主人公はマスコットキャラクター
入り口が分かりづらい~
率直な感想としては、脚本や描かれる場面がおかしいと感じました。冒頭では、宇宙船の中で、キーネがパパチャアリーノから逃げる場面から始まります。次の場面では、主人公のフォトンがアウンを追いかけます。主人公、フォトンがアウンを追いかける途中、キーネと出会います。
スペースファンタジー的な物語の始まりから、急に砂漠の田舎町に場面が変化することによって、世界観や背景が分からないまま物語が進行していきます。自分自身で考えることをしないと、物語が理解できません。正直なところ、不親切で分かりづらいと感じました。また、フォトンとキーネが出会うまで必要以上に長くて、なかなか頭の中で話の展開がつながりませんでした。
宇宙側と惑星側での文明レベルに差が大きい部分も、物語が飲み込めない原因だったように思います。独特の世界観で、変わった背景での物語展開でしたので、その部分の描写は、もう少し分かりやすくする工夫が必要だったように思います。
また、パパチャアリーノがキーネを追う理由を明らかにしていなかったことで、物語の必然性という部分に違和感がありました。物語の謎部分を仕掛けておくことで、中盤や終盤に明らかにしていく手法だったと考えられますが、逆に必然性には欠いた内容になっているように思えてなりません。
色々、詰め込み過ぎてしまった印象は拭えません。
主人公フォトンの存在感
他の登場人物の個性が強烈で、主人公のフォトンが埋もれてしまっている感じがします。静かな主人公である点も、このアニメ作品の特徴といえます。周囲の状況に振り回されている気がして、フォトンのことを可哀そうに思えてきます。オンリーワンの能力を持っているフォトンの存在が、物語の中で重要なのは間違いないですが、存在感はないというのが斬新な設定だと感じました。
コロちゃんという小動物的な存在がありますが、フォトンはコロちゃん以上にマスコット的な役割が大きいように感じたのも印象的です。目をウルウルとさせ、おちょぼ口のフォトンは、可愛いイメージで描写されており、コロちゃんの存在を喰っているように思います。
フォトンは主人公であるのと同時に、マスコットキャラクターなのだと考えると腑に落ちます。インターネットのフリー百科事典で「マスコット」という言葉を検索すると、「人々に幸運をもたらすと考えられている人・動物・もの」のこと、身辺に置いて大切にする人形や、何らか団体(グループ)のシンボルとする動物などである、と記載されています。後者の部分、団体のシンボルという部分は当てはまりませんが、前者の部分、「人々に幸運をもたらすと考えられている人・動物・もの」という表記に、フォトンの印象が合致するように思います。
ギャグ要素
敵役であるパパチャアリーノが、主なお笑い担当なのだと思います。パパチャアリーノはボケも担うし、ツッコミもしていますので守備範囲が広いことが伺えます。これはタイムボカンシリーズに通じる印象があり、具体例を挙げれば「ヤッターマン」ドロンボー一味など、イメージしやすいです。
「ヤッターマン」ドロンボー一味は三人で構成されていますが、パパチャアリーノは部下の存在はあっても、ほぼ一人でお笑い担当を請け負っています。それだけ、パパチャアリーノの負担は大きいように思います。
また、ドロンボー一味とパパチャアリーノの違いは人数だけではなく、憎めない敵役という部分にもあるのではないでしょうか。ドロンボー一味は憎めない敵役の印象が強いですが、パパチャアリーノは憎めないようでいて、憎い敵役の印象に辿り着きます。ラシャラ姫の純情な想いを裏切っている点、そして、自己中心的な性格は、憎めない・憎める敵役の間の境界線を越えてしまっているように思います。
ただ、テレビ電話のようなもので、ラシャラ姫とパパチャアリーノが話し合う場面は秀逸な笑いだったと思います。下半身は裸で、上半身のみ正装でキチッとして話している姿は、腹を抱えて笑ってしまいました。
出口も分かりづらい~
物語の構成として「起承転結」で表現するなら、第1話が「起」に相当するように思います。そして、第2話から第5話までが「承」、最終話である第6話が「転」「結」というように感じます。観る人次第で受け止め方は変わるのでしょうが、私はそんな印象を持ちました。
全体を見通した時に、ペース配分が悪いという印象がとても強いです。仕掛けた謎を明らかにしていくスピードが遅すぎて、また、伸ばし過ぎているように思います。そのシワ寄せは、全て最終話にいってしまっています。そして、最終話の展開に、「転」の要素が多すぎてしまっているのが残念です。
第5話辺りで、パパチャアリーノと決着をつけておくべきだったと思います。そして、最終話で皇帝と戦う流れであったなら、きっと印象は全然違ったものだったでしょう。また、展開が早すぎて、色んな事実が明らかになっていくことで、頭の理解が追いつかないです。
最終話は「畳み掛ける」という言葉がピッタリの表現ではないでしょうか。しかし、畳み掛ける展開に面白みは感じることができませんでした。物語そのものの軸は、面白い作品だと思います。
冒頭でも記述したように、色々な要素を詰め込み過ぎたこと、そして、ペース配分を間違えていることが残念です。
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