滲み出る愛
愛とは何か、家族とは何か。
舞台はアメリカ・カリフォルニア州。ルディは歌や踊りのパフォーマンスをして暮らしていました。ルディは働いているショーパブで出会ったポールと恋に落ちます。ルディのアパートの隣人はドラックに手を出して逮捕されました。彼女にはダウン症マルコという子どもがいましたが、逮捕がきっかけで隔離施設に連れて行かれたのです。ルディは、ポールを説得し、マルコと一緒に3人で暮らそうと提案しました。ゲイであることを隠し、法的手続きによりマルコの監護者となりました。3人は愛のある暖かい家族を築きましたが、周りはそうではなかったのです。裁判沙汰となり、母親のエゴでルディとマルコは引き裂かれてしまうのです。その後マルコは悲しい最後を迎えました。
バッドエンドから考える。
ここまで愛について観る人が考えさせられる映画は無いと思いました。愛に対してストレートに表現されているからです。生・死・愛を題材にした映画は山とあります。その多くはハッピーエンドで幸せな気持ちで見終わります。ああ、大変なことを乗り越えて主人公が幸せになってよかった、と。それに対して、チョコレートドーナッツはバッドエンドです。最初から試練の連続で主人公たちは何とか奮闘しますが、誰も救われないのです。頑張って、頑張って頑張っても救われないのです。しかし、映画見終わった人達は必ず考えるでしょう。何が愛なのか、どのようなものが家族と呼べるのか、と。劇中には様々な立場の人が登場します。警察、検事局、裁判所、母親、父親、犯罪者、学校の先生、子ども、など年齢も置かれてある立場も様々です。観る人によって共感できるポイントも別れると思いますが、誰もが普段受けていた"愛"に気づき感謝することでしょう。そして、誰もが他人に愛を与えることが出来るのです。時には自分を差し置いてまで愛を与える大切さに気づく事ができるのです。人を偏見、差別することは状況を悪くするだけでプラスになることは無いという事も分かるでしょう。私は、この映画を観て誰かを愛そうと思いました。それは恋人だけでなく、家族、友達、周りの人全てに向けたものです。自分は誰からも必要とされていないと思っている人がいたらこの映画を観てほしいです。あなたの周りにルディやポールのような人がいるかもしれませんし、あなた自身が誰かを救うことだってできると分かることでしょう。
現代の人にこそ見て、感じて欲しい。
ルディの見た目はおじさんです。それでも彼女はポールを愛し、マルコの母親として生き抜こうとするのです。心は暖かく、強い肝っ玉母ちゃんなルディは、1人の子どもの母親であり、歌手を夢見る女性です。自分の歌を録音したテープレーコードを封筒でプロダクションに贈るシーンがあります。テープを入れて封をすると必ず封筒にキスします。マルコは不思議がり何でそんなことをするのかルディに尋ねます。ルディは「愛をつけてるのよー!これできっと受かるわ!」と答えるのです。どんな逆境でも常にポジティブな彼女を垣間見る事ができるそんなシーンです。そんなポジティブな彼女さえ、ダウン症を持った子どもを育てるのは想像を絶するほど大変でしょう。親がゲイというだけで、やはり好奇な目でみられます。学校でも先生と話し合いどうにか問題を解決しようとするシーンが何度も登場することからもわかります。ポールもお堅い仕事をしているため、ルディとの関係を伏せて職場にいます。普通の人と同じようにそれ以上に愛しているのに世間には受け入れてもらえない。色々な性に対する考え方が出来た現代でさえ問題となり、世間が普通と考えている人以外のマイノリティー集団は生き辛い思いをしているのです。ましてや1979年代、世間の向ける偏見や冷淡な眼差しは今以上だったのではないでしょうか。そんな2人が子どもを育てていくなど考え難い事でした。それでもルディはマルコの母親として、ポールはマルコの父親としてそれらの偏見と必死に闘っていくのです。普通の家族として暮らしたい、3人で幸せに生きていきたい。そのためだけにルディとポールは国や学校や周りの人々と闘うのです。この映画のストーリーは1970年代のアメリカであった実際のエピソードを基に作られています。アメリカの連邦最高裁判所は2015年6月26日、同性婚を憲法上の権利として認めるとする判断がしめされました。アメリカでは13の州が同性婚を認めていませんが、この判決により全米で同性婚が事実上合法化されることになります。しかし、いまだ偏見が有るのは事実です。偏見や差別の感情を持っている人にもこの映画を見て欲しいです。彼らは、そして私たちは約60億人いる地球上の1人でしかない。どんな人間もただの人であると知ることのできる作品だと思いましたマイノリティー集団に対する偏見は根深く誰も解決できないと諦めているのではないでしょうか?しかし、この映画を通して感心を持つことが解決への大きな一歩であるように感じてなりません。
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