アニメになるということ
原作漫画を忠実に映像化した珍しいアニメ。
普通のアニメは原作に追いつかないために途中でオリジナルの話を入れたり、そうでなくても差別化を図るためにオリジナルキャラを入れたりと何かとテコ入れして、結果的に原作の雰囲気をぶち壊しにしてしまうことも少ないが、蟲師はそれがない。
元々原作が基本的に一話完結ものだったのも良かったんだと思うが、それでなくても原作を忠実に再現しようとするスタッフの気概が感じられる。背景もキャラも雰囲気も、あの何とも言えない静寂やもどかしさ、人と蟲との距離感など見事な再現を果たしている。
この為、原作ファンにも概ね受け入れられたアニメ化の成功例となったと感じる。
実はアニメ化というのは原作ファンにとって手放しで喜ばれるものではない。作画がおかしかったり、声優が合わずイメージを壊されたり、おかしなオリジナル話を入れられてキャラの性格が別人になったりと、ある意味恐怖。それで原作を知る人が増えてファンも増える事実はあるが、それよりも「この漫画(小説)の世界を壊さないで!」という方が強い。
蟲師は声優に若干難があるが、スタッフの多大な努力で「原作の世界」が守られている。原作ファンにとっては安心して見ることができるアニメという訳だ。
アニメスタッフが入れたオリジナリティによって良くなる場合もあるが(非常に少ない)、やはり創作物というのはそれを作った人以上に理解している者はいないので、他人が手を加えると違和感や矛盾を生んでしまい、視聴者を遠ざけてしまう一つの要因になるなと、蟲師を見て確信した。
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