物語本筋の続編ではない模様!?
サブタイトルに騙されますね~
「Another love song」という言葉に物語本筋の続編を匂わせるものがありますが、思いっきり熱い手の平返しを喰らいました。位置付けとしては、テレビ放送された物語本編のサイドストーリーと呼ぶべきものだと思います。
あくまで、アニメ放送したものの後に制作されたOVA作品として「Another」という言葉を用いたのだと考えられます。確かに、物語本筋では続きようがない終わり方をしていますので、その後の話を描きようがないという事実も否めないのでしょう。少しでも期待してしまった自分自身が恥ずかしくなってしまいました。
本当の意味で続編を描くのであれば、チサが死ななかった展開から始めなければなりません。
しかし、チサが死んでしまうからこそ、物語の本筋では強烈なメッセージ性を放ち、感動的な物語として成立すると思うのです。実は、死んでいませんでした、死なずに済みました、では観る側を微妙な気分にさせること間違いないでしょう。
しかし、物語本筋を別視点で観ると、印象も随分と変わります。本筋では描かれていなかったチサの苦労を浮き彫りにするものであり、チサの変化を分かりやすくするものではないでしょうか。
サイドストーリーという位置付けだけあって、物語本筋の補足説明という役割を担っているものだと思います。
主人公の存在
明らかにいえることは、OVA作品「最終兵器彼女 Another love song」の主役は、チサではありません。別人物を主人公に据えることで、物語本筋を客観視させることが狙いなのだと考えられます。
OVA作品「最終兵器彼女 Another love song」の主役は、ミズキというOVA作品で初登場したキャラクターに据えられています。また、ミズキは、チサの思っていることが筒抜けのようで、チサの気持ちを分かりやすく解説しているキャラクターです。チサという存在に比重を置いているのにもかかわらず、主人公を別人物に据えるという発想は、とても思い切った決断のように感じられます。
しかし、同じ物語を追っているのに、OVA作品「最終兵器彼女 Another love song」の本編に新鮮さを感じさせるものがありました。思い切った決断によってもたらされた恩恵も大きいものだったように思います。
そして、チサと同様に、チサを守る為に、自ら死んでしまうのを分かっていながら戦闘に向かうのも胸を打つものがありました。物語冒頭では、チサのことを認めていなかったミズキが、チサのことを認め、チサの為に命を散らすのが切ない場面でした。観る側に対して、軍の上層部は、不快感を与える存在となっていました。しかし、その不快感をチサが晴らす構成として、サイドストーリーの中で物語として完結しています。
ミズキの変化は、軍の規律を重視して行動する建前と、人間である自分自身の本音とのぶつかり合いなのだと思います。死に直面した時、自分自身の本音が強くなってくるのも、当然のことなのではないでしょうか。ミズキの変化が、OVA作品「最終兵器彼女 Another love song」の強いメッセージ性であり、アニメ作品である物語本筋では弱かった部分なのだと思います。
しかし、ミズキを主人公に据えたことで、チサの存在は強調されていたものの、シュウジの存在が霞んでしまいました。思い切った決断により、恩恵は大きかったです。しかし、このようなかたちで副作用があったことも否めないことです。
共通したメッセージ性
アニメ作品における物語本編と、OVA作品「最終兵器彼女 Another love song」に共通する部分は「戦争というものの愚かさ」「人間の愚かさ」というところだと思います。
そして、それを強調しているのが、軍の上層部の存在だといえます。降伏するべきなのは明白なのに、それをせず、結果として犠牲が増えている事実がそれを表しているのではないでしょうか。しかし、現実社会においても、同じようなことが起きそうな気はします。戦争となれば、人権は無視されてしまいます。国や権力の都合が優先されてしまう環境なのだと思います。そういったことをリアルに表現しているのが、アニメ作品とOVA作品に共通したメッセージ性だと感じます。そして、日本が過去に犯してきた戦争という過ちを、そのままのかたちで見させられているようにも思います。
人体を改造して、兵器にしてしまうという許されない行為が物語の前提にあります。
しかし、これも神風特攻隊のような自分たちの命を犠牲にした玉砕を比喩したものなのだと思います。アニメ作品だと馬鹿にできるものではなく、過去にはもっとアナログなやり方で、非人道的なことが行われてきた事実があります。
チサやシュウジ、ミズキといった犠牲者に焦点が当りがちですが、過去にはもっと多くの犠牲があった歴史があります。そして、その犠牲者の数だけ、多くの方々の人生という物語があったはずではないでしょうか。
そういったことを、改めて感じさせるアニメ作品だと思います。
できれば、終戦記念日の時期に合わせて、テレビ放送されても良いように思えます。
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