レインツリーの国の感想一覧
有川 浩による小説「レインツリーの国」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
甘々な恋愛ストーリーに惹かれた!
メールでのやりとりが素敵映画化になった有川浩さんの小説。まだ映画を観ていない状態で、やっぱり原作を先に読まなくては!とあらすじなどの予備知識なしで読んだけれど、相変わらずの有川さんならではの甘々な恋愛小説!そして、伸行とひとみの出会いがひとみのサイト経由というのが面白い。サイトで知り合った男女の恋物語自体は珍しくはないが、きっかけが昔読んでいたライトノベル『フェアリーゲーム』のレビューというのが読書好きとしては憧れる。読書好きなら、共通の本を通して異性と出会ってみたい!と思うことがあるのかなぁ、と。だから、ストーリーの展開にのめり込んで読むスピードが自然と早くなった。2人のメールのやり取りを文章にしている割合が多く、読みやすかったからもあるけれど。実際に2人が会うようになってからも、メールでのやり取りの場面が多く、それがこのストーリーならではの構成で楽しい。チャット形式の連絡手段が主流に...この感想を読む
心が温められます。
テンポのよさに一気読みしてしましました。一冊の本をきっかけにネットで知り合った快活な伸という男の子と聴覚障害のハンデを持っているひとみという女の子。言葉を大切にしている二人がとても懐かしく感じて、シチュエーションがとても自分好みでした。真剣にぶつかりあって、戸惑いながらも受け止め続ける伸。ふたりの心が変化していくことに、わかりあうこととは何かと考えさせられました。誰でも何かしらハンデを持つことはあるはず。障害だけではなく心の傷やコンプレックスなど辛さを抱えることは誰でもある。そんな時、人間は自分の都合のいいように解釈してしまう事の方が多いのでしょうね。「・・痛みにも悩みにも貴賤はない。周りにどれだけ陳腐に見えようと、苦しむ本人にはそれが世界で一番重大な悩みだ・・」印象に残る言葉です。
作中作の実現
同じ作者・有川浩さんの『図書館戦争シリーズ』に作中作として登場し、のちに本当に実在するものとして書かれた恋愛小説。これ、小牧さんにオススメされて毬江ちゃんは良かったのか? というのがなんとも……。というのは男性のほうが、うーん、常に女性のほうをリードしていて、二人で歩調を合わせていこうというより先に立って引っ張っていってあげている、という印象が強かったんだよなぁ(この『あげている』というところもポイント)。個人的には、本当に良いカップルって、お互いがお互いのできていないところを補い合うような、二人ができていないところがあれば一緒に頑張っていけるような関係が望ましいと思うので、この主人公たちのような在り方はどうなのだろうと思ってしまったし、終わり方もあまり好みではなかった。
メールから芽生えた恋
メールのやりとりから始まった男女の恋の話。中学時代に読んでいた忘れられない本について男が検索をかけたら、ある女のブログにヒットした。そこにあった感想に興味を抱き、メールのやり取りが始まる。そのうち二人は実際に会うことになるが、女の子は耳が不自由であった。メールでは素直な思いを打ち明けられていた二人だったが、会うとなんだかうまくいかない。好きだからこその歯がゆさが書かれている。メール上ではピッタリくるはずだったのに・・・というもどかしさが初々しい。本気で相手にぶつかっていく姿は、好感が持てる。だが、まぁよくある話で新鮮味に欠ける。実際に会う段階になって云々というパターンは、おなかいっぱいである。平成19年刊行だから当時は珍しい話だったのだろうか。