火花の感想一覧
又吉 直樹による小説「火花」についての感想が3件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
お笑いへの思いを哲学にまで昇華させた作品
話題に上った作品だったので読んでみた私見ではあるけれど、又吉自身一風変わった感じの芸人であり、その漫才も他の芸人とはどことなく違った独特の世界観をもつような印象がある。又吉の文章を知ったのは「カキフライが無いなら来なかった」などの自由律俳句の本だ。せきしろとのコンビで、日々のなんでもないシーンを言葉と写真とともに切り取ったその作品は、もう一度読んでみたいような作品だった。しかしそれはあくまで俳句と短編という短い文章で、だからこそ又吉の長編が読んでみたくなった(それはせきしろも同じなのだけど)。そして一時話題に上ったこの作品を手にとってみたのだ。そこにはお笑いに対する真剣な思いが満ち溢れていた。真剣に考える抜くことでそれは哲学的に昇華している、そんな印象だった。皆が皆それなりにお笑いに対する思いはあるのだろうけれど、これほど真剣に生きるか死ぬかのような気持ちでお笑いに接しているのが純粋に...この感想を読む
『純文学』に『お笑い』を取り入れた最初の作品
芸能人 又吉直樹の芥川賞受賞作品ということについて平素より、私は芥川賞系統の作品より、直木賞系統の作品を好んで読む。ミステリーやサスペンスが、私を平凡な日常から解き放ってくれると感じているからだ。しかしながら、芥川賞という国内文学賞の最高栄誉がお笑い芸人に与えられた、と言うことに衝撃を覚えた。文学界はついに芸能界に媚びたのだと、そう感じた。今まで芸能人が書いた小説をいくつか読んだが、私の琴線に触れる様な作品に出会ったことがなかったので。近年の芥川賞受賞作品をみると、日常から感じた心理的描写を作品としているものに偏っていると感じる。若干ではあるが、選考委員は文章としての技巧を軽視し、より大衆的な感性の作品に重きをおいているのかな、と。そんな傾向から、ついに芸能人芥川賞受賞、という事態に至ってしまったのでは、と邪推してしまう。しかし、その作品を全く見ずして批判することは、まず作者に対してと...この感想を読む
結論がない小説
現代の一流お笑い芸人を目指す若者を、古典的に表現物語の舞台は現代で、売れっ子になるのを目指しているお笑い芸人の若者の話であるが、文体自体は古典的である。作者の又吉直樹氏は、太宰治に傾倒していることで有名であるが、太宰の影響というよりはむしろ、松本清張氏や内田康夫氏を思わせる文体である。話の内容にしては、若干文体が堅く、本をよく読む人でないと難解な単語なども出てくるため、読みづらさがあるかもしれないが、又吉氏のボキャブラリーの豊富さに驚かされ、作家の人となりを知る上ではむしろその読みづらさすら興味深い。、また、又吉氏ご本人がお笑い芸人であるため、人を笑わせることの大変さ、お笑い芸人という仕事のリアルな実態の描写は秀逸である。イラッと来る表現が見事お笑いの先輩神谷と主人公徳永の、メールや会話のやりとりにおいて、文章表現が非常にくどく、読んでいてこんなにしつこい表現をしなくても良いのにとイラ...この感想を読む