人間の奥底を考えさせられる!「破戒」
過去の身分を隠して生きるということ「穢多」中学の歴史の授業で、士農工商という身分制度があり「人として扱われなかった身分の人を穢多・ヒニン」と呼んでいたと教師から教わり、それ以上の詳細を述べなかったと記憶に残っていた。思春期に入った当時の私にとって、人として扱われることのない「その人達は、どのように生きていたんだろうか?」と一瞬脳裏をよぎったけれど、詳細を調べることもせず「そのような人達が昔存在していた」ということだけを私の胸にとどめておいた。主人公瀬川丑松の下宿先から「穢多」という身分が明かされてしまった大日向に対し、人々の憎悪と罵詈雑言、丑松自身も青年教師として「穢多」という身分を隠しながら、只管に生きているその姿を通し、私は苦々しく見えないガラスの破片が心にチクチク刺さる思いで読んでいた。「人として扱われない人達」あの当時歴史の教師がそれ以上話さなかったことが、この小説には凝縮して...この感想を読む
5.05.0
PICKUP