沙中の回廊の評価
沙中の回廊についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
沙中の回廊の感想
古代中国を舞台に精緻で華麗な文体を駆使して、躍動する人物像を描いた 「沙中の回廊」
それにしても、どうして宮城谷昌光の小説は、これほどまでに胸が躍るのか。読んでも読んでも、その思いはつきることがない。「沙中の回廊」は、古代中国の春秋時代中期の稀にみる戦略家と言われた士会の生涯を描いた書で、その冒頭は、乱を起こした不満分子に晋の文公(重耳)が襲われる場面である。宮中に駆けつける士会が、凄まじい棒の使い手と遭遇するシーンから幕が開く。文公の直臣、介推だ。士会を反乱分子と間違えて棒を振り回してきたものだが、誤解とわかって介推は、風のように去っていく。この一か月後に、文公に対する批判の意味で介推は山にこもり、やがて伝説になるのだが、その直前に士会とすれ違うわけである。つまり、この作品は、晋の文公の生涯を描いた「重耳」、そして「介子推」と微妙に重なり合っている。晋という国を描くという点では、ある意味で三部作といってもいいと思う。晋に帰国した重耳の後半生を士会の側から描いたのがこの...この感想を読む