笛吹川の評価
笛吹川についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
笛吹川の感想
翻弄される、ちっぽけな人間たち
容赦ない時間の流れの中での人々の生死甲斐国での武田家の興亡の裏にある、とある農民一族の数十年に渡る話。そう言ってしまえば非常に簡単ですが、この小説はそんな言葉で済まない不気味さと、とてつもなく強固な真理を兼ね備えています。すなわち、人は生まれたら死ぬということです。これはハードボイルドというのでしょうか、心理描写がほとんどなく、主人公というべき人物も存在せず、とある「家」を舞台にして人々があっけなくポンポン死んでいきます。時間の経過もとても早く、あっという間に十年経ったりして、描かれる人間がまるでおもちゃのようです。一族の人々の生死は、ものすごいスピード感を持って描かれます。まず最初の最初で驚きました。御屋形様に子供が生まれて、後産(胞衣)を埋めに行くというので孫の半蔵(すでに戦で手柄を立てている)の紹介でおじいが行くことになりますが、土を掘る際に誤って自分の足の肉を削ぎ、血を流してし...この感想を読む