代筆屋の評価
代筆屋の感想
誰かに手紙を書きたくなる
辻仁成は駆け出しの小説家だった頃、人に頼まれて代筆をしていた。当時のノンフィクション。素敵な言葉が並べられた、素敵な手紙。素人には書けないような、まさに小説のような手紙である。書いた手紙を本人自ら紹介している本なので、やや自己愛の強い感じがする。この点が鼻につく読者もいるかもしれない。代筆自体が云々という意見もあるだろう。しかし、私は気に入っている。作家が書く手紙はこんなに素敵なのだ。誰かが誰かを思って書く文章は素敵だ。むしろ不特定多数に向けての小説のほうが、ナルシシズムが強いのではないかと思った。個人に宛てて送った文章の方が、書き手の思いが詰まっているように感じた。