R指定のコメディーが最高の映画
なぜ命が宿ったかは置いておこう
友だちのいなかったジョンに、クリスマスプレゼントでテディベアのテッドがやってきた。ジョンは星にお願いする。「テッドが僕とおしゃべりしてくれたらいいのに」って。そして次の日願いが叶ってしまうのである。なんてこったファンタジー!その理由はわからないので、奇跡と言うことで置いておこう。そこを検討している場合じゃない。
この映画はジョンとテディのかわいらしい子ども時代を描いているのではない。人が成長するようにテディベアの成長するということがおもしろいのだ。ジョンは35歳になり、テッドも同じように歳をとってすっかり中年の仲間入りをしていた。その乱れっぷりが面白い…煙草を吸い、ドラッグを放せず、酒と女におぼれている。典型的なダメ男。女房もいなけりゃ金もない。でも自分はテディベアだから、働かなくなっていいんだもんね。人と同じように、テディベアだって人の生活にまみれて変わっていくのでは?と考えた脚本の人がすごすぎる。真新しくこの世に2つとないテディベアだったテッド。登場したばかりのころは話題になり、人気を博したけれど、27年も経てば人は忘れ去ってしまう。その奇跡のような存在を。そんな人の切なさもありつつ、やっぱり中年の下ネタが映画がヒットした最大の要因だ。ここまでストレートに、自然に、友だち同士で会話しているシーンを描いている映画もなかなかないだろう。ジョンとテッドだけで完結していた関係にも、ローリーが加わって変わり始める。往々にして、関係性が変化するときは、新しい何かが始まるときだ。
テディベアが言ってるから許される
もうね、予告編からだいぶすごい。容赦なく、正直な下ネタをテッドが述べていく。これはもう彼がテディベアだから許されるのだ。「彼女が最近何か大きなものを求めている気がするんだ」ってジョンが聞いて、まさかの「ア〇ルか?」とか言わないでしょ。笑うわーっていうか、テディベアのくせに、どうやって女遊びを楽しんでいるのかわからない…いったいどんなテクニックをお持ちなんだろうか。いつも美人を侍らせているが、お金じゃないとすると、やはりモテ技をお持ちなんだろうね。
そして要所のギャグの数々。「まだ(ローリーと)付き合って4年だろ?俺とは27年だぜ?俺に結婚指輪くれよ」「いい女を見つけたんだ。バカっぽい名前なんだけどさ…」「(ハグして)すまん内臓音声が…ゲイっぽいな」「(就活で何ができるかと聞かれて)お前の女房を寝取ることくらいだ」…おもしろすぎでしょ。テッドとジョンが本気の殴り合いのけんかをしてみても、あれ絶対痛くないじゃん。ただただジョンの自爆じゃん。テッドはクッション性抜群で受け流し状態だろ?そして「ごめん、愛してるよ」で仲直り。ほんと、2人は親友だよ。切っても切り離せない関係が出来上がっている。
そもそもね、テッドも悪いんだよ。ジョンがローリーとうまくいきたいって思ってるのに、長く友だちだった俺のほうが優先だろってパーティーにジョンを呼んでしまうとか。そこは親友としてちゃんと話をさせるべきだったのにさ。まぁテッドのおかげでローリーとジョンはまた真剣に話をすることができたんだけどね。
ローリーも大変ね
雷苦手な男ってどうよ。本当に理解不能。そしてあの歌って実際にあるのかな?作詞作曲だとしたらかなり傑作だと思う。
ジョンとローリーの出会いは本当に運命的で、デートもたくさんしたし、一緒に暮らして…順風満帆に見えた。それがテッド付きであることを除けば。あれだけ毎日べったりしてたら、「私かテッドか選べ!」って言ってしまいたい気持ちもわかるよ。約束すっぽかしてくまのぬいぐるみ優先するようなクソ野郎、時間の無駄よって。決してジョンが女の人を侍らせているわけじゃないけれど、テッドがやりたい放題だから、ジョンにも悪影響が出ていることは確かだった。
それでも、「あなたを愛しているから言うけど」、というローリーは優しいね。別れを切り出した後も、テッドの真剣なお願いを聞き入れてジョンと話し合うことを決めてくれたし、ジョンはこの人逃したらもう絶対結婚できないなと思った。「だって彼は親友だよ!」って言ってるジョンには「何子どもみたいなことを言ってんだよ!」って思うが、ジョンがそういう人見知りでもいい人だってわかっているから、ローリーも強くは突き放せないんだよね。ジョンがローリーを愛してくれているのもまた確かなことだった。
映画の内容的に、もしかしたらジョンとテッドはずっと独り身のままの結末になるのかなと思っていたのだが、まさかちゃんと結婚するところまでまとまるとは思わなかったな。中年で親友の仲良し組でラストまで進んだとしてもいい結末だったことだろう。
昔の人気を知る誘拐犯とのゴタゴタ
どんなふうに終わるのかなーテッドと喧嘩して仲直りして終わりかなーって思ってたら、まさかのテッド誘拐事件発生。「昔流行ったけど、そういえばあいつってすごいよね」ってものが再びヒットすることはあるからね。狙われてもしかたない。というか今までなぜ盗まれなかったんだろうとすら思うよテッド。
誘拐されたテッドを救おうと探すジョンとローリー。2人の関係を壊しそうにもなったけれど、キューピッドでもあるからね。そして何より、ジョンの大切な親友だ。助けに行かないわけがない。そして誘拐犯によってテッドは無残にも真っ二つに引き裂かれてお人形になっちゃった…!うわっテッドがいなくなるラストなの?!って驚いたよ。
結局、今度はローリーがジョンが子どものころにやったように星に願いを捧げて、次の日にはテッド復活してるっていう…ますます、何の力によってテッドが動いているのかが知りたくなるラストだった。テッドとジョンの親友関係は元通りになり、ジョンはローリーと結婚することになりましたとさ。どうにかテッドを復活させようってなったときに、お祈りでいいのかしら…って思うけどね。ここまで面白おかしく進んできた物語で、オチの仕上がりもいいんだろうと期待していただけに、まさかの神頼みになるとは意外だった。それもまた、テッドというゆるい存在を表現してるからこそなのかもしれないが。
親友であり家族
テッドは、ジョンにとって親友であり、家族。ずっと一緒に暮らしてきて、お互いを見てきた。ぬいぐるみだからとか、人間だからとか関係なく、同じように考えて同じようにしゃべり同じように行動できる。そして困ったことがあったら相談しあって、助け合って。これからはテッドも働いてお金を貯めるだろうし、いい女を捕まえて結婚もするだろう。それでも2人はいつまでも友だちであり、切っても切れない家族だ。そう言える2人が立派だよ。
最後がいい話系だったため、R指定であることを若干忘れそうになった。テッド1はそれでもマイルドなほうだろう。Fワードを使うのもアメリカのスラングでは当たり前のことだしね。その分、テッド2では若干差別用語も入ってたりするから、あれは完全にR指定だわ。小中学生には見せられないよ。おそらく、テッド1での面白さの上をいかなきゃならないってことで、皮肉ワードを増やしたんだろうなーと思う。皮肉をおもしろいと覚えるのは、大人になってからで十分だ。
全体との流れとしては実にわかりやすく、子どもでもわかる。でも出てくるワードが生々しく、テッドの行為がだいぶ人として終わってるほうだから、目指してはいけないだろう。それでもあの憎まれ口が聞きたくて、何度も見てしまう作品だ。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)