色々と大丈夫なのか心配になる映画 - テッドの感想

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色々と大丈夫なのか心配になる映画

3.53.5
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

ハートフルものだと思っていると痛い目に合う テディベアと冴えない男性の友情物語

少年と人格を持ったぬいぐるみのテディベアが仲良くなる話、と聞いたら、誰もがハートフルストーリーを思い浮かべるだろう。友達のいない少年に、クリスマスの日・両親から贈られたプレゼントのテディベア。少年は「テディ」と名付けたテディベアと仲良くなりたいと願い、翌朝起きてみると、テディは願いの通りに動き、会話できるぬいぐるみになっていた…。孤独な少年とぬいぐるみの心温まる友情物語…。

という凡庸な話と、『テッド』はかなり縁が遠い。

この一見愛くるしい顔をしたぬいぐるみが、実はとてつもなくエゲツない生き物であることを知っている読者諸兄は多いであろう。『テッド』は、可愛らしい外見とは裏腹に、おっさん臭い言動・行動をとるテディベアとして、瞬く間に有名になったキャラクターである。『テッド』を観たことがなくとも、喋るテディベア・テッドを知っている人は多いだろう。いまやキャラクターグッズやゲームセンタープライズとしても、テッドは大人気である。

『テッド』は、このテディベア・テッドと、テッドの持ち主であり親友のジョン・ベネットの日常を描くコメディ作品となっている。ぬいぐるみを主役としたいかにも子供向けらしい話でありながら、R15+指定を受けているという劇薬のような作品だ。

大麻・コカイン・下ネタ…ここまでやっていいのか 

映画『テッド』のなかでは、ぬいぐるみテッドが大麻を日常的に使っていたり、コカインを吸うシーンがある。日本で上映出来たのが本当に不思議な作品だ。

コメディ作品だということで、基本的には笑えるシーンが多いが、以上のような「クスリ」などのダークなネタは人によってはヒンシュクを買ってしまうだろう。

特に、日本は近年、覚せい剤の取り締まりが一層厳しくなっている。覚せい剤所持・使用による芸能人の逮捕や危険ドラッグ使用による車の事故などが増えているなかで、『テッド』で少々笑えなくなっている部分が多いのも事実だ。

別の国の話だからと笑って許せる人はいいが、真面目な人にとっては鑑賞に堪えかねるネタであろう。もし続編(あるとすれば、『テッド3』ということになる)が制作され、またしてもクスリ関連のネタが随所に亘って挿入されることがあれば…今後は、日本での上映は厳しくなると思わざるを得ない。

下ネタもかなーりドギツイのが多いので、下ネタが嫌いな人は『テッド』を好きになれないかもしれない。こういった点がアメリカでの評価も分かれているらしいが、おそらく日本の観客の間でも好き好みが分かれるところであろう。

『テッド』は、例えるなら『クレヨンしんちゃん』の毒と下ネタを50倍濃くしたような作品である。『クレヨンしんちゃん』が毎年のごとく「子供に見せたくない番組」としてノミネートされるように、『テッド』もまた、観客の数だけ受け付けられない人の割合が増える作品であろう。

ダークなネタさえ振り切れれば、コメディ作品としては面白い

しかしながら、『テッド』は得意のエロ&ダークなネタさえ受けいれてしまえば、コメディとしてはハズレなしの出来になっている。

おのおの好みがあるだろうが、筆者が一番気に入っているのはタイトルコールに挿入される、少年時代から中年時代へのジョンとテッドの変遷だ。

純粋無垢なぬいぐるみであったテッドが年と共に擦れていく様は、あの部分だけショートムービーとして鑑賞しても良いほど面白い流れであった。また、吹き替え版だとテッドの幼年期(といっていいのかわからないが)の声優は釘宮理恵が担当しているのに、タイトルコールを挟み中年時代になると吹き替えが有吉弘行になっており、その場面だけで卒倒ものである。まさかくぎゅが有吉になるとは、日本語版吹き替え音声担当のセンスに脱帽である。

他にも、テッドの人間顔負けの生き生きとした動きは実にユニークだ。黙っているとすごく可愛いのに、口を開くと毒&下ネタばかり発するのだから恐ろしい。人間界に擦れたテッドがダンスやゲームに詳しいのも面白い。

また、この作品の本質であるコメディとはやや見方が変わってしまうが、テッドがスターウォーズの扮装をしたり犬に乗ったりするシーンはものすごく可愛らしい。テッドの本質にあるのはジョンへの友情・愛情であるというところが、また憎らしいではないか。ものすごくドギツイキャラであるテッドを憎めないのは、やはりあの外見と本質にある心のせいなのかもしれない。

余談ではなるが、作中に「ガチャピン」「くまモン」「星一徹」など、日本人になじみの用語が作中でジョークとしてチョコチョコ登場するのも興味深いだろう。

吹き替えだけでなく、字幕版で鑑賞した際、これらがどのような原文なのか、興味が沸いている(なお、原文の答えが知りたい方は、紹介しているサイトがあるので、閲覧してみるといい)。

ああ、もう一回字幕で観ようかな。


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R指定のコメディーが最高の映画

なぜ命が宿ったかは置いておこう友だちのいなかったジョンに、クリスマスプレゼントでテディベアのテッドがやってきた。ジョンは星にお願いする。「テッドが僕とおしゃべりしてくれたらいいのに」って。そして次の日願いが叶ってしまうのである。なんてこったファンタジー!その理由はわからないので、奇跡と言うことで置いておこう。そこを検討している場合じゃない。この映画はジョンとテディのかわいらしい子ども時代を描いているのではない。人が成長するようにテディベアの成長するということがおもしろいのだ。ジョンは35歳になり、テッドも同じように歳をとってすっかり中年の仲間入りをしていた。その乱れっぷりが面白い…煙草を吸い、ドラッグを放せず、酒と女におぼれている。典型的なダメ男。女房もいなけりゃ金もない。でも自分はテディベアだから、働かなくなっていいんだもんね。人と同じように、テディベアだって人の生活にまみれて変わって...この感想を読む

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大切にしているぬいぐるみが動いたら・・・とは誰しも一度は考える平成に入りUFOキャッチャーなどのゲーム機の景品の影響からだろうか、最近では男性でもぬいぐるみを大事にする人が多いらしい。女性はもちろんだが、男性も、映画のような熊でなくても、ウサギでもなんでも、自分が大事にしているぬいぐるみが、しゃべったり友達になってくれればと、幼いころ一度は考えたことがあるのではないだろうか。その延長で、今はAIが組み込まれたペットや、言葉を覚えるロボットのようなぬいぐるみもヒットしているらしい。TEDより先に、A.Iという子供そっくりのロボットを我が子に迎えるアメリカの映画作品があったが、その作中でも人間型ロボットデイビットの友達である、熊のロボットのテディが可愛らしくて注目が集まったものだ。(もしかしたらテッドはA.Iのテディがモデルかも知れないが)テッドではぬいぐるみを貰ったジョンが強く願っただけでテッドに命が...この感想を読む

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憎たらしいけど愛くるしい

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4.04.0
  • hearlohearlo
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