本との新しい出会いに感謝したくなるような大事な作品
ロケーションのいい場所の図書館は最高!
図書館ものの漫画はたくさんあるけど、本に愛があるんだなといつも感じます。どの図書館のお話を読んでも新しく感じてしまい、いつも新鮮な気持ちでたくさんの物語を読ませてもらっています。図書館という題材で、どう料理するのかどうやって描くのか、興味があります。毎回本に対する愛のようなものをすごく感じてみんな本が好きなんだなと実感してしまいます。この「青色図書館」も例外なく、もったいないのは、恋愛にしなくてもよかったのにと思ってしまいました。あと、時給が図書館事情知っていたら、こんなに高く出せないというほどです。千円は資格を持って働く人の条件です。資格をもっていてもなかなかこの金額は出ないところが多いです。私もこんなロケーションのいい場所でバイトやりたい!と言いたくなります。主人公もぼそっとつぶやいているみたいに「土地相場よりも250円高い時給。この膨大な本をそろえられるってどーゆー人なわけ?」主人公でなくてもつぶやいてみたいほど、同じこと考えていました。小説家というのが正解なのですが、そっかどうりでとつぶやきたくなりました。自分の代わりになるその時間担当さんとの打ち合わせ、小説を書く時間を確保したかったと見ました!そんなに素晴らしいロケーションで、小説家の運営する私設図書館で働けるなんて、ヒナちゃんは幸せ者です。児童作家の人が実際に運営していた図書館がありました。石井桃子さん、かつら文庫として活躍していました。今は、東京子ども図書館になりましたが、その原型は4つの家庭文庫だったというから驚きです。
それは読んだ人が決めるコト
「その本は自分で選んだんですか?とても素敵なセレクトです。この本には秋が似合う」「それっておもしろいってコト?」「それは読んだ人が決める事です。ただ私の思うよい本というのは、読んだあとに誰かと話がしたくなるようなそんな本の話です」お客さんとヒナとのなにげない会話なのですが、そのなかにものすごく大事なことが入っています。おもしろいってコト?というセリフの後にそれは読んだ人が決める事です。とあります。おもしろいと言い切ってしまうのではなく、決定権は読んだ人にあるというように伝えてくれることです。感想を言ってしまうと、その人の意見が頭のなかでグルグルしてしまって、その色にその小説が染まってしまいそうで怖いです。映画を見てから本を読むと、もう映画色にその小説が染まってしまっていて、自分のなかの想像力が出てこなくなります。だから、映画を見た後の本ではなく、本の後の映画を観るようにしています。でも、それをやってしまうと、映画が自分の想像したものの予想を裏切っていたときは、かなりのショックを感じるので見なければよかったということも一度や二度ではありません。どちらがいいのだろう。映画を観たときは、もう小説を読まない方がいいのかなと思ったりもして葛藤します。ちゃんとここでは、感想を押し付けるのではなく、選ばせてもらえる自由があっていいです。先生は、感想を聞くのが趣味の人。.そんな語り合えるような私設図書館、素敵だなと思います。それがこの漫画を爽やかにさせています。
掘り出し物、樹神さん!
先生の担当の樹神(こだま)さんが意外といい性格の持ち主です。朝比奈、通称ヒナちゃんが先生と樹神さんで妄想しているのがバレバレというのも勘がよすぎです。「・・・女子高生、おまえの時計は人より優雅に進むんだな?オレは書架整理までしてしまったぞ」「女子高生~、忙しいって字はなぁ。心を亡くすって書くんだぞぉ。これ以上、原稿の邪魔する奴は皆殺しだ」とか言ったりして、この人がこの漫画をおもしろくするスパイス的存在だなと思います。彼が出てくると、場面に締まりがでます。ピリリと効いた黒胡椒のような存在です。食べてみるとおいしいけど、たまに噛んでしまうとピリリと辛い。子どもには辛めの味に感じても大人にはちょうどよい。そんな感じの存在ですね。
スランプ中の作家、桐生さんが女性の担当さんとの会話で「プロとしてあまりに無責任です。締め切りは間近なんです。書いてください」「・・・人がどう見ようが、僕は今の自分が幸せだなんて思ってない。この膨大な書架の中から・・・雑誌から僕の小説がなくなっても誰にも気付かれず惜しまれもしないかもしれない。だけど、僕は傷つくんだ」その会話を聞いてしまったヒナに「悪かったな」と樹神さんは言いながら「・・・まあ、社会の厳しさを垣間見れてラッキーだったぞ」とも言いながらも「対人関係を器用にこなせず、それを引け目に感じている人間っていうのは、臆病で距離を感じるけど、何事にも優しい気がする。もっと色んな事に自信を持ってもいいのにな」とも言っています。樹神さん!たまにはまともにいいこと言っています。そこが彼の売りでもあります。ところどころでピリリと黒胡椒を振りまきながらも、最後はきちんと人を見ている姿がうつります。
スランプ中の作家、桐生さんが言った言葉は、どの小説家にも当てはまるのではないかなと感じました。スランプが来ない作家なんていないのではないかなと思います。みんなコンスタントに書いているようで、生みの苦しみに陥ったもの、いろいろあって世の中に本が出ているのではないかなと感じます。本をとるときに大事な本をありがとう!と叫びたくなります。本は人に感動を与えてくれたり、知識をもたらしたりします。その本を作るのは、人です。人の手がかかっているからこそ、どの本にも価値があり、捨てていい本など存在しないのだと教えてくれます。いい本を手に取れてよかったです。今回もその存在に感謝しながら、筆を置きます。
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