラライカの顔の火傷がその象徴で、レヴィたちより上位に位置するこのロシアン・マフィアの大物は、過酷で、なのにセンチな過去を持ち、子供というものに澄んでない優しい眼差しを向けさえする。生き馬の目を抜くロアナプラに、古傷の疼くギャングが集っている、舞台はそういう、実は「心」をテーマにして設置されている。そこを支配しているのは「社会」とはちょっとズレた、世捨て人風味の終わらない青春のような、何かである。
知識量が両手いっぱいこぼれ落ちる
舞台はロアナプラにとどまらず、闇世界も一国二国のギャングの話にとどまらない。常に挑戦的で新しいことをやろうとする気概に満ちている。専門用語が飛び交い、「知ってる」感が胸をときめかせる。実際は該博な知識に裏付けられながら、丁寧な調査量に基いて作品は作られているはずで、これが自分の詳しい分野について語られたりしたなら、きっと胸が弾むことと思う。言語も英語や中国語、ちょこちょこロシア語やスペイン語などが顔を出し、日本編などは、本来英語の台詞は英語で併記されていて、その英語力の高さ(何となく窺い知れる)は、努力とサポート体制の賜物である。
まだまだ伏線が尽きない
ワンピースほどではないが、ちょこちょこ伏線を張って興味を持続させてくれる漫画だ。ハッタリかもしれないが、キャラたちの秘された過去や殺し屋たちの暗然たる存在など、あちこち話が広がる余地があり、もっともっとブラックラグーンワールドを楽しみたい気持ちにさせてくれる。胸にわだかまり一物抱えて生きる僕としては、この苛酷で古傷の多い世界に、まだまだ飲めり込みたい感じである。
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