あの曲はまだか!まだなのか!!!
あの名曲をどこで入れてくるのかワクワクくしながら再生ボタンを押した。とくに目新しいキャラクターが出てくるわけでも突飛な脚本でも無いが、限られた残りの命の期間を対照的な二人が半ばやけくそで旅をする。どうせ終わりが見えている人生ならいっそハチャメチャに過ごしてやろうではないか、と。軽快に進む話のおかげで、彼らの絶望的な病気の事など忘れ、でこぼこコンビのロードムービーに口元がほころぶ。マフィアに追われていても、どこかコミカルで緊迫さは感じさせない。目視できる範囲に死を見据えていながら、ここまで積極的に享楽を求められるのか。色々吹っ切れたこの二人は強い。
海を見たいという動機だけの始まりがだが、そこから始まる楽しげな逃避行も、二人を蝕み続けている病の事を思うとなんとも切なくなる。しかしこちらが感じている哀愁などおかまいなしに二人は進み続ける。いつか来る終わりの日などクソ食らえだと言わんばかりに。
様々なドタバタ劇の後に海辺へとたどり着く。このシーンは観る側の胸に静かに、そして重く沈みこんで沁みていく。目的を果たした二人も、迫り来る自分達の死期を改めて噛み締める。そして、気弱ながらこの旅を心から楽しんで来た男が砂浜で息絶えて、天国の扉を叩きに行ったのだ。相棒は動揺する事もなく酒をあおる。ここへ来て例の名曲と来た!もう胸が締め付けられる思いであった。全体を通して観ると細かな粗があるが、この最後のシーンだけでそれらは帳消しになるだろう。
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