最後はチヅルと悠大が共演している一瞬がいい
幼馴染とは近いけど、恋人ができると遠い存在
誰よりも近くにいた幼馴染なのに好きな人は順番に並んでくれなかった。会った順番からではないの?そう言いたくなるチヅルの気持ちがよくわかります。和臣は、チヅルの気持ちに気がついていながら、気がつかないような素振りを見せていた。でも、彼は半信半疑だったのではないでしょうか。俺のこと好きなのかも、でも自意識過剰かもとか思っていたのかもしれない。リカちゃん先輩のことで頭はいっぱい。でもチヅルのことも頭の片隅に置いていてくれたのだと思いたいです。和臣くんのすごいところは、この人を好きになってよかったと女の子に思わせるところです。チヅルの気持ちが決定的にわかってしまい電話をします。「俺ほんとにうれしかった。ありがとう。チヅル」このシーンでこのセリフを言える人は、本当にすごい!何人の男の子がこれを言えるのでしょうか。大学受験だから、18歳!幼馴染でずっと一緒にいたから、お互いのことは何となくわかっている。だから、このとき、このセリフが言えたのだろうと思います。これが幼馴染でなかったら、このセリフはまったく違ったものになったのでは?と思う。チヅルがけなげで、そうっと和臣くんを思っているのがわかります。リカちゃん先輩は、いい人だってことも理解しています。でも、心はついていかない。「ゆうべくらいから、やり直させてくれないかなあ。そしたらもっとうまく・・・いやもうちょっと前から3年前・・・せめて1年前!きっとチャンスは何度もあったのにね」私に勇気があったら、何年か前に戻って、せめてリカちゃん先輩がいいなぁと思う前に戻ってとチヅルは回想しています。それでも自分に勇気がなかったから、好きの一言が言えなかった。言えない気持ち。でも、決定的に伝えなくてもこのままでもうまくいくんじゃないかという思いもあったのではないでしょうか。リカちゃん先輩の存在が出てくるまではそう思っていたのではないかな。幼馴染という存在は、本当にやっかいです。近いけど、そんなに遠くない距離感なのです。友達以上恋人未満という言葉が流行った時期がありましたが、本当にそんな距離感だったのでしょう。一番友達としては近くにいるんだけど、恋人ではない。その空間というのは、相手に恋人ができるまでは本当に心地いい距離感。それを壊したくなくて、伝えきれなかった。それが正しいのかなと私の見解ではそう思います。
その一言で救われる恋もある
「しっかしさー。おまえなんで女と長続きしないんだ?おまえやさしーし、見た目悪くないし、料理もうまいし」ここまで男友達に言わせる男子も珍しい。それは過去の恋を引きずっているからなのだと言えたら楽だったろうと思うけど、それは大事に彼の中にしまってある記憶。誰にも言えない。でも、伝えたい相手は、遠い空の下。3人一緒にいた関係を崩したくなくて言いたくても言えなかった。辻井くんは、悠大が好きなのを知っていて、彼に比呂に告白してもいいかと言った。悠大はいいよと言って身を引く。辻井くんと比呂が付き合いだしたけど、悠大が好きなのは比呂だということを本人に伝えてしまう。比呂は「遅いよ。ばか悠大」と泣く。その涙でわかってしまう。比呂が好きだったのは、悠大だった。それを聞いていたのは、辻井くん。卒業まで大事にしていたかったのに、最後に崩してしまったのは自分だった。同窓会と同時に思い切って、ふたりに会いに行く悠大。きっと前に進めないことがわかっての一歩だったと思います。いきなり辻井くんに謝られ、比呂とお前が好きなのを知っていたことを聞かされる。自分もはっきりと言えばよかったのだとこの瞬間に気がつく。お互いに言えなかった不器用さを感じて、それで同窓会の会場に臨んだ。当人の比呂は、いきなり妊娠していた!男の子にはショックだけど、笑い転げてしまうほど、時間の経過を感じます。比呂はそんなに気にしていなかった!という事実。前に進んでいなかったのは、時間が止まっていたのは、辻井くんと悠大だけだったとわかり笑い転げています。「あたし、あの時うれしかった。悠大くんが好きだって言ってくれた時、ほんとはすごくうれしかった。大事な宝物だよ。一生忘れない。好きだって言ってくれてありがとう」その比呂が言った一言で、あの一緒にいた日々が救われた気がしたのではないかなと思います。最後のあの苦い思い出で、ずっと胸が痛かった思いをその一言で救われた。本当にあの日々が無駄ではないし、楽しかった思い出を今度からは思い出せるのではないかなと思います。
誰もが胸にしまっている片想いの記憶
アニメが先に企画があって、この漫画が生まれた。漫画すごく切なくて誰もが心の奥の奥にしまっているような大事な記憶みたいなお話しです。ふたつの恋を女の子と男の子バージョンで見せてくれた谷川先生!そのふたつの恋が同じようなセリフで救われる瞬間を気持ちが広がっていく様子を上手に描いています。それを爽やかに描いてくれたのは技術だなぁと思います。ここまで爽やかに漫画にかけるのは、谷川先生ならではのタッチだからかなと思います。線が細いけど、変化する顔の表情とか女の子の仕草のかわいらしさとかがいいです。チヅルが東京タワーから見ている風景、組んだ手に頬を埋めながら、ふーと長いため息をついているシーンとか見ていると、落ち込んだときやる仕草だねとか自分とシンクロさせながら読んでしまいます。そういうシーン、シーンの組み合わせがうまいですね。和臣から電話がかかってきて、チヅルが電話に出るシーンは、最初あれ?着信と思いながら、ちょっと切なくなって、切れる前に出たい思いが心を満たして、5回目のコールでえいっと思い切って、目をつぶりながら電話に出ています。そして、相手の声を聞いた瞬間、ポロリと涙がこぼれてしまいます。「ありがとう」の言葉を聞いた瞬間に切ない涙がうれしいの涙に変わっていきます。その人の感情の動きを上手に表現しています。誰にでも内緒にしたい片想いの記憶があると思いますが、その思い出の宝物になる瞬間というのを上手に表現してある漫画だと思います。最後に悠大とチヅルが偶然に新☆東京タワーで出会っているシーン、それで悠大がチヅルの笑顔が素敵だなと思ってみているというのが心に残ります。
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