よるくもの評価
よるくもの感想
余計なものをすべて取っ払った時に残るものが必要なモノ
正しいことは誰にとっての正しいことなのか本当によく考えられた物語であると言える。貧富の差をただ描いているのではなく、貧しいところから成り上がっていく物語でもない。どこまで堕ちていったって、人が人であるということ、欲しいものが同じであることがビシビシ伝わってくる物語だ。お金を持っている人が住む「街」。貧乏とはいえ商売をしまっとうにお金を稼いで生きている「畑」。闇の仕事を専門に扱い人の命の重みが感じられない「森」。この3つの区域のある世界で、身分違いだったはずの男女が出会い、どのように心を通わせていくのか。それは単純な恋物語なんかじゃない。人がそこにいる限り、3つの区域は闇でつながり、お互いなしでは生きていけないということをダークに伝えてくれている作品だ。「畑」で飯屋を営むキヨコとその母親。女だけでも元気いっぱいに、ご飯を食べたいという人のためにご飯をつくる。キヨコは「森」の市場にもちょく...この感想を読む
ダークな世界にも生きる人はいる
正義への問お金持ちが済む「街」。貧乏でも商売しながらまともに生きている「畑」。そして闇の商売なんでもあり・殺しもある「森」。ここを舞台に描かれるある殺し屋と飯屋の娘の物語。この物語のすごいところは、どこまでも人を堕としていくこと。堕として、堕として、堕としきった先に、残るもの。それはいったい何だろう?どうしようもない人間社会にも、人は生きている。それをヒシヒシと伝えてくれます。この物語を読んでいると、何が正しくて、何が正しくないのかはわからなくなる。小辰(よるくも)は捨てられた子ども(虫)。人身売買・臓器売買・使うだけ使われたら捨てられる子ども。それを中田に救われた。よるくもには感情はなく、言葉の読み書き・計算もできないし、痛覚もない。あるのは温冷覚だけ…それでも、彼がたった一人の家族だった。中田は勉強もさせてくれたし、いろんなことを教えてくれた。彼の言うことを聞いて仕事をすること以外...この感想を読む