下ネタはともかく、こんな相棒がいたらと誰もが持ったことがある願い
大切にしているぬいぐるみが動いたら・・・とは誰しも一度は考える
平成に入りUFOキャッチャーなどのゲーム機の景品の影響からだろうか、最近では男性でもぬいぐるみを大事にする人が多いらしい。
女性はもちろんだが、男性も、映画のような熊でなくても、ウサギでもなんでも、自分が大事にしているぬいぐるみが、しゃべったり友達になってくれればと、幼いころ一度は考えたことがあるのではないだろうか。
その延長で、今はAIが組み込まれたペットや、言葉を覚えるロボットのようなぬいぐるみもヒットしているらしい。TEDより先に、A.Iという子供そっくりのロボットを我が子に迎えるアメリカの映画作品があったが、その作中でも人間型ロボットデイビットの友達である、熊のロボットのテディが可愛らしくて注目が集まったものだ。(もしかしたらテッドはA.Iのテディがモデルかも知れないが)
テッドではぬいぐるみを貰ったジョンが強く願っただけでテッドに命が宿り、話すようになるという安直な方法で夢が実現するが、こういうコミカルな作品はきっかけなど安直な方が良いのかもしれない。
単なる子供の夢で終わらず、二人が大人の男として成長した姿を描いている点がこの作品の面白さだろう。
本当にジョンはいつまでも幼いのか?
作中、ジョンはどうも成長しきれていないダメダメな中年になってしまった、ということになっている。例を挙げれば会社に遅刻したり、大麻を吸っているあたりだろうか。恋人のロリィに言わせれば、雷を怖がってテッドとくだらない歌を歌ったりするくだりもそうなんだろう。
ぬいぐるみと友達関係であることは一見子供じみているが、テッドとジョンの会話はどうかんがえても中年の男同士の会話であり、大麻はともかく遅刻や雷嫌いは本人の資質で、あまりテッドは関係ないのでは?と感じた。
テッドが、人間性と言ってはおかしいかもしれないが、中身の魂は人間の中年男性の友達と何ら変わらない描写がされていたため、ジョンの至らなさをテッドのせいにするのはやや違和感を感じる。
ロリィが最初、テッドと離れないとあなたはダメになると言っていたが、二人が共依存関係などでお互いをダメにしていたというよりは、単純に自分より長く共に生きてきた存在へのロリィの嫉妬ではなかろうか。その証拠にテッドは家を追い出されてからも自立して仕事をし、恋愛もしている。
寂しさはあっても、ジョンもテッドも同居なしでは生きていけぬほどの依存関係にはなかったと思う。
作品自体が非常にコミカルなので教訓めいたメッセージがあったかは疑問だが、個人的には自分の至らなさを他人(ここではテッド)のせいにしているうちは成長できないのでは、ということは強く感じた。
日本語訳が見事
英語をそのまま楽しんでもいいし、日本語字幕を楽しんでもいいが、この作品は日本語吹き替え版の吹き替えがかなりユニークで、相当訳を工夫したと思われる。
おそらくアメリカでしか通用しないジョークを、日本らしくアレンジした訳し方をしたのだろう。
日本で有名な熊キャラ、くまモンやファーファがセリフとして登場したり、ガチャピンや星一徹などのキャラが表現として起用されるのも大変洋画の役としては大胆だと思う。
賛否はあるかと思うが、万人受けしづらい表現を日本人にわかるように日本に相当する別のものに訳してもいいのではないだろうか。正確に訳しすぎて意味が分からず、笑いが滑るよりずっといい。
この作品には、アメリカでしか有名でない作品を取り入れたり、トップガンなど今の若い世代の人では知らない人もいるだろう作品も取り上げられている。知っている人には嬉しいシーンもあり、かわいいぬいぐるみが大暴れする作品だが、下ネタの関係でR15指定を受けている作品なので、かえって古い映画作品を知っている世代をターゲットとしているとしたらちょうどよい娯楽作品だと思う。
破けるところは泣ける
終始ドタバタギャグ展開かと思いきや、テッドが誘拐され、奪還の際にテッドが裂けてしまい、中身のパンヤが飛び散ってしまうシーンは、本当にもの悲しい。
誰しも大事にしていたぬいぐるみやおもちゃが勝手に捨てられたり、不注意から破損してしまうあの言いようのない絶望を伴った喪失感を子供の頃味わっているのではないだろうか。
ましてやテッドの場合、その不思議な命が宿った奇跡が失われてしまう可能性もある。あれだけテッドを邪魔扱いしてきたロリィが一生懸命テッドを助けようとし、結局はその行為がジョンとロリィの信頼を再び取り戻したのは、R15にしておくには惜しいような純粋な愛情を感じた。
心のよりどころになれるならぬいぐるみだって一生そばにいてもいいではないか。そんな気もする。
特に海外では、生まれた時から一生大事にされたり、世代を超えて引き継がれるベアもいるという。
下ネタや大麻などヤバい描写以上の温かさを感じるのがこの映画の不思議なところだ。一方でこんなに愛を誓ったロリィと、テッド2では離婚して別の女性とねんごろになるジョン。こういう展開もさばさばしていて、アメリカ的だと言えるかもしれない。
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