読んだ後、胸になにか残る作品
宮本輝らしい深い、落ち着きのある安定した作品。
戦後の日本を舞台に、一人の男が、溢れかえる孤児達の母となり父なる。
上巻はじわじわと本にのめり混み、体にストーリーが入って来る感じ。
派手なストーリー性やアップダウンとかは無いのに、読んだ後深く考えさせられるものが残るのは、宮本輝ならではで本当に気持ちがいい。
孤児達は特別な幼少時代をすごし、大人になってそれぞれ個性豊かに成長していく。この時代の戦争孤児ならではの、子供たちの根強い結束感があり、みえない糸のように彼らを取り巻く感じがなんともいえず、心が痛くなる反面、不思議な暖かさが広がる。
ビルから撤去させる目的で現れた男を通じて映し出す、登場人物一人一人の感情、人生が読み手をどんどん深いところへ連れていってくれる。なにか大きな変化がある訳ではないのに、ラストには何かが大きく変わったと感じるそんな気持ちにさせてくれるお話です。
オレンジの壺みたいなサスペンス調のミステリーとは違うけれども、深い所で同じ世界として繋がっている感覚になる。宮本輝野作品はこの雰囲気が独特で、何度でも読みたくなってしまう。表紙のファーストインプレッションと全く違うイメージの内容でした。
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