峰倉かずやさんのセンス光る作品
魅力的なキャラクター
峰倉かずやさんの漫画といえば、他に「最遊記」しか読んだことはありません。ただ、魅力的な作品だったので、とてもよく覚えています。きっと、峰倉かずやさんの代表作を挙げるとするなら一般的な知名度においても、「最遊記」になってしまうのだと思います。
「最遊記」と「BUS GAMER」の類似点という観点では、主人公キャラクターたちを魅力的に描くことが上手いと感じさせる点です。それぞれのキャラクター、どこかに影の部分、闇の部分を匂わせ、魅力を増させる手法は同じように感じます。また、チームを形成することで、チームワークを描いている部分も似ているのかもしれません。「最遊記」の場合は四人チームで、「BUS GAMER」においては三人チームですが、不器用なりに男性キャラクター特有のチームワークを描くのが上手なのだと思います。思ったことを素直に口に出さない部分、発言とは裏腹な思いやりのある行動、そして、お互いの距離感を保つ部分は男性特有のもののように感じます。
男性キャラクターのみで形成されたチーム、そして、それぞれのキャラクターを魅力的に描いていく手法は同様のものではないでしょうか。
「最遊記」と「BUS GAMER」のチームにおける相違点という観点では、「最遊記」の主人公キャラクターたちは四人とも戦闘力が高いですが、「BUS GAMER」では戦闘力に劣るキャラクターがいることです。戦う展開の多い「BUS GAMER」というアニメ作品において、戦闘力の劣るキャラクターがチームメンバーであることが印象的です。
特異なキャラクター
戦闘力の劣るキャラクター、斉藤 一雄(さいとう かずお)ですが、その存在意義は「BUS GAMER」というアニメ作品の中で大きいのではないでしょうか。
美柴 鴇(みしば とき)、中条 伸人(なかじょう のぶと)の二人は、戦闘力が高く、物語の内容と存在が合致しているように思えます。しかし、斉藤に関しては、物語の内容と存在が相反しています。よって、戦闘力を持たないことで、鴇と中条が、斉藤のフォローをしなければならない状況を生みます。しかし、斉藤はチームの中で、不要な存在なのか、と考えてみると、決してそうではないように伺えます。鴇と中条は、戦闘力は高いですが、協調性や人間関係の構築という部分では弱いように見受けます。鴇と中条を結びつける役として、斉藤の存在はチームの中で大きいもののように思います。
それぞれの足りない部分を補い合っている三人は、単独では問題が多そうですが、三人の合わせたチーム能力としては高いものにまとまっているように感じられます。ビジネスにおける場面では、グループとチームの違いを求められることが多いです。グループとチームの最も明確な違いは、目的が共有されていることです。そして、アニメの冒頭で「1億円」という数値目標を共有する場面が描かれています。
元々は、企業にそれぞれが応募して、採用されたことによってグループ分けをされた三人でした。しかし、数値目標を掲げることによって、グループからチームという存在になりました。これは意図して狙った構成だったのか、原作者の峰倉かずやさんにしか分からないことですが、よく考えられたものであることが伺えます。
地上波では最短アニメ作品
全3話と地上波で放送されたアニメ作品では、最も短いのも特徴的なコンテンツです。全編を観た後の率直な感想として、どうして続編が描かれることがないのか疑問に感じます。アニメ作品として、とても面白かったです。この三人のチームワークをもっと観たいですが、原作マンガの執筆もされていない様子なのが残念です。
しかし、考えてみるとチームワークを強調しているように感じさせるアニメ作品です。もしかしたら、原作者の峰倉かずやさんは、この作品を通して描きたいことがないのかもしれません。全て描き切ってしまったのではないか、というように捉えることができます。このアニメ作品は、チームワークを形成するまでの過程が全てであって、峰倉かずやさんにとって、それ以上ではないのかもしれません。チームワークを形成するには、グループをチームとして機能させる必要があります。そして、明確に数値目標を掲げることによって、それも達成されています。
ただ、漠然としないのは、女刑事の一ノ宮 恵子(いちのみや けいこ)の存在です。
アニメ作品を観通した印象では、居なくても良かったように思える存在に感じます。しかし、登場させたのには、それなりの理由があるのだと考えられます。全3話のアニメの中で、登場させた理由は分からないです。もしかしたら、そこに気付けていないメッセージ性が隠れているのかもしれません。しかし、一ノ宮の存在は、峰倉かずやさんの「BUS GAMER」という作品を通して、描き切れていない別の何かを感じさせます。
そうでなければ、登場させた必然性がないように思えます。
もし、続編が描かれることがあるようであれば、注目すべきは、一ノ宮の存在ではないでしょうか。
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