前作とは全然違う印象ですね~
セリフのないアニメ本編
前作・前身といえる「ねこぢる劇場」と明らかに違うところとして、声優の吹き込みが一切ないアニメーションに仕上がっています。音楽はあるものの、画面のみで物語が展開していきますので、どうしても目が離せなくなります。
サブタイトルには、「セリフのないアニメ本編」と記載していますが、声優の吹き込みがないという方が正しい表現でしょう。アニメ本編でセリフはありますが、マンガのように吹き出しに文字で表現をされています。これなら、一切のセリフが存在しないようにアニメ制作できなかったのでしょうか。中途半端な感じが否めないです。また、吹き出しでセリフ表現するのであれば、声優の吹き込みをするべきだったように思います。
どうしてこのような形になったのか、本当のところは分からないですが、製作費を抑える為というのを明らかに感じさせる部分です。本当の理由は違うのかもしれませんが、観る側にそのように感じさせるのは悪い印象以外のものはないように思います。
良い捉え方をすれば、前身「ねこぢる劇場」において、ニャッ太は幼いこともあり、言葉を話すことができないキャラクターでした。そして、ニャッ太を中心に物語が展開していきますので、意図的に吹き込みをしなかったようにも受け取れます。アニメ本編は明らかにニャッ太の目線から物語が描かれているようには感じられます。
しかし、マンガのような吹き出しセリフが存在していることで、声のない世界観が台無しになっているように思えてしまうのです。製作費を抑える目的が強かったと、観る側に感じさせるのは損ではないでしょうか。
その部分においては、残念に感じさせてしまって、もったいない気がします。
主役の存在
次に前作・前身「ねこぢる劇場」と違うところとして、主役の存在が挙げられます。前身である「ねこぢる劇場」の主役はニャーコでしたが、この作品「ねこぢる草」の主役はニャッ太です。ニャーコ中心のニャーコ目線で描かれていた印象が、ニャッ太を主人公に据えることでガラッと変わったように感じさせます。
また、前身「ねこぢる劇場」のようなショートアニメ構成になっていないことも、物語が確立されており、印象が変わったところだと思います。ニャッ太がお姉ちゃんを助ける為に幼いながらも健気に冒険していく、という図式は前作には皆無だったイメージです。ニャッ太の姉想いの部分が物語の根底にあり、観る側の心を打つものがあります。元々、ニャッ太は可愛らしいキャラクターですが、その可愛らしさを強調させる内容だったように感じられます。アニメ本編を観ることで、ニャッ太のことを更に好きになってしまいそうな作品づくりだったのではないでしょうか。
変わらないグロテスク描写
前身「ねこぢる劇場」から継承されているのは、友達を切り刻んで食べてしまうようなグロテクス描写でした。そういった描写を臆することなく描くのが「ねこぢるシリーズ」の真骨頂といえる部分なのでしょう。確かに、他アニメ作品とは一線を画すものだと思いますので、強烈な個性だと言い切れるものなのだと思います。
ただ、描写は同じでも、明らかな違いも見受けられました。それは必ずしもキャラクターを殺さないことだと思います。船を船頭していた豚くんは食べられてしまいますが、身体を切り刻まれても死んではいません。豚くんは生きており、自分の肉で作った豚カツを食べているのは、シュールな場面ですが微笑ましさを感じさせます。
また、主人公が前作と違う部分も与える印象を変えているのだと思います。お姉ちゃんのニャーコは同じことをすれば、良し悪しの分別はつきそうな年頃なので、悪い印象を抱いてしまいます。しかし、ニャッ太が同じことをしても、良し悪しの分別がつかないので、仕方ないと思えてしまうのです。
幼い子供のワガママで通ってしまうので、与える印象が変わるのは大きいのではないでしょうか。
また、お姉ちゃんを助ける為に奮闘しているニャッ太の姿が全面に押し出されていることもあって、グロテスクな描写も悪い印象には映らないように思います。前身「ねこぢる劇場」では、グロテスク描写に至るまでの過程が薄いので、嫌悪感が強いものだったのではないでしょうか。
グロテスク描写は同じでも、背景や物語展開で印象が全然違うものになっているのだと思います。
強いファンタジー色
前身「ねこぢる劇場」は、人間の現実世界を背景に描かれていたように思えます。しかし、この「ねこぢる草」においては、ファンタジー色が濃いのも違う点ではないでしょうか。
お姉ちゃんニャーコの魂の半分が死神に奪われてしまい、ニャッ太が取り戻そうとすることから物語が始まります。すでに、この時点でファンタジー色は色濃いもので、前身「ねこぢる劇場」とは違うことは明らかです。
ここでも主人公の違いが、リアルなのか、ファンタジーなのかを大きく分けているのではないでしょうか。
ニャーコを主人公に据えることで、ニャーコ視点で描かれているのが、「ねこぢる劇場」なのだと思います。よって、ニャーコ視点では、全体的に現実世界に寄せて描かれているのだと考えられます。
前述の通り、ニャッ太の視点で描かれているのが、この「ねこぢる草」です。よって、幼い男の子目線を印象づけるようにファンタジー色を強く打ち出した世界観になっているのではないでしょうか。
もしかしたら女性目線と男性目線の違いが、世界観の違いに表しているのがもしれませんね(笑
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