唯一無二のクライムアクション - BLACK LAGOONの感想

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BLACK LAGOON

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画力
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キャラクター
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設定
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演出
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感想数
2
読んだ人
6

唯一無二のクライムアクション

4.04.0
画力
3.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

コアな漫画ファンなら知らない人はいない『BLACK LAGOON』

漫画・アニメ好きを自称する人で、『BLACK LAGOON』を知らない人は少ないだろう。

ジョークや例えを多用するセリフ回しや、派手なアクションシーン。傍点の振られたセリフ。マフィア同士の抗争を描いた作品で、漫画というより、映画のような世界観で人気を博している。

現在既刊は10巻。休載を何度か挟みながら、すでに累計発行部数は500万部を突破している。パチンコ・スロットでもすでに二回ずつタイアップされており、パチンコ・スロットを遊戯して漫画を読んだという人も多いだろう(ちなみに、スロット一作目が特にスロファンの間で人気が高い)。

テーマや世界観からいって、見る人を選ぶ作品であることは間違いない。しかしながら、『BLACK LAGOON』は漫画好きの幅広い年齢層から支持されている。それはなぜか。

良作だが、読む人を選ぶ作品

先にも述べたとおり、アクションシーン、画力、セリフ回し、キャラクターなど、間違いなく個性的で面白い『BLACK LAGOON』だが、万人受けする作品とは言い難い。

というのも、ある程度世界情勢や、マフィアなどの闇組織、軍事の知識がないと、物語に入りこむことが出来ないからだ。

用語は全く作中で解説がされず、自分で調べないとチンプンカンプンになってしまう。そもそも舞台である東南アジア・ロアナプラ(タイ)の風景に、ほとんどの人は馴染みがない。ロシアンマフィアやネオナチ、中国マフィアはまだなんとなくついていけても、カルテルなど聞いたこともない人が多いはずだ。

ストーリー展開にも理解を及ばせるのが難しく、「このエピソードはどんな話だった?」と説明を求められても答えに詰まってしまうだろう。

たとえば一番最初のエピソードは、主人公であるロックが会社に見捨てられたり、傭兵部隊が絡んできたりと、セリフの説明をなんとなく読んでいるだけでは間違いなくついていけなくなる。

ラグーン商会、ホテルモスクワ、旭日重工のそれぞれの立ち位置と目的を把握しておかないと、初見の人間は混乱することだろう(最初のエピソードでこれだけの複雑な話を持ち込んで成功したのもすごいことだが、ファーストエピソードとしてはもう少しわかりやすい方が良かったのでは、と筆者は思う)。

また、主人公・レヴィをはじめとして、中心人物が裏社会の人間ばかりで思考も言動も一般論とはほど遠い。暴力が肯定され、犯罪行為も日常茶飯事。必要に迫られれば殺人も厭わない。しかし、自分のポリシーや義理は頑なに守っていく。「悪の華」という言葉が似合う連中ばかりだ。こういったところも、好きこのみがわかれるのではないだろうか。

つまり『BLACK LAGOON』は、漫画において必要な共感性は全く乏しく、映画を観る気持ちで読むのが最適だと思われる。これはまさしく青年誌での掲載にふさわしい漫画であり、中高生が読んで理解できる&面白いと思う漫画ではない、と筆者は考えている。

本考察の意図とは反するが、アニメで『BLACK LAGOON』を観たほうが、もっとも作品を魅力的に味わえると思う。漫画ではやや手狭にみえたアクションシーンや、ベテラン声優陣によるセリフ回しが、アニメで特に映えて作品を魅力的なものに変えているのだ。

漫画を手に取り、ちょっとわかりづらいと思った人は、アニメを視聴すれば印象が変わるかもしれない。

中高生向きではないが、中高生は好きになるであろう『BLACK LAGOON』

漫画を好む世代である中高生は、『BLACK LAGOON』の難解なストーリー構成や世界観を完璧に理解するのは難しいと先に述べたが、それでもティーンにとってこの作品は魅力的に映るだろう。

ロアナプラの街も、裏社会も、裏社会を行き来する運び屋という設定も、いわゆる”厨二ウケ”する舞台設定ばかりというのがその理由だ。

そしてもう一つの理由は、『BLACK LAGOON』のキャラクターデザインにある。

タンクトップにホットパンツのガンマン・主人公のレヴィもさることながら、『BLACK LAGOON』は敵役がとても魅力的だ。

特に女性のデザインにおいては、世界観に合わない姿をさせておきながら、不思議とクライムアクションにマッチするという化学反応を起こしている。

メイド服のロベルタ、ロリータファッションのグレーテル、チャイナ服のシェンホアなど、様々なコスチュームを纏った女性たちが銃やナイフを手に大暴れする姿は格闘ゲームさながらだ。

そのなかでも屈指の魅力を持つのが、ホテルモスクワの幹部バラライカである。女性でありながらフライフェイス(やけど顔)の彼女は、軍服を纏い、普段はたおやかな言葉遣いでありながら、時に歴戦の部下たちを取り仕切る威圧感を放つ。「地球でもっともおっかない女の一人」とベニーが言うように、組織幹部としての判断力や統率力も、冷酷無慈悲な一面もさることながら、ロックや部下に見せる理解の良さも、バラライカの大きな魅力の一つになっている。

ティーン向けではない題材と、ティーンウケするキャラクターデザイン。難解な設定と、調べてでも読みたくなる作品。

つまるところそれが、『BLACK LAGOON』を名作へと押し上げた要素となっているのである。

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5.05.0
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  • 1321文字
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