八つ墓村のあらすじ・作品解説
横溝正史の長編小説である「八つ墓村」は、岡山県の津山市で昭和13年に起きた「津山村人32人殺し事件」に着想を得て書かれたものである。戦時中に岡山県に疎開を経験した横溝が、山陰独特の雰囲気に魅力を感じ、日本の閉鎖的な村独特の因習や風習をふんだんに盛り込んで描かれている。 神戸で一人の身寄りもなく生きる孤独な青年、寺田辰也がある日突然岡山の旧家の跡取り息子であると判明し、村へと帰ってくることから物語は始まるが、やがて次々と身内が毒殺され、やがて青年の出生の秘密が明かされるというストーリーであるが、さらに平家の落ち武者伝説や辰也の実父が起こした過去の凄惨な村人惨殺事件も相まって、独特な雰囲気が読者を引き込む展開である。 名探偵、金田一耕助シリーズの一つで、映画化はもちろん、テレビドラマや漫画など数々の映像化がなされている。主役の金田一耕助を演じた俳優も、映画版だけでも1951年版では片岡千恵蔵、1977年版では渥美清、1996年版では豊川悦司と非常にバラエティに溢れる役者によって演じられている。
八つ墓村の評価
八つ墓村の感想
映画にはないものが楽しめます。
昔、8人の武者を欲の為に殺してしまった村人たち。その後、怪奇なことが続いたため八つ墓村と呼ばれるようになった。そんな村で起こった連続殺人事件の話です。主人公目線で進む物語が特徴的です。人間の愛憎がキーになります。恋愛のシーンが結構印象に残りますね。それぞれの心情を紐解いていくところにこの作品の醍醐味があるのではないでしょうか。また、金田一耕助が文中で語っているように、活躍せず勝手に終わってしまいます(笑)そんな風にあれよあれよと物語は進みますので、読みやすいです。何度も映画化されていますが、映画だけでは楽しめない細部がありますので、ぜひ小説を読んで見ることをおすすめします。
金田一耕助は活躍しない
タイトルにも書いたとおり金田一耕助はほとんど活躍しない珍しい一冊。ですが私はこの作品を読んで横溝正史氏の他の作品も読んでみたいと思いました。八つ墓村と呼ばれる山奥の村で次々と人が殺されるという単純な内容です。しかしその単純な中に黄金探しのための洞くつ探検など違う方向でも楽しませてくれる粋な作品です。トリックについても人間の真理を利用したりしていますし、その解説を聞いてもしっかりと納得できるものになっています。昔よりもいろんな作品がかなりの数出回っている今の時代でも、輝きを失うことのない数少ない作品だと思います。読んでない方に胸を張ってお勧めできる一冊です。