元ネタ知らなくても楽しめる映像 - あゆまゆ劇場の感想

冒頭部分から

「あゆまゆ劇場」というアニメ作品が制作開始される部分から、物語が始まっていきます。制作開始という部分から、アニメが始まるのは斬新なアイデアだと思いました。

本編である「君の望む永遠」というアニメ作品では、脇役に過ぎなかった大空寺あゆと玉野まゆの二人が主人公となり、物語が展開していくショートギャグアニメです。この主人公の二人が、本編では脇役であったのだろう、と推測してしまえば、それだけで「君の望む永遠」を観ていなくても、「あゆまゆ劇場」を楽しむことができます。そういった面では、アニメ自体の作り込み、脚本が優秀であることが伺えます。もちろん、「君の望む永遠」を観ていれば、もっと「あゆまゆ劇場」の魅力を楽しめたでしょう。

主人公、天王寺あゆと玉野まゆは、本編で自分たちにスポットが当たらないことを妬ましく思っていたようです。そして、それは自分たちにおいても、スポットを浴びたいという願望を募らせる結果になったのでしょう。周囲の登場人物たちも、天王寺あゆと玉野まゆのことを軽んじて見ている節があり、「脇役は脇役らしく大人しくしていなさい」という雰囲気を丸出しにしています。

そこの前提で、「あゆまゆ劇場」の制作決定が発表され、天王寺あゆと玉野まゆの二人の態度が大きくなります。これは、「主人公＝偉い」ということの元に成り立つ構図ですが、他の登場人物たちも素直に事実を受け入れて従っていたのが面白い部分です。

 

アニメ作品そのものの性質

インターネットの有名百科事典、ウィキペディアによると本編の予告コーナーとしての性質もあったようですが、そのような要素は内容に一切含まれておらず、感じられないのも、ギャグ要素として考えて良いのでしょうか。

ショートアニメという特性上、時間が短くまとめられているのも特徴です。そのことから、テンポは速くて、ギャグアニメという内容にも合致しているように思います。「あゆまゆ劇場」というアニメの内容で、これ以上の時間を引っ張るのも長いと感じさせるものになったのではないでしょうか。テンポの速さ、時間の長さ、そして、内容や量を考えると適切なバランスであったように思われます。

そして、その回その回、時間の長さが違っており、時間の長さが統一されていないことも特徴として挙げられると思います。また、WEBアニメという媒体の特性上、テレビアニメと違い、時間という枠に縛られない点は、アニメ作品全体の評価を上げることに寄与していると言えます。

テレビアニメでは時間の長さが決まっている為、引き伸ばしたり、時間の都合でカットしなければならない、編集という行程が必須です。それによって、必要な描写を消してしまう、間延びさせる、不必要な場面を入れる、ということが行われることでしょう。その行程は、アニメ作品の魅力を削ってしまう作業であることは否めないことだと思います。

「あゆまゆ劇場」では、基本的に５分くらいの映像ですが、きっちり秒数まで揃えて制作されてはいません。そのことで、必要な間、必要な描写を消すことないように仕上げられていると思います。また、不要な場面を差し込んでいるようにも感じられません。

その点においては、制作という側面から捉えても、とても好感をもてるポイントです。

 

天王寺あゆ

主人公の一人であり、天王寺あゆこそ、メインの主人公だと考えられます。性格としては、自己主張が強いように感じられます。

そのことから、物語冒頭の部分の場面に必然性があります。こういう性格だからこそ、こういう行動に出るのだと、こういう発言をするのだと、自然の成り行きであるように感じられます。

そして、他者を見下してしまう、見下すことが好きであることも伺えます。それは、他の登場人物の呼称にも表れています。「クソ虫」「ゴミ虫」という表現は、その代表例になのではないでしょうか。

さらに、負けん気が強い性格であることも伺えます。勝負事では燃える性分なのか、それとも、前述の他者を見下すことに起因するのでしょうか。涼宮 茜（すずみや あかね）との水泳対決を描いた場面が、その象徴のように思います。県大会など、公式水泳競技において、トップクラスの成績の登場人物に勝てると思っていることが思い込みが激しいように感じます。

ただ、もう一人の主人公である玉野あゆに向けて、見下した態度をみせたり、負けん気を表面に出す場面は見受けられません。天王寺あゆにとって、玉野まゆという人物は特別な存在であることが伺えることではないでしょうか。

 

玉野まゆ

どうしても、自己主張が強い天王寺あゆに比べ、大人しい印象なので、サブの主人公という位置付けが強くなっています。「あゆまゆ劇場」という作品タイトルにも表れているように、で、「あゆ」が先、「まゆ」が後、という構成で表現されています。

しかし、主人公とだけあって、玉野まゆのアニメ作品の中では、存在感も大きいように思います。

天王寺あゆの弱い部分も強い部分も受け入れ、その上で、天王寺あゆのことが好きなのであろう、ということが伺えます。それは、天王寺あゆの味方であることが徹底されていることです。長い時間を一緒にいれば、喧嘩する場面もあって良さそうです。むしろ、客観的な見方をしてしまえば、無い方が不自然のように思います。しかし、すれ違う場面はあっても、対立構造が一切描かれていません。そのことから、玉野まゆは、天王寺あゆの悪い部分も良い部分も受け入れ、好きなのであろうと伺えます。

また、アニメの中では、天王寺あゆがボケるのに対して、玉野あゆがツッコミを入れる構図となっています。そのことから、お互いの役割分担も明確にされており、お互いに理解し合っていることも伺えます。

この二人は相互に依存し合っており、それで成り立っているコンビだと捉えられます。その構図が、作品そのものをグッと面白くしているのだと思います。