アニメオタクの文化を描写した不思議な世界観
オタク文化の勉強
まず不思議に思ったのが、オタクの文化を描いたアニメ作品であることです。アニメの中で、登場人物がアニメに夢中になっていて、サークル活動を展開しているのは斬新に感じました。
原作マンガ「げんしけん」の作者がオタクなのか、それとも、この作品をつくるにあたって、オタク文化を勉強されたのでしょうか。ただ、インターネットのフリー百科事典、ウィキペディアによると、原作者がモチーフとした題材があるそうで、原作者の経験を作品として仕上げたもののように推察します。
また、物語を通して、主人公の笹原 完士(ササハラ カンジ)の変化ぶりが楽しいですね。オタク文化に興味はあるけど、世間体や自分自身の殻を破れないキャラクターだったのに、徐々に覚醒していく様子が面白いです。また、エロい要素がオタク文化の入り口となる様子も描かれており、妙に納得させられる部分があります。羞恥心が少しずつなくなっていく笹原、羞恥心より好奇心が勝る描写が分かりやすいです。
また、オタクは「なるもの」ではなく、「気付いたらなっているもの」というのは、的を射ている表現だと思います。オタクサークルでありながら、明らかに一般人思考である春日部 咲(カスカベ サキ)の存在がいることで、その部分を明確に打ち出されているのではないでしょうか。
携帯電話の着信音(笑
面白い部分に着目された作品だと思います。ここまで携帯電話の着信音に着眼点を置いたアニメ作品を観たことがないです。この点においても、オタク文化にスポットを当てた「げんしけん」をいうアニメ作品ならではないか、と思います。
携帯電話から流れる単音の着信音に、当時の時代を感じさせるものがあります。当時は、着信メロディーの編集機能を備えていた機種がほとんどでした。そして、アニメオタクと呼ばれた方たちは、隠すことなく堂々と着信メロディーをアニソンにしていました。とても懐かしくもあり、またアニメの中でも笑わせる要素になっているのではないでしょうか。「コンバトラーV」「花の子ルンルン」が突如流れ出すと、やはり笑ってしまいます。
特に、高坂 真琴(コウサカ マコト)と「花の子ルンルン」の組み合わせは意味が分からなくて面白いです。しかし、高坂くん自身のキャラクターを表す着信メロディーとして、フワフワしていて何を考えているのか分からない部分をうまく表現したもののように感じます。
「稲中卓球部」との類似点
「げんしけん」というアニメ作品、特に第1期を振り返ってみると登場人物が「稲中卓球部」と重なることに気付きました。もちろん、部員の全てが当てはまるわけではありません。しかし、印象が近く感じる人物が多いです。
まずは、「げんしけん」サークルの中でも一般人である咲は、「稲中卓球部」登場人物である岩下 京子(いわした きょうこ)と印象が近いように思います。キツい性格であること、そして、すぐ暴力に走るキャラクター性などが似ているように感じないでしょうか。
そして、「げんしけん」サークルの中で、癒し系である大野さんは「稲中卓球部」神谷 ちよこ(かみや ちよこ)に似ている気がします。特に、巨乳キャラである点、地が暗い点などイメージが重なる項目が多いように思えないでしょうか。
また、イケメンキャラクターという部分では「げんしけん」高坂と、「稲中卓球部」の木之下 ゆうすけ(きのした ゆうすけ)の印象が重なります。ただ、内面・キャラクター性においては両者で似ているとは、到底言えません。
以上の点は、「稲中卓球部」の構成によく似ていると感じさせる部分です。
主人公の成長ぶり
文章冒頭の部分でも、主人公の笹原の変化ぶりに触れましたが、サークル活動を始めて、1年でサークル会長を務めるまでに到ります。オタク文化に本格的に触れたのも1年ほどのはずなので、改めて振り返ると、成長速度が尋常じゃないくらい早いことが伺えます。
物語の冒頭では、笹原はコミュニケーションが苦手のように描かれていました。しかし、サークル仲間との距離はとても近くなっていたように思います。第2話辺りで、主人公の笹原は、高坂に誘われるかたちで部屋に遊びに行きます。そして、サークル仲間たちも呼んで盛り上がっていた矢先、片思いしていた咲が高坂にこれから部屋に遊びに来ます。そこで、気を遣った笹原とサークル仲間たちは二人きりにすべきと判断して、高坂の部屋から引き揚げていきます。そこから、笹原とサークル仲間たちは場所を変えて遊ぼう、という結論になります。
この場面が、実は大きな一歩だったように感じるのです。現実社会でも、よくありそうなシチュエーションを演出して、笹原とサークル仲間たちの自然に距離が縮まったように思います。また、エロネタを共有すると男性特有のコミュニケーションも理解できます。また、コミケなどのイベントを通じ、成長していく笹原の姿が、第一期の最大のポイントとなる部分なのではないでしょうか。
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