失はれる物語の評価
失はれる物語についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が4件掲載中です。
各項目の評価分布
失はれる物語の感想
本書、全8作品収録中の1作品「しあわせは子猫のかたち」について。
主人公の孤独に対する執着。主人公のぼくはとにかく1人になりたい、これでもかという程に人との係わりに疲れた青年だと念を押す文章やエピソードが多く綴られている。初めて読んだ時には、主人公の孤独感への共感や同意見を感じながら読み進めていたが、2度目に読み直す頃にはなるほど、この「ぼく」の独特の孤独に対する意思の強さや孤独であろうとする姿勢や執着についての納得が出来た。つまりは、のちに彼が体験する事、彼の変化に対する布石だった。当然、実際の世の中では孤独であろうとする事に原因はあっても理由付けや折り合いなど簡単に言い表せるものはないのだが、この話を読み切った時、孤独を感じる世界の誰もがこの主人公と同じ体験が出来ればどんなに美しいことかと感じた。この話は少し疲れた時や心が狭くなっている時に読むと心穏やかになれる。切なくも優しい物語で個人的にとても気に入っていて何度も読み返している。作者である乙一...この感想を読む