屍鬼を見て思うこと - 屍鬼[シキ]の感想

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屍鬼[シキ]

4.004.00
映像
3.75
ストーリー
4.25
キャラクター
4.00
声優
4.13
音楽
4.25
感想数
4
観た人
5

屍鬼を見て思うこと

5.05.0
映像
3.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
4.5
音楽
4.5

始まりは行方不明の少女という展開から、ホラーアニメを好む者としてはまず興味を惹かれる、夜と懐中電灯、動かない横たわる少女、人の吐息の様な効果音が一層に不安と期待を高める。

生と死とは、このアニメはそれを問いかけている。単に人が死にその犯人を探していく物語ではない、死ぬと言うことが如何に恐ろしいものか、人はその狭間を覗いた時にどう変化していくのか、そういった、人間模様もこのアニメでは重要なテーマだと思う。

人間が本当に気付くべき命という物の大切さとは、そして生きるとはなにか。生きている者なら「なぜ生きているのか」は永遠のテーマだろう。このアニメはそんな疑問にひとつのヒントをくれているように思えてならない、アニメというのは登場人物があり、主人公がいて、脇役がその色を飾るというのが初めから決まっているように思うのだが、屍鬼はその常識を覆す所からまず始まる。主人公が決まっているのではなく、登場人物すべての色が合わさって物語が初めて成り立つように思う。

周りを隔離された村、人間関係は退屈で、若者は華やかな街中に憧れる。そこにもとから住む者も居れば、都会から越して来た者もあり、それが「孤立した村」という設定を際立たせる。そこに突然現れる似つかわしくない洋館、村の人達は不思議がりつつも受け入れる。そこから、何気ない自然死の事件が微かに現れる。それが物語の始まりだ。全ては「死」から始まる。そして、徐々に浮き彫りになっていく不自然な死の影、影はどんどん広がっていくが、村という特質だろうか、人間の本能というものだろうか、重大なことが起こっているとは誰も気付かない。気付いたのは医師と住職、そして若者。彼らが基準となり恐ろしい病因への追求は始まっていくのだが、この時に私が関心したのは医学の知識が振り込まれているところだ。アニメだと、そこまで追求する者もないし、そこまで書き込むべきなのかとも思ったが、医学の常識と言うものがより現実味を帯びていて、かつ、物語の真実からは遠ざけている所が凄いと思う。実際、このアニメのようなことが起こったとして、展開は現実もこのアニメのようになるだろうと思う。それくらいのリアリティを感じさせる。段々と村の人達は何かがおかしい事には気付くのだが、誰もが臭いものに蓋をして、誰かが答えを出すのを待っている状態だ。そこから物語は核心に迫っていく。この病気はなんなのか、謎ばかりが増えて不安を存分に煽り立てた頃に医師が気付く「人間の出来る所業ではない」つまりは異形のものが存在しているということ、ここでも人それぞれの葛藤が繰り広げられる。若い者は素直に受け入れ、医者や大人は常識というかべから抜けることが出来ず、なかなか答えを見つけられない。

そして、外からの異形の者も非常に魅力的に描かれている。美しく、品性があり、無駄がなく、そして傲慢である。正体を明かすまでも異形の者はそういった存在感を魅力的に表している。

徐々に真実に迫っていく人達だが、常に後手後手に回る人間はなかなか思うような展開に進まない苛立ちから仲違いもしてしまう。その間に猛威はどんどんと村全体を飲み込んでいき、人々は知らず知らずのうちに餌食になっていく。命とは、そして、人は追い詰められた時、どの様に変貌していくのか、段々と物語は中盤に差し掛かる当たりで忘れられない台詞がある。異形の者の一人である少女がくちにする台詞なのだが、「人間、死は常に平等なの、特別に酷い死はないわ、若さも、金持ちも、男も女も関係ない、死は一切を無にする。だから死は誰にでも酷いことなの。」とても深い台詞だ。この物語の核心と言っても過言ではあり無いのかも知れない。ここから展開されるむき出しになる人間の本性からはめが離せない。人はどうやったら残酷になれるのか、現代社会でも広がる無差別な殺人事件に頭を傾げる人も多いだろう。このアニメはそれを濃密にかつ自然にと言っていいほど静かに描いていく。まず常識が壊れる。常識というものは人を縛り付けもするがある部分で安定を保つ大切な鍵でもある。それが壊れた時、人は獣となる。感情と欲望のままに生きるために殺していくのだ。そして、絶対だったものが壊れていく様もこのアニメは見せてくれる。強いものが弱いものに、弱いものが強いものに変貌する瞬間。切なさのような悲しみがこみ上げてくる。人々は何故、こんなことになったのか、何故、今自分のやっていることが正しいのか、それすらも分からないまま終盤を迎える。生きる為に殺戮を繰り返し、強くなったものは、これまでの怒りと悲しみを発散させるかのようにことを繰り返していき、弱くなったものは自分達が追い詰められた運命を呪う。誰が正しいのか間違いなのか、何が正しいのか間違いなのか、ゴールはどこかもわからない殺戮は繰り返される。身の毛もよだつような展開はただただ、残酷で神秘的だ。このアニメを見た人はこのラストを、胸につかえるようなもどかしさをどう捉えるだろうか、そして、どう答えを出すだろうか。それはあなた次第。

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本当にありそうな内容

キャラクターが奇抜でおもしろい田舎のひとつの村の中で起こる出来事を描いているアニメなので、子供からお年寄りまで、多様な人間がそろっています。キャラクターデザインについていうと、ホラーアニメなのに髪の色がピンクだったり黄緑だったりしてユニークで、このアニメの登場人物はほとんど、髪の毛のくせや跳ね具合が特徴的で、まるで髪が生きていて人格を表しているみたいでした。黒幕である桐敷家の人間たちは、特に髪の毛が広がっていたり、目が真っ黒であったりと奇抜さが際立っており謎の豪邸の住人として、とても興味をそそられました。桐敷家が目立つこと、村人とあまり交流しないことに村人の注意を向けさせることで、じわじわと進行している、村中の死から、村人の目を遠ざけさせていたのではないかと考えます。映像の迫力がすごい吸血シーンは、圧巻モノです。特に、夏野の親友である徹ちゃんが、屍鬼になって、夏野だとわかりつつも空腹に...この感想を読む

4.04.0
  • ざらばんざらばん
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