元ネタがゲームであることに納得させられる
起承転結に乏しい
物語展開の感想を率直に述べると、面白みに欠けると思います。第4巻で構成されたOVA作品です。よって、それぞれ1巻ずつ起承転結をしていくのが、良いペース配分ではないでしょうか。しかし、1巻2巻はダラダラと主人公たちが日常生活を送っているのみ、という印象を持ちます。制作する観点で述べれば、「起」の段階で、世界観を観る側に伝わるようにして、惹きつけるものがなくてはならないと思うのです。
序盤から、本筋の展開がなかなか進行せず、主人公の抱えている謎を引っ張るかたちになっているので間延びしている印象を持ってしまいます。また、惹きつけられるような魅力もなく、序盤は観ていて苦痛に感じてしまいます。好き嫌いは分かれると思いますが、ヒロインの玉城 麻衣子(たまき まいこ)の存在が幼すぎて魅力的に感じられませんでした。幼い印象以外の特徴も強くありませんので、キャラクター性が弱いことも挙げられるのではないでしょうか。
また、世界観を分かりやすく解説されていないので、どんな展開になっているのか、理解しづらい印象を持ちました。元ネタであるゲームをプレイしていないと、世界観がなかなか飲み込めないのではないか、と感じます。
そして、「転」の段階でも、特に驚かされる展開はありません。強いて述べれば、主人公の選択肢が和辻 綾(わつじ あや)だったことでしょうか。楽しい世界を選ぶのではなく、孤立した世界で生きていくことを選んだのが意外だったように思います。
映画マトリックスのような疑似世界
時代背景や世界設定は違っても、マトリックスのように疑似世界と現実世界を行き来させる展開だと気付いたのが最終巻になってからです。それまででも匂わせはしていましたが、表現が分かりづらいので、首を傾げながら観ていました。
冒頭部分をダラダラさせるのであれば、そこの解説なり、世界設定を伝えることに時間を割いて欲しかったように思います。また、ドラマチック性に欠け、心や感情に訴えてくるものがありません。
ゲームの世界観を単にそのままアニメ化しました、という印象を強く感じました。そのことから、物語におけるメッセージ性を込められた作品でもないように思います。きっと、元ネタであるゲームをプレイした方なら、楽しめる内容だったのでしょうか。それにしても、感情に訴えるものが薄い為、このコンテンツが好きなファンしか楽しめる内容ではないように感じられます。
むしろ、アニメという部分を意識するのであれば、疑似世界の行き来をしっかり描いた方が楽しい内容だったように思います。その部分の説明が、最終巻でようやく明かされる形になっていますので、全体的には謎解きの要素を打ち出すものになっているのではないでしょうか。
ヒロインの存在感
綾の存在が、アニメ本編では最も打ち出したもののように受け取れます。
他の登場人物に比べ、明らかに設定が充実している事実が、雄弁にそれを物語っているのではないでしょうか。黒髪で大人しい印象の優等生キャラです。そこは普通ですが、目の色が金色なので、外見の普通さから際立つ印象をもちます。
無人の駅やコンビニで、しっかりお金を払って買い物していることで真面目で几帳面であることを印象付けられています。「私、泥棒じゃないから」という言葉に、綾のキャラクターが集約されているように感じられます。さらに、誰もいない学校に毎日通い、自習している様子は明らかに違和感をもたせるものです。
そして、主人公の傍にいて、戦闘能力をもっている女性キャラクターは彼女だけです。他の登場人物は銃を所持しているのに、綾は弓を引いて戦います。明らかに、他の登場人物とは一線を画すものがあるのです。
綾は癒し系にも分類されないでしょうし、ツンデレ系でもありません。熱血タイプでもないですし、一般的な分類にカテゴライズされないキャラクターだと思われます。綾という存在は、他のアニメ作品において、なかなか類似しているキャラクターを思い浮かべることができないのではないでしょうか。
綾は魅力的なキャラクターで、光っている存在であることは間違いありません。
コンテンツの魅力
前述のように、物語自体の起承転結には乏しく、そこに面白みは大きく感じられません。そして、世界観も分かりづらいことも明白だと思われます。
おそらくですが、制作スタッフもなんとなくは自覚していることのように思います。しかし、それでもコンテンツの魅力として打ち出されているのは何なのでしょうか。それは、ヒロインである綾の存在なのではないでしょうか。主人公と過ごす時間が、とても印象的に描かれていることから、間違いないことだと思います。
綾の魅力が、「インタールード」というコンテンツの魅力となっているのだと思います。
そして、そのことからいえるのは、OVA作品ではあるものの元ネタがゲームであることを妙に納得させられるものがある、ということです。ゲームという媒体では、キャラクター設定を重んじるところがあります。特に、アドベンチャーゲームにおいて、キャラクターが魅力的じゃないとゲームを進めていく意欲につながりません。
だからこそ、綾というキャラクターが魅力的なのでしょうし、それを全面に出されたOVA作品なのだと思います。そして、本当にそうなのであれば、綾を登場させるが、かなり遅過ぎるのではないでしょうか。
アニメ本編の作り方や進行配分など、不満に感じることの多いOVA作品だと思います。
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