プレデターシリーズの最新作
謎の惑星から脱出せよ
『プレデター』シリーズの共通点といえば、謎の知的生命体プレデターが現れ、登場人物たちが否応なしに戦うことを迫られるという点だろう。
一作目『プレデター』ではジャングル、二作目『プレデターズ』ではロサンゼルス、と場所を変え手段を変えて、プレデターたちは人間へと襲い掛かる。
『プレデター』のジャンルを定義づけるのが非常に難しいが、パニックホラーアクションと呼べばいいだろうか。プレデターに殺された者たちは、非常に無残な屍をさらすことになる。
しかしながら、プレデターは他のパニックホラーにおけるクリーチャーたちとは一線を画す。プレデターは高潔な戦士であり、弱者や武器を持たない者を決して襲わないのだ。その惑星における戦士(地球でいう警察やマフィア、軍隊など)を狙い、狩ることを至上命題とする。誇り高き戦闘民族であることこそが、シリーズを通してのプレデターの本質といえるだろう。
そのプレデターが、今作『プレデターズ』では手法を変えてきた。自分たちが地球に赴いて戦士を狩るのではなく、地球の戦士たちを拉致し、戦場と定めた別の惑星に連れてきて、そこで戦うのである。
そのため、プレデターを撃退してエンディングを迎えていた今までのシリーズとは趣旨が変わり、主人公たちは未知なる惑星からの脱出が目的となる。
つまり、映画一本分の限られた時間のなかで、プレデターとの戦い+脱出劇という二つの目的を為す必要が出てくることになるのだ。しかも、拉致された地球の戦闘のプロたちは決して一枚岩ではなく、なかには狡猾な殺人者も混ざっている。いわば味方のなかに敵がいる状態で、主人公たちはプレデターと戦い、裏切り者から逃れながら、脱出を目指さなくてはならない。
これだけのテーマを盛り込んで話をキレイにまとめるのはなかなか難しいが、果たして。
各国の軍人たちが勢ぞろい
『プレデターズ』第一の魅力は、主人公勢に備わった設定だろう。
地球の様々なところから拉致された戦闘のプロたちは、ロシアのスペツナズ、シエラレオネのRUF、アメリカ海軍のネイビーシールズなど、いかにもミリタリーオタクやアメコミマニアが好きそうなキャラクターばかりである。武器も二丁のヘッケラー&コッホ、M134ミニガン(ガトリングガン)などいかにも見た目が派手な装備ばかりで、オタク心をそそられるだろう。
生き残るのに必死な戦場には似つかわしくない装備も多々あるが、映画のエンターテイメント性を考慮すれば全く気にならない。特に日本マフィア(ヤク○)のハンゾーが刀でプレデターに挑むシーンは、「こんな武器で絶対勝てるわけないけどカッコいい!」と小学生男子のような気持ちで見守ってしまう。しかも、対するプレデターも示し合わせたように爪状のブレードで向かい、一対一のタイマン勝負となるから、ますます胸がアツくなるのだ。
ファンを喜ばせる、優秀な装備を備えた各国生え抜きの暗殺者たち対プレデターの構図。映画『プレデター』のファンでなくとも、ミリオタにはたまらない設定といえるだろう。
プレデター好きは必見だが、前シリーズに比べると魅力が落ちるか
前項でも散々述べてきたが、本作でも、やはり主人公たちにプレデターが遅いかかってくる。今回もスピンオフ作品『エイリアンvsプレデター』に続く複数体の登場で、かつプレデターが飼いならしていると思われる犬のようなクリーチャーも登場する。
しかし、今まで集団としての統率が取れていたプレデター集団と本作では、やや毛色が異なる。今作のプレデターたちは、仲間割れを起こしているのだ。
原因は本編中で明らかにされていない。これについて、プレデターファンたちは大きな謎を抱えることになった。プレデターは、『プレデター』、『プレデター2』、『エイリアンvsプレデター』、『エイリアンvsプレデター2』に登場してきたが、いずれも確固たる意志の元で動く存在だった。個々の意志の相違などは基本的に見られず、戦士たちの背後には彼らを統括する組織のような存在も見え隠れしてきた(『プレデター2』、『エイリアンvsプレデター』参照)。
しかし、ここにきて組織と反目するプレデターの存在が明かされ、視聴者が培ってきたプレデター像に靄をかけることとなる。
Wikipediaなどを参照すれば、プレデターにも大型種と小型種がいる、第一作目『プレデター』に登場したクラシックプレデターと同種である、などと様々な考察がなされているが、はっきりしたところはいまだわかっていない。次シリーズの伏線となる可能性もあるだろう。余談ではなるが、筆者は『エイリアンvsプレデター』の人間味のあるプレデターがもっとも好きなので、今作『プレデターズ』に登場する彼らは行動原理が読めず、いまひとつ好きになれなかった。
いまだ解明されていないプレデターの生態。人気シリーズであるが故、結論づけられる日は遠いとは思うが、ファンとしてはそろそろ真実が知りたくなってきたというのが正直なところだ。
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