地球の一番の敵は人間 - 地球が静止する日の感想

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地球の一番の敵は人間

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

わからないから攻撃する

攻撃される前に攻撃をする、「何もされていないけど敵だったらいけないので攻撃しておこう」。すごく短絡的で破壊的な考えだと思います。しかし、この映画で人間の本質として描かれているのはこの部分です。話が通じなければ、とりあえず自分たちが相手の攻撃によってダメージを与えられないよう、先に攻撃するのです。劇中で人間は「破壊的な連中」として表現されています。それを裏付けるように、セントラルパークの球体からできてきた宇宙人を突然攻撃します。

70年間人間として生きてきた宇宙人が、70年人間は何も変わらなかったと言っています。この数年で戦争は減ったとはいえ、なくなっているわけではありません。言葉を話すことができる人間ですが、話が決裂してしまった場合歩み寄るのではなく、武力行使へと走ることが多いのは今も昔もあまり変わらないように思えます。あくまでも話し合いで解決をするということが最終目標ではなく、話し合いの段階で相手が自分たちの思い通りになるかどうかを確認し、自分たちの思い通りにいかなければ最終的手段として武力で相手をねじ伏せる。力が強い方が相手に言うことを聞かせることができる。だから負けないように攻撃される前に攻撃するという方程式になっているのかもしれませんね。でも弱い犬ほどよく吠えるというように、この場合も弱い人間の方が先に攻撃しています。自分たちの方が弱いことが潜在的にわかるとき、何かわからない恐怖を払うために先に攻撃しようとするのかもしれません。

地球は私たちの星?

国防長官の女性が「どんな目的で私たちの星にやってきたのか」ということを、クラトゥ(キアヌ・リーブス演じる宇宙人)に聞いたとき「私たちの星?」と聞き返されます。国防長官は自分たちが住んでいる星なので、自分たちの星という言い方をしたのかもしれませんが、クラトゥには地球が人間の持ち物のように聞こえたのかもしれません。たしかに「私たちの・・・」という言葉の中に人間以外の生命体が含まれていたのかどうかは怪しいところです。地球を破壊していることは認めるものの、地球を守っているのも人間だという思いも含まれているのかもしれません。確かに地球が宇宙人から攻撃されたり、隕石や惑星が地球にぶつかりそうになった時、物理的な攻撃で地球を守ることのできるのは人間だけかもしれません。しかし、人間は地球を守るというよりは、自分たちの生きる場所を守るために地球を守るといった方があっているでしょう。

人間の傲慢さに焦点を当てている作品だと思います。「ノアの方舟」といえば人間がどの動植物を残すか、選ぶ立場であって選ばれる立場に立つことなんて考えたことがないと思います。選ばれるとしてもあくまでも人間が、どの人間を残すか選ぶのであって、ほかの生命体から選ばれるなんて想定外です。「人間を滅ぼしたら地球が救われる」としたら、地球は人間を滅ぼすことを選択するかもしれませんね。人間はあくまでも地球の生命体の一つなのです。「ノアの方舟」に乗るのが他の動植物も雌雄1対づつなのだとしたら、人間も同じように男女1組だけじゃないといけないでしょう。

滅亡の危機を目の前にしてはじめて変わることができる

責任者と話がしたかったというクラトゥをヘレンはバーンハート教授に会わせたとき、クラトゥたちも以前は滅亡の危機にありその時に変化したということを聞いて、人間も自分たちが変わらなければ滅亡するとわかったら、変わることができるという。その変化の兆しをクラトゥはヘレンとジェイコブにみることができたので、人間を滅ぼす「処置」は中止した。物語としては人間が改心して滅亡は免れたことになっていますが、はたしてそうだったのでしょうか?大統領は結局一度もクラトゥと話をすることもなく、それどころかセントラルパークにある大きな球体を戦闘機で攻撃しています。人間は変わることができると思ったのはヘレンとジェイコブを見て判断したのでしょうか。

本当に痛いめに合うまで自分たちの今までの生き方や考え方を変えない人間たち、しかも今回は人類の滅亡です。逆に言うとそこまで追い込まれなければ人間たちは変わることができないなんてどうでしょう。たしかに人が変わるときはなにか痛みがともなう経験をし、その痛みを繰り返したくないという心が人を変えます。その痛みの大きさは人それぞれで、痛みが少しの時に自分を変えていく人もいれば、今回のように滅亡というところまで行かないと変わらない人もたくさんいます。人間を滅ぼすということをメインにしたこの作品らしく、人間がつくった世界的な遺産でさえ破壊されていきます。世界遺産などは地球や地球の他の生命体からは特に必要なものではないということでしょう。変わる時間が欲しいというヘレンに対して、もう十分待ったとクラトゥが言います。どうしようもなくなってから対処するのではなく、普段から対処できるようにすべきだと思います。

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