ガリヴァー旅行記～ジョナサン・スウィフト～ - ガリヴァー旅行記の感想

ガリヴァー旅行記はアイルランドの作家、ジョナサン・スフィフトによって執筆された風刺小説の一つです。

船医として働くレミュエル・ガリヴァーが小人の国に遭難するところから始まり、以降は巨人の国、天空の国、ヒト語を話す馬の国と次々と未知なる世界を冒険していくという物語です。

風刺小説であるため、十五少年漂流記や海底二万マイルのようなサバイバルやアクション要素は見られず、未知の世界での生活や風習を通して、当時のイギリス人の社会や慣習に批判を加える要素が多々含まれています。己の欲望を満たすために引き起こされる戦争、学問のために学問を重ね一向に社会のために知識を生かそうとしない学術界、失政を隠すために他国への敵愾心をあおる王室等、当時の英国社会の問題や矛盾を赤裸々に描き出しています。

またスウィフトの故郷、アイルランドは長年にわたる英国支配によって社会的、経済的に疲弊しており、当時の支配者階級であった英国人、英国国教会等に対する批判要素を加えることでアイルランド民衆の独立機運を高めようとした狙いもあると思われます。

出版から300年近くを経た現代においても、その内容や表現、その世界観の深さは風刺小説としては最高の域にあり、現代社会が抱える矛盾を我々に思い出させてくれる不朽の名作といえるでしょう。